第四章:初めての盗み
空へと続く蔓を登ったジャックは、
雲の上で信じられない光景を目にしました。
そこには、まるで別世界のような景色が広がっていたのです。
空一面にふわふわと浮かぶ雲の大地。
その中心には、天を突くほどの巨大な大樹が生えていました。
枝葉はどこまでも広がり、
白い霧と混ざり合って、境界さえわからなくなっています。
「……ここが“空”の世界なのか……」
ジャックはひとまず、大樹へ向かいました。
近づくにつれ、空気はひんやりとして、
何か大きな存在に見下ろされているような感覚がジャックを包みました。
誰もいないはずなのに、
何者かの視線のようなものを、ジャックは感じ取っていました。
「……誰か、いるのか?」
思わず声を出しましたが、返事はありません。
ただ、静寂の中に風が鳴るだけ。
やがて、大樹にたどり着いたジャックは、大樹の根元に三つの“宝”を見つけました。
ひとつは、黄金の羽を持つガチョウ。
もうひとつは、美しい装飾が施された、見たこともないようなハープ。
そして、最後のひとつは――
「……これは・・・壺?」
重厚な蓋のついた、ずっしりとした金色の壺が、
根の間にちょこんと置かれていました。
何の変哲もないようにも見えましたが、
ジャックがじっと見つめていると――
カラン……
壺の口から、静かに金貨が一枚、転がり出てきました。
「えっ!!」
ジャックは思わず、声をあげました。
「……これ、もしかして……金貨を出す壺か……?」
恐る恐る壺に近づき、壺を調べてみると、
壺には何の仕掛けも無いように見えました。
ですが、金貨は確かに、自ら転がり出てきたのです。
「これさえあれば……もう働かなくても生きていけるかも……!」
ガチョウやハープに比べて、小さくて持ち運びも簡単そうな壺。
ジャックは一瞬迷いましたが、反射的にその壺を抱え、走り出しました。
大急ぎで、蔓の元まで戻ると、ジャックは金の壺をしっかりと抱えたまま、
空から地上へと急いで降りて行くのでした。
続く~第五章へ~
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