第2話「狂った街角」

それからというもの、俺の世界は赫い髪の幻影に飲み込まれた。

 街は相変わらず狂っている。  交差点の信号が同時に点滅し、

ギラギラとした陽射しがコンクリートを照らす。  

桃色のリップを塗った少女たちが、アイスを片手に笑いながら通り過ぎる。  

ショーウィンドウにはマネキンがひしゃげたポーズで立ち尽くし、

街は常に躁状態だ。

 きらきらと目を刺す風景、うるさく軋むビルの壁、ぬるい風──

 俺(彼女は、どこに行ったんだ……)

 日ごとに加速する熱気とアツレキの中、俺は街をさまよい続けた。  

焦げたアスファルトの匂い、看板に映る歪んだ夕日、線路沿いをすり抜ける風。  幻のように、赫い髪が何度も脳裏をかすめた。

 とにかく、探した。

 ある日、夕暮れ。俺はふらりと足を踏み入れた。      

古びたライブハウス──その看板には、まるで悪戯書きのような字体で

「ナンバーガール」とあった。

 吸い込まれるように中へ入る。

 ステージに立っていたのは──赫い髪の少女だった。

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