アンチチート
小松春
第1話 始まり
宮殿の前に一台の馬車が着く。乗っていた人物は、馬車を降りると、運転手に一礼して、宮殿の入り口に向かって一歩一歩歩いて行く。しかし、当然門番に止められる。
「貴様、何者だ。」
門番はその人物を見下ろす。少し面倒な顔をして、懐から丸められた書類を取り出し、2人の門番に見せる。
「申し訳ありません、シユウ様。」
槍を下ろし、お辞儀をして扉を開ける。庭には様々な草木が生え、豪華な噴水まである。こんなに豪華にして何になるのかと思いながらも、これも王家の仕事みたいなものなのだろうと思い、ドアを叩く。
「失礼します。」
服装を正し、両手でドアを慎重に開ける。
部屋はまさに豪華絢爛、どこまで続くのか分からない階段、幾つもあるシャンデリア、この屋敷の持ち主の力がよく分かる内装である。
「おお、すまない、わざわざこちらまで呼び付けて済まない。」
部屋の奥の玉座のような椅子に座る人物はシユウに労いの言葉をかける。
「お気遣いありがとうございます。それで、ご用件とは何でしょう。」
シユウは跪き、早速呼び付けられた訳を問う。
「さすがは帝国一の仕事人じゃのう。 実は最近、異世界人なる者たちが 多く現れていてのう。」
シユウの切り替えの早さに感心しつつ、困り事を溜息混じりに話す。
「それで、私は何をすれば?」
話が全く見えず、首をかしげる。
「いや、少し彼らの調査を頼みたくてのう、頼めるかの?」
さすがにいきなり頼むのは悪いと思ったのか、ゴソゴソと横の棚を探して写真を数枚取り出し、手渡した後、申し訳なさそうに手を合わせる。
「そうですね、分かりました、やれるだけやってみます。」
写真を受け取り、表も裏も見た後、懐にしまって首を縦に振る。
「本当か、かたじけない。」
嬉しそうな顔をした後、シユウの手を取り、大きく縦に振る。
「あ、いえ、気になさらないで下さい。」
態度が急に変わり様に若干顔を引き攣らせつつ笑った。
少し経ち、宮殿から出て来たシユウは衛兵たちに軽く会釈しつつ、外で待ってもらっていた馬車に乗り込み、宮殿を後にする。
「お疲れ様でした、シユウ。」
馬車の運転手から声を掛けられる。
「いつもありがとう、クロコ。」
先程とは異なり、穏やかな態度で他愛もない話をする。
「所でクロコ、これ要る?」
自分のポシェットから美味しそうなお菓子を出す。
その包みをちらりと見て、急にガタガタ震え始める。
「ほ、ほほほほ、本当にいいんですか。」
いつも冷静な友達が今まで見た事ないくらい動揺していたので、意味が分からず思わず尋ねる。
「どしたの、…もしかして、これ?」手に持つお菓子が入っている箱を見る。クロコは首がもげそうな勢いで振る。
「これ、さっき国王に押し付けられ、ゲフンゲフン、貰ったんだよ。」
先程帰る前に、ほぼ強引に国王から渡されていたのだ。しかし、立場上、実質押し付けられたなどとは口が裂けても言えない。
「それ、大体こんくらいしますよ。」
クロコは懐から明らかに高そうな懐中時計を取り出す。
「これただの菓子だよ?」
自分の膝の上のクッキーの缶を眺める。
「まじで言ってんですか?」
隣に座る人物の知識の偏りに引きつつ、甘党として、菓子の解説を始める。
「いいですか、シユウ、このクッキーは帝国中の富豪、果ては王族まで御用達のお店、暁月の一品であり、しかも一年で一日しか作られない超珍しい物なんですよ。」
オタク特有の早口の解説を耳を手で塞ぐ事で適当に無視しつつ、渡された写真を取り出す。
「あーはいはい、分かったわかった。」
馬車の外に大きな湖が見える。
「さて、仕事を始めますか。」
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アンチチート 小松春 @haru46mofu
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