第10話 幸せタイム、魔獣吸い全開! でも戦闘開始!?
「すぅすぅ、すぅすぅ、ハァァァァァァ、し、あ、わ、せ♡ ん? みんなどうしたの? せっかくだから温かいうちに食べてね」
魔獣に、料理が温かいご飯、っていうのが関係あるか分からないけど。普段は生だからね。でも、せっかく温かいんだから、温かいうちに食べた方が良いでしょう? 何でそんな事を言ったかって、だって全員で私のことをジッと見てるんだもん。
私がそう言えば、全員がため息を吐き、これまた全員一緒に、食事を再開したよ。
今日は久しぶりに、街で人と暮らしている魔獣以外の匂いを嗅げるから、もう嬉しくて嬉しくて。いつもより、テンションが上がっちゃう。はぁ、このままずっと嗅いでいたいくらいよ。
……そうね。う~ん。どうせなら森に小屋を建てて、2、3日泊まれるようにしようかしらね? 他の場所もね。そうすればみんなの匂いを、もっとゆっくり嗅げるはず。後で、みんなに相談してみようかな?
『あまりの匂い嗅ぎのテンションに、いつも以上に引いてる、って分かってないんだろうな』
『でしょうね』
『ねぇ、そろそろ今匂い嗅がれてる魔獣、助けた方が良いんじゃない? あんまり匂い嗅がれすぎて、精神的に具合悪そうだよ?』
『そういえばあいつ、嗅がれるのは初めてだったか? しまった! 最初にあのテンションで来られたらトラウマになるぞ!』
『もうなっているかもしれません。すぐに助けましょう!』
『変わりは……、ねぇ、そこの。あのテンションのソフィアに慣れてるでしょう? 代わってあげてくれる? ほら僕の特製クッキーあげるから』
『……グエ』
匂いをもう1度嗅ごうとした時だった。何故かライカが嗅いでいた魔獣を私から奪って、いつも匂いを嗅がせてくれる魔獣と交代させたんだ。
「もう! せっかく匂いを嗅いでるのに! どうして邪魔するのよ」
『1匹に、時間かけすぎだ』
『これだと、他の魔獣の匂いを嗅ぐ時間がなくなりますよ』
『ささ、君はこっちにきて。歩ける? 回復のポーションを飲もう。疲れが取れるからね。ソフィアには後で僕達が、よく言っておくから』
え? 私何かした?
それからも何回か、私の魔獣吸いを止めては、他の魔獣と交代させるグレイル達。ゆっくり匂いを嗅げなくて、イライラし始める私。なんで今日はこんなに交代させるのかしら? もう! やっぱりゆっくり嗅ぐためには、小屋を建てるべきね。
なんて考え始めた頃だった。それぞれ料理を食べたり、お菓子を食べたり、ゆっくりしたり遊んだりしていた、グレイルたちと大人の魔獣たちが。ガバッと顔を上げ、一斉に森の奥を見た。私達が今いる場所よりもさらに奥ね。
さすがの私も匂いを嗅ぐのをやめて、みんなと同じ方を見たよ。
「もう! 私の魔獣吸いの邪魔をして。ただでさえ今日はゆっくり嗅げていないのに! はぁ、みんなどうしたの? 面倒な魔獣でもこっちに向かってきてる? それとも冒険者か誰かが、森で面倒事を起こしてるの?」
人と違って、気配に敏感な魔獣たち。みんなが警戒するってことは何かあるってこと。
『こっちには関係ないと思ってて、いちいち話さなかったんだが、そんな感じだ』
「どっち?」
『両方だよ』
「両方?」
『森の奥で人と魔獣の戦闘が始まりました。それから何体かの魔獣がこちらに向かってきています』
『それに……、あいつ突然現れたよね?』
『ああ』
『あの気配、人間の方は、こないだソフィアに質問してきた、あの質問男だ』
「え? じゃあ今この森に騎士たちがいるってこと? 私たちが入る前からいたの?」
『いえ、後から入って来ました』
「そう。騎士達は問題の森を調査しているはずよね? 何でこっちの森に? とりあえず、子供達を逃がしましょう」
『いや、あいつらがどっちに向かうか分からないからな。ここの方がみんなで守れるだろう』
『子供達を中心に、私たちが周りを固めます。ソフィアは子供たちと一緒に』
「分かった!」
私はすぐに子魔獣たちを集めて、みんなが少しでも落ち着けるように飴をあげた。リラックス効果のある、私特製の飴だよ。
今はここに居ることに決めたけど。もしかしたら、やっぱり避難なんて事になるかもしれない。その時に緊張し過ぎて、動けないと困るからね。
まぁ、いざって時はみんなが運んでくれるだろうけど。でもほらそれでも、しっかりと掴まってとか、踏ん張ってほしいって時も、動けないとダメでしょう?
「みんながいるから、大丈夫だからね」
そう声をかけながら、みんなに飴を配り終わった私は、私達を囲んでくれているグレイルたちの隙間から、向こうの様子を伺う。と、その時、ある物が目に入り。
しまっと思った。私の大切な物が、そのままになっていたんだよ。そう、魔獣たちの匂いのサンプルと、治療院と同じ、魔獣たちの匂いの記録した物を、その場に置きっぱなしにしていたんだ。
すぐに取りに行こうとする私。
『ライカ? そこに大切な……』
ライカたちに声をかけようとする。でも……。
『来るぞ!! 結界を張れるやつは結界を張れ!!』
そう、ライカが叫んだんだ。
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