プラナ学園リア切断

マキタKC

第1話 一行でまとめると


 俺には〈危機察知〉というスキルがある。


 嫌な予感がして。

 遅刻ギリギリの時間に登校したら、いつもの通学路で大型トラックが横転していた。

 嫌な予感がして。

 塾からの帰り道をダッシュしたら、背後で軽トラがガードレールに突っ込んでいった。


 もちろん偶然。たまたまの幸運。

 しょせんは妄想の産物でしかないのだと、わかってはいる。

 まずスキルがあると仮定してみよう。

 だったら、磨かなきゃ損だと思い立ったんだ。

 不条理な出来事に理不尽なまま呑み込まれちゃう世の中だろう?

 スキルがあるといいな、じゃないんだ。

 あるものとしてピカピカに磨いていこう。

 そうすると、やがては、あることになり。

 いずれ万が一の事態のとき、ものすごく助かる!


 おかしな理屈なんだろうな。だが俺にはすっと染み込んでくるイメージだった。おかげで思慮深い性格になっていったと思うぜ。大胆な振る舞いも身についてきた。あ、いっとくが思慮深さと大胆さは矛盾しないぞ。慎重に冷静に。臆病なくらい神経質になって足元の土台を踏み固めていき。周囲を観察し考察して。やっと思い切った言動も選べるようになったんだ。

 と、まあ、こういった自己分析には終わりがないし、おもしろくもない。

 一行でまとめておこう。


 俺は〈危機察知〉というスキルを磨いてきたんだ。


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