2日目①
翌日、教室に入ると夢願シールを持っているクラスメイトが何人もいた。クラスメイトといっても20人の少人数であり小学校の頃から顔ぶれも変わらない。だからこそクラスの仲は良いがほとんどは気が合う同士でつるんでいる。俺で言えば夢子がその相手に当てはまるのか。後は入口に入ってすぐの席に座るこいつくらいだろう。
「おは!!司。あいかわらずテンションが低いな」
飯塚大樹、こいつも俺と夢子と昔から遊んでいた仲だ。親同士の仲が良かったこともあり自然と俺たちも仲良くなった。大樹は夢子とは違い思想が強いわけでは無い、俺と同じで都会に出ることを夢見ている。
「当たり前だろ。昨日は夢子に付き合わされてわけのわからないシール買う羽目になったんだぞ」
「そりゃ災難だったな。で何の願いのシールが出たんだよ」
大樹も興味持ってるのかよ。俺は制服のズボンをめくり太ももに貼ってあるシールを見せた。
「うわ~お前もこの村に染まっちゃったのかよ。“テストで良い点を取れますように”とか書かれたシールなんて貼っちまってよ~」
俺の太ももに貼ってあるシールを見ると大樹は指を指しながら大声で叫ぶ。
そのせいで教室にいる全員が俺たちの方に視線を向けた。
「バカ、でかい声出すなよ。仕方ないだろ夢子が貼ろうって言ってきたんだから」
俺だって貼りたくてこんなシールを貼っているわけではない。夢子だ、夢子が言うから・・
「全く、お前はずっと夢子の言いなりだよな。仲良いからってのは分かるけど少しは拒否するぐらいしたらどうだ。別に夢子だってそこまで責めてきたりはしないだろ」
「分かってるよ。けど村長の娘だし」
村長はこの村の中で1番偉いのは誰にだって分かる。夢子はその娘だ。ということは次期村長も夢子になる可能性が一番高い。現村長もそのことを思ってか夢子には色々と村の事業や会議などに積極的に参加させている。村の連中も夢子のことを次期村長と呼ぶ人、夢子様と呼ぶ人だっている。夢子はこの村の中でも特に重要視された存在。そんな人に迂闊に逆らうようなことをしたら村全体からの印象が悪くなりかねない。流石にそれは避けたい。
「全く、情けないやつだな。でそのシールは今日の数学の章テストのための願掛けってわけだな」
「まぁな。でもどうせ無理に決まってるよ。毎回赤点叩き出している俺が良い点なんて取れるわけがない。昨日だって軽く基礎問題みたいなのを解いただけだしな」
まぁこの村の小さいな高校の数学の章テストなんて別に何点だって良いさ。成績のつけ方も緩いし赤点取っても毎回数学の内申は3だった。きっとこれも村の決まりなんだろう。
「もしもお前が80点、いや60点でも取ったら地球に隕石でも落下してくるだろうな」
「馬鹿にしすぎだろ。けど確かにそれくらいの確率だろうな。だからこのシールの効果なんて出やしない」
そんなことを話していると大樹が何かに気づくと俺にだけ聞こえる声で話し出した。
「おい、さっきから夢子俺たちのこと見ていないか?」
いきなり何を言うと思い夢子の方に目を向けると確かに俺たちのことを見ている。夢子の席は窓際の1番奥で俺と大樹が話している席は入口入ってすぐの席。その間にも席はあるが今は誰も座っていない。となると確実に俺たちのことを見ている。
「小さい頃から思っていたが夢子は司に執着してないか?何かとよく一緒にいようとするだろ昨日みたいに」
「それはないだろ。大樹だって夢子とは昔から仲は良かっただろ」
「昔は仲は良かったけど、今はほとんど喋らないぞ。たまに会っても軽く挨拶する程度だし」
確かに昔は3人で良く一緒にいたが中学、高校生になってからはほとんど3人でいることはなかったな。俺が夢子といるか大樹といるかで夢子と大樹が一緒にいるところはあまり見たことがなかった。そんなことを思い出した時も夢子の視線は俺たちの方にあった。
「司、自分の席に行った方が良い。夢子のやつお前が俺と話しているのが気に入らないんだろ」
まさかとは思うが、そろそろ朝礼の時間も近い。それに数学の時間は1時間目だ。俺は大樹が言うように自分の席に向かった。
「何を話していたの?」
席に着くと夢子が声をかけてきた。
「例のシールについて話しただけだよ。お前も買ったのかとかそんな感じだよ」
別にやましいことを話していたわけではないので俺は夢子に大樹と話したことをそのまま話した。
「そう」
夢子はそう答えただけだった。
何だよ。あれだけ俺たちのこと見ていたし大樹もあんなこと言うせいで変にビビっちまったじゃないか。夢子は別に今も昔も変わらない。少し思想が強くて面倒くさいところがあるが俺の良い友達であることに変わりはない。今までもこれからも。
「数学のテスト楽しみだね。シール今も貼っているんでしょ」
「効果がないことを証明してやるよ。いつもみたいに壊滅的な点数を取ってな」
「シールの効果は絶対だよ。すぐに分かるから。ほらチャイム鳴るよ」
キーンコーンカーンコーン
朝の朝礼の開始を知らせるチャイムが鳴る。ここからまたいつも通りの1日が始まる。
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