〜君が居た世界〜
さーし
エピローグ
某県、山村西病院
そこに、治療のため長期入院している2人の幼い少女が居た
「りえちゃん!早く早く」
「しいちゃん待って〜」
病弱で入院していると思えないほど活発なしいちゃんは、今日も病院の廊下をバタバタ走り看護婦さんに叱られる
8月 最近2人にはある楽しみがあった 隣接している山村西高校にこっそり忍び込むことだった
今日も焼却場横にある網をくぐり抜け、夜、校舎に忍び込む
「やっぱりやめよーよ・・・しいちゃーん 見つかったら怒られるよお」
「りえちゃんも屋上どうなってるか見たいでしょ!いこ!」
「はあ はあ・・・」
「しいちゃん・・・!もう帰ろ?」
病院でも激しい運動やムリな階段の上り下りはしないよう言われている、だがしいちゃんは いつも倒れる寸前まで無茶をしてしまう
もう無理やりでもしいちゃんを連れて帰ろうとした、その時ー
?「わっ!」
「んきゃあ?!」「?!」
背後から急に驚かされ、びっくりする2人
「どっから入ってきたのーあなた達、ダメよーw」
おそらく学校の先生だろうか、そこには若く、優しそうな女の人が立っていた
それが・・かおるちゃん先生との出会いだった
「んー、あら?」
2人のパジャマとスリッパとゆういでたちを見て、隣の病院から抜け出して来たことに気づく
「あら〜抜け出して来ちゃったんだw」
「だって・・・まだ全然眠たくないんだもん」
泣きそうになっているしいちゃん
「ん~~っ・・・」「良し!」「あなた達、こっちおいで!」かおるちゃん先生についていった先あったのは、機材搬入用のエレベーターだった
「ここの暗証番号教えてあげるから、次に来る時はこっから来ること!」「あと、絶対私がいるときね!あそこの美術室にいるから」
絶対怒られると思っていたのでびっくりする2人
「いいの・・・?遊びに来て・・・病院の先生に言わない・・・?」
「いいわよー今夏休みで生徒の子達もいないしね!」あっけらかんと答えるかおるちゃん先生 「ただし!さっき言った事を絶対守る事!」「約束できる?!」
「する!約束する!」嬉しそうに答える2人
「うしっ!じゃあいい子の2人に良いもの見せてあげようかな!」
「?」
かおるちゃん先生に連れてこられた場所、それは校舎の屋上だった
「すごーい・・・」屋上から見える、山村町の夜景、そして一面にひろがる海の景色
病院の窓から見える景色とは全然違うものだった
「本当は夕方の景色が一番綺麗なんだけどねー」
「あっそういえば今日って」りえがある事に気づく
ヒュ〜〜・・・ ドン!!!
「花火大会あったんだ!」
絶景だった
山村町の一番の特等席からみる花火
しいちゃんがきゃあきゃあ言いながらはしゃいでいる
しいちゃんが居た夏・・・
かおるちゃん先生が居た夏・・・
知らなかった 人の命があんなに儚い事を
・・・
そして、 死んだ人には、地球の裏側どころか、宇宙の果てまで探しに行っても、絶対、絶対会えない事を・・・
知らなかった 誰かを好きになる事がこんなに嬉しいことに
知らなかった 誰かを愛することがこんなにつらいことに・・・身も心も・・・狂おしいほど、熱く、こげるように、焦がれるように
けれども 生まれてきて良かったと
思える・・・事に・・・
数年後、春、高校生になった少女は一人、校門の前に立っていた
「しいちゃん・・・来たよ、山西校」
エピローグ
〜「君が居た世界」〜
〜君が居た世界〜 さーし @sarshi777
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