じめっとした感触と共に、逃げ場のない怖さのようなものが迫ってきました。
主人公である美弥子は、久しぶりにかつての同級生である愛華や仁美たちと集まることに。
その話の中で「雨の口」と呼ばれる土地がかつて近くにあったことを思い返す。
用途は不明だが、なぜかいつも水がなみなみと湛えられている場所。
このイメージだけで、なんとなく嫌な予感がしてきます。「忘れていたこと」と「そこに出てくる水がたっぷりある場所」と。
何かが隠されていそう。何かが沈んでいそう。人々の「日常」の外側にあり、一度そこに呑みこまれたら、誰からも気づかれなくなりそうな。
それについて「何か」を忘れていると感じ始めたことから、「自分の過去」がどんなものだったのか記憶が急速に蘇って行く。
この感じがまた不安を煽られました。幼い頃の感覚というのは、大人になってから思い出すとヒヤッとさせられることも多々あるものです。現在だったら考えられない残酷なことを考えたり、どう考えても危険すぎることにも平気で踏み込んでいたり。
制御してくれる大人が近くにいないことで、いくらでも危うくなれる子供時代。
本作を読んでいて、「自分は大丈夫だったろうか」と幼い頃のことなんかに想いを馳せてしまいました。「一歩間違っていたら危ない場面って結構あったんじゃないか」、「実行していたらとんでもない状況になっていたことを考えていたこともあったんじゃ」と。
そういう、制御できない危うさをひしひしと感じさせられ、強く心を揺さぶられる作品でした。