第5話 友の「告白」、私の「本音」
私は伊藤綾香。
今日、私は「新しい私」への扉を開く。
別に、あんたのためちゃうけどな!
高校一年生の伊藤綾香、十六歳。
背が高くて、モデル体型って周りから言われる。
でも、胸が小さいのがコンプレックスやった。
スタイル褒められても、全然嬉しくない。
「別に、そんなん言われても、どうせ…」
って、いつも心の中で呟いてた。
水着になる授業とか、
胸元が開いた服とか、
ほんまは避けて通りたかった。
ある日、親友のユカと放課後、
カフェでだらだら喋ってた時。
ユカが、何気ない顔で、
スマホの画面を見せてきた。
「綾香聞いて!
私、実は最近、パッドで盛ってんねん!」
その言葉に、私は「は?」ってなった。
「は? 別に、そんなんせんでもええやん。
あんた、別に小さくないやろ」
ツンとしながらも、内心は驚きと、
そして、なぜかホッとした気持ちが広がった。
私だけが悩んでるわけじゃないんや。
ユカは、私の顔を見て、
少しだけ寂しそうに笑った。
「ううん、本当はな、
自信がないから盛ってるだけやねん。
見栄っ張りだって、バレたらどうしようって、
いつも不安で、ヒヤヒヤしてんねん」
ユカの告白は、私の胸に刺さった。
表面的な「完璧さ」を求める中で、
私もずっと本音を隠してきた。
誰にも言えなかったコンプレックス。
ユカの言葉が、私の心の奥底に眠ってた
本当の気持ちを、そっと揺り起こした。
「…ふーん、別に、興味ないし」
そう言いつつも、
ユカの言葉に触発されて、
私もパッドを試してみることを決意した。
休日に、一人でデパートの下着専門店に行った。
初めて入るお店は、キラキラしてて、
なんだか緊張した。
色んな種類のパッドが並んでる。
どれが自分に合うのか、全然分からへん。
「別に、どれでもええねんけどな!」
そう言いながらも、
真剣にパッドを選んでた。
店員さんに声をかけられそうになって、
慌てて隠れたりした。
ユカが「店員さんに相談したらええやん」って
言ってたのを思い出す。
でも、そんなん、恥ずかしくて無理や。
試着室に入った。
ユカがアドバイスしてくれたことを思い出しながら、
いくつかのパッドを試してみる。
鏡に映る、今までとは違う自分の姿。
普段はぺたんこの胸元が、
ふんわりと、でも自然な曲線を描いてる。
「…べ、別に、悪くないやんか」
思わず、照れながらつぶやいた。
それは外見だけでなく、
本音を認める「試み」だった。
パッドをカゴに入れた。
レジに向かおうとした指が、ぴくりとも動かない。
心臓が、ドクドクうるさい。
「こんなもので自分を偽っていいのか?」
「結局、こんなことしても、何も変われないんじゃないか?」
自己嫌悪の感情が、波のように押し寄せる。
このパッドに頼ることが、
なんだか自分の弱さを認めるみたいで、
情けなかった。
でも、同時に、
「もし、これで少しでも自分を好きになれたら…」
という小さな期待も交錯する。
鏡に映る、少しだけ自信のついた自分。
「がんばれ、私!」
心の中で、叫んだ。
この一歩が、私を変えるはず。
最終的には、
「ま、まあ、自分への投資やしな!」
と自分に言い聞かせ、新しいパッドをカゴに入れた。
レジを済ませて、袋をぎゅっと握りしめる。
誰にも見えない、私だけの秘密。
でも、この秘密が、私に確かな勇気をくれた。
【SNS】
伊藤綾香の親友(中川沙耶)のインスタグラム
今日、綾香と下着見に行ったんだ! 最初は「別に」とか言ってたけど、結構真剣に選んでて可愛かった! ちょっとずつ、変わっていってるのかな? 何かあったら、いつでも相談してほしいな。
---
【次回予告】
悩み相談です。私、地味な会社員なんですけど、なんだか最近、周りの女子がキラキラしてて。それに比べて自分は垢抜けないなって劣等感を感じ始めたんです。特に下着のことはよく分からなくて……。この前、友人が「可愛いパッドは、気分も上げてくれるんだよ」って言ってて、ちょっと気になってるんですけど、こんな私が下着に凝るなんて、おかしいですか? べ、別に、そんなん、どうでもええんやけどな!
次回 第6話 私だけの「見えない美学」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます