③蓮

この村に隠れて住むようになって50年過ぎただろうか。



二葉蓮。

俺は24歳で交通事故で即死だった。



だけど、家族がどうしてもと研究所にお金を積んで例の薬で俺を生き返らせてくれた。




最初は良かった。

家族もとても喜んでくれていたし。



だけど…





「蓮ちゃん。

良かった、ここに居たんだ。

探したんだよ。」




見た目が俺より少し年上に見える千帆が息を切らして走ってきた。



千帆は20代後半くらいにみえるが、同じ死者だから年は取らない。



「そんなに慌てて、なにかあったんですか?」




「うん。

また新しい人がこの村に来るんだって。」



「なんだって。

あの薬はもう禁止されているはずじゃないのか。

最近、ここに来る住人が増えているように感じるのは気のせいか?」




「そうなのよ。

だから蓮ちゃんに知らせに来たの。」

 



死者が増えてきている、この村はどこかおかしい。





「しかも、さっきあの方が来たのよ。」




あの方とは、唯一、紫微村から出入りを自由を許されている人だ。



「珍しいですね。」



蓮はあの女の顔を思い出すと身震いした。



「ほんとよね。

でね、あの方が新しい人を一緒に連れて来たの。」



「それで、新しい人ってどんな人なんですか?」



千帆は蓮と目を合わせないように下を向きながら答えた。



「今回は、子供なのよ。」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る