第6話 盗賊A脅威と対面する



宿屋の窓から差し込む朝日で目が覚めた。昨日は久々にベッドで寝たおかげで、身体の疲れはすっかり取れている。


「ふあぁ……よし、行くか」


伸びをしながらベッドから起き上がり、装備を整える。クロノも俺の動きを察して、ベッドの下からぴょこんと顔を出した。



「おはよう、クロノ。今日から本格始動だな」


「キー!」



軽く身支度を終え、宿屋の階段を降りる。朝の食堂にはすでに数人の冒険者らしき連中がパンやスープを啜っていた。

昨日見かけた白鎧の聖騎士もいたが、こちらには気づいていないようだ。

特に話しかける理由もないので、そのまま宿を出た。


外は朝の空気が澄んでいて気持ちがいい。村の中心に向かって歩くと、石畳の通りには市場の屋台が並び始め、店主たちが忙しなく準備を進めていた。



「ギルドは確か……この大通りを進んだ先の広場の奥だったな」



ゲームで見た地図を思い出しながら歩いていくと、やがて視界の先に見覚えのある建物が見えてきた。


二階建ての石造りで、入口の上には大きな紋章――交差する剣と盾のマークが掲げられている。周囲には冒険者たちが集まっており、依頼の張り紙を見ている者や、仲間と作戦会議をしている者など、活気に満ちていた。


「ここが……ギルドか」


中に入ると、木と石で造られた内装が温かみを感じさせる。広いホールの奥には受付カウンターがあり、数名の職員が対応に追われている。


左手には依頼掲示板があり、ランク別に依頼が貼り出されていた。

右手の方には酒場スペースも併設されていて、朝から飲んでいる連中までいる。


俺は受付の列に並んだ。クロノは足元でちょこんと座っているが、珍しいモンスターということもあって、周囲からちょこちょこと視線を感じる。


しばらくして、自分の番が回ってきた。



「おはようございます。ギルド登録ですね?」



カウンターの向こう側に立っていたのは、金髪を後ろで束ねた若い受付嬢だ。ハキハキとした声と明るい笑顔が印象的だ。


「ああ、そうだ」


「それでは、こちらの登録用紙に名前と職業、出身地、簡単な自己紹介をご記入ください。モンスターの連れがいらっしゃる方は、そちらの情報もお願いしますね」


用紙を受け取り、さらさらと記入していく。名前はロク、職業欄には【テイマー】と記入。クロノの種別は【ポーンシーフ】で済ませた。


用紙を渡すと、受付嬢が手際よく内容を確認する。


「はい、確認しました。それではこちらのギルドカードをお渡しします。

カードにはあなたの名前・ランク・職業が記載されています。今は【Fランク】からのスタートになりますが、依頼をこなすことで昇格できます」


薄い金属製のカードを受け取る。表には刻印が施されており、裏にはギルドの紋章といくつかの空欄がある。


「依頼を受ける場合は掲示板から自由に選んで、受付に持ってきてください。危険度が高いものはランク制限がありますのでご注意を。……あ、あと」


受付嬢が少し身を乗り出してきた。


「そのモンスター、とても珍しいですね。登録上は“魔獣”扱いになりますが、扱いには気をつけてくださいね。最近、他ギルドでテイマー絡みのトラブルがあったみたいなので……」


「心得てる」


軽く頷いて、その場を離れる。


これでひとまず、ギルド登録は完了だ。これで正式に依頼を受けることができる。それに今の内容をギルドの受付から言われたのであれば【あのクエスト】も受注可能になるな。



「さて……どう動くかだな」


タイタン関係のイベントを考えると、今のうちに動いておかないと、他のプレイヤーに美味しいところを全部持っていかれる可能性がある。

昨日の白鎧の聖騎士もそうだが、もうこのエリアにもプレイヤーが本格的に進出してきているのは間違いない。

ちらほらプレイヤーらしき冒険者もいたし、アホな事に勇賢者の石を見えるように持っている奴までいる。



勇賢者の石はプレイヤーの【命】と言っても過言じゃない。それを見えるように持ってるなんて殺してくださいって言ってるようなもんだ。



「勇賢者の石も比較的簡単に手に入れられそうだな?」



バカなプレイヤーが多いならありがたいことではある。

やることやったら勇賢者の石も着手するか。





その前にまずはタイタンから奪える物は奪えるだけ奪っておこう。








そして俺は昨日のタイタンの場所へとやってきたが…




 



「‥タイタンがいない?」



ギルドで無事にFランクの冒険者を作成してすぐにタイタンの場所に来た俺は驚愕してしまった。




タイタンが封印されてた場所は【跡形もなく】その場所がくり抜かれたようになくなっていたのだ。



「くり抜かれたような‥まるで【箱庭】で使うような‥


‥やばい!!クロノこの場から離れるぞ!!」




実装された機能の1つにスケルトンの箱庭を自分で好きに作る物があった。

その機能はゲームレベルでも中盤迄やらないと開示されず、このくり抜かれたのが本当に箱庭の機能による物なら今の俺なら片手間で倒されてしまうぐらいの実力差があってもおかしくない。




「やあ!君もプレイヤーだね‥って確かロクじゃないか!また会うなんて嬉しいよ!」




「お前は‥俺を生き返らせた勇者‥」





その場から立ち去ろうとしたが時すでに遅かったようだ。




俺の目の前には俺を生き返らせたプレイヤーが楽しそうに笑っていた。




「くそ、遅かったか‥」




「あれ?君って盗賊だったよね?なんでモンスターを【テイム】できてるんだい?」






俺を生き返らせたプレイヤーに遭遇してしまった。

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