第2話
自然というのは偉大だ。
この雄大な土地を創り、数千年、いやもっと持続させてきたのである。
そんな自然の前で、我々は無力だ。
と、まるで近代以前のような思想を展開したが災害に遭うと私はこの感覚を必ず思い出す。
東日本大震災の時だ。
私は当時中学1年生であった。
学校からの帰り道。自分の体調がおかしくなったのかと思うくらい立てなくなり、地面に叩きつけられた感覚を覚えた。
外を見れば私だけが狂っているのではないことに気づいた。
高台で見た津波はきっと死ぬ時まで忘れないだろう。
無造作に飲み込まれる家、車、人。
技術の革新、科学の発達…
いや、我々は自然の前で無力だ。
そう考える他なかった。
4つ上の姉は海に飲み込まれた。
遺体すら、見つかっていない。
行方不明というのは勘弁してほしいものだ。
生きているのかもしれないと、思うことが可能なのである。
なんとも苦しい時間を生きてきた。
そんな記憶が、高知を飲み込む津波を見て蘇ったのである。
上機嫌な主婦たちも、大好きになった食堂も、あのやかましいジジイどもも、みな死んだ。
死者を前にしていつも思う。
俺はなぜ生きているんだ、と。
生きていることを責める訳ではなく、死者が当然のように存在する手前、私が当然のように生きていることに違和感を覚えるのだ。
そしてその違和感をかき消すように、我々は線香を立てる。
津波が収まってから2カ月経ってからようやく高知に行くことができた。
海と生死 @k_01729
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