第16話 1日経って、冒険者ギルドと買い物へ

「すぅすぅ、すぅすぅ。ハァハァ」


『おい、いつまで嗅いでるんだよ、出かけるんだろう?』


「だって、昨日の今日よ? 今の私には、匂いが全然足りてないんだもん」


『もんじゃねぇよ。良い加減退け』


 グイグイと足蹴にされて、ライカが私を自分から引き剥がそうとする。


「良いじゃない。私は傷ついてるのよ」


『傷ついてるって。確かに採取した匂いはなくなりましたが、今日、新しい匂いをもらっていたでしょう。しかもここへ始めて来た患者魔獣の』


『あの子も、人間も。初めてなのに匂いまで取られちゃって。かなり引いてたじゃん。もう、本当の緊急時以外、来てくれないかもしれないよ』


「ちゃんと匂いと私について説明したから大丈夫よ」


『どうだか。ま、これで本当に具合が悪い時に来なかったら、間違いなくお前のせいだな』


「だから、大丈夫だって。次も何かあったら、よろしくお願いします、って言ってもらえたし」


『はぁ。まぁ、なるようになるでしょう。ですが、ライカじゃありませんが、いい加減冒険者ギルドに行かないと。あれだけの素材を売りに行くんですよ。時間がかかって、この後の予定が遅れるかもしれません』


「分かったわよ、行けば良いんでしょう、行けば」


 私は、よっこらしょとライカのお腹から起きて、マジックバックを持ち、みんなと家を出る。今日の治療は午前中だけだったから、これから昨日のゴブリンたちの素材を、自分が使う物意外、冒険者ギルドに売りに行くんだ。


 匂いのサンプルが奴に台無しにされたのは、今でもイライラするし、とってもとっても傷ついてる。だからずっと、仕事以外は、ライカたちの匂いを嗅がせてもらっていたんだ。本当はもっと、嗅いでいたかったのに。


 ただ、冒険者ギルドへ行くのも大事だし、仕方ないんだけどね。それにゴブリンから採取できるもので必要な物は、今回の事件でかなりのストックができたから、それに関しては良かったよ。


『何か美味しい物、売ってないかなぁ』


『まだ、夕飯には早いですからね』


『酒が飲みたいぜ』


 そんなことを話しながら歩くグレイル達。そうそう、これから私には、冒険者ギルドでゴブリン達を売る以外にも、やろうと思っている事があるの。


 今回のホブゴブリン達は、それなりの金額で冒険者ギルドで引き取ってもらえるから、これでかなりお金には余裕ができるんだ。まぁ、今も別にお金に困っているわけじゃないけど。治療院のおかげで、贅沢をしなければ普通に暮らせるし。


 だけど時々は、贅沢をしたって良いでしょう? だからグレイル達にね、好きな物をたくさん買ってあげようと思って。いつも私の仕事を手伝ってくれて、私が危ない時にはいつも守ってくれて。そして匂いをたくさん嗅がせてくれる。私の大切な家族。


 そんなみんなに、時々は贅沢させてあげたいんだ。みんながいつもは我慢して、買わないような物を、今日は買ってあげようと思ってるの。


 それから私も買おうと思っている物がって。まぁ、それはグレイルたちの買い物が終わって、時間があったらかな。もしかしたら急患で呼ばれるかもしれないし。


 冒険者ギルドに着くと、今日は冒険者が少なく、すぐに買取をしてもらえたよ。その時に何で今日は冒険者が少ないの? って聞いてみたんだ。


 そうしたら今回の事件で、新たに森へ、調査へ行った冒険者たちもいれば。突然また魔獣が現れるといけないからと、森の巡回に行ってくれている冒険者たち。


 騎士団長さんが街に知らせを出したことで、みんなが事件のことを知ることになり。そして、森に入る時は護衛をつけること、と通達されたため。護衛に出た冒険者たちで。冒険者たちが少なくなっていたんだ。


 かなりの人数で森を調査しているみたいだから、予定よりも早く、調査が終わるかもしれないって。


 ということは、私が騎士団長さんに呼ばれるのも、早くなるかもしれない……。はぁぁぁ、何かやった覚えはないから、余計に何で呼ばれるのか気になる。もう、呼ばれるならさっさと呼ばれて、早く話しを終わらせてしまいたい。


「はぁ、本当めんどい」


 考えているうちに査定が終わって、報酬を受け取るとみんなの所へ戻った。


「お待たせ」


『どうだった?』


「思っていたよりも高く売れたわ。みんなが綺麗に倒してくれたおかげだよ。ありがとう」


『お金は大切ですからね』


『そうそう、こういう時にちゃんと貯めておかないと』


 と、そんな話しをしていると、冒険者ギルドに併設されている酒場からこんな声が声が聞こえてきた。


『おい! こっちビール!!』


『こっちにも頼む!!』


『ガハハハハハハッ!! もっち酒をもってこい!!』


 明るいうちから酔っ払っている冒険者たちだ。おそら手に入れたばかりのお金を、酒につぎこんでいるんだろう。まったく、グレイルたちは魔獣なのに、よっぽどあの冒険者たちより、しっかりしてるよ。


 うん。やっぱり今日は、そんなしっかり者のグレイルたちに、好きなように買い物を買ってあげないとね!


「さぁ、みんな。買い物に行きましょう」

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