海と生死
@k_01729
第1話
これは僕がライターになって5年目になろうとしていた頃の話だ。
高知県の産業は水産業に支えられていると言って差し支えない。
特に鰹なんかは有名だ。
僕が取材していた夫妻も鰹漁をしていた。
令和になり、地方は見向きもされないのが現状だ。
地方活性化などと色々頑張っているが、所詮都会の力の前では雀の涙。
そんなことは東北出身の自分はよく理解していたが、会社に楯突くほど偉い訳ではなかったので、私もその「活性化団員」の端くれになったのである。
高知に3週間住んで魅力を伝えろ、とのこと。
なんていい仕事なんだろうと、その時は思っていた。
旅行気分で出張し、「取材してくれる」とキラキラの目をした婦人が、街灯に集まるカナブンのように集合してくる。
うまい料理、うまい酒、うまい空気、上機嫌な市民。
これほど最高な職業が他にあるだろうか。
そう、無責任なことを考えていた。
出張という名の旅行を十二分に楽しんで会社に帰ってから1カ月も経たずに、彼らは皆死んだ。
南海トラフ地震で。
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