第3話「恋は加速する」

灰色の夕暮れの中、リンはまたペダルを踏んでいた。

 線路沿いの道を、風を切って走る。スピードを上げるたび、胸の奥がざわざわと騒がしくなる。街のノイズが遠ざかり、心臓の鼓動がどんどん大きくなる。

 リン(昨日から……変だ。レンの顔が浮かんで、あのメロディが頭から離れない)

 加速する気持ち。スピードを上げるたび、それに追いつこうとするみたいに、

胸がざわつく。

 リン(これって……まさか、恋……?)

 イヤホンから流れるのは、あの曲。繰り返されるメロディが、

気持ちを引っぱっていく。

 前方に、制服姿の影。レンが柵に腰かけて、こちらに気づいて手を振った。

 レン「来たな。お前、ほんと速いよな」

 リン「……恋も、加速してるからね」

 レンがぽかんとしたあと、ふっと笑った。

 リンは自転車を止めて、そっと隣に腰を下ろす。

 風が吹く。ビルが光る。時間が少しだけ、静かになる。

 リン「……レン。もうちょっと、あの曲……聞かせてよ」

 レン「……ああ。何度でも」

 イヤホンを片方ずつ分け合い、肩が触れる距離。

 鼓動と風と音楽と。すべてが一つになって、この瞬間を走り出した。

 リン「きかせてよ……もっと、ずっと」

 運命のコードが、ふたりの耳を優しく結んでいた。

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加速装置 ミスターチェン(カクヨムの姿) @11296532154

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