第45話 新米教師

 「いや、そんなんじゃないけど…。どうした?」

 ミヤは、私がそう言うと「そ、そかぁ」と言って安心した顔をした。それがどうしてなのかを訊いてもそれ以上何も言わなかった。でもなぜか、カメが「へぇ~そんな感じ~」とニヤニヤと笑いながらミヤを見ていた。

 「何その目?」

 「ん?。私は、いっつもニコニコだも~ん」

 カメは、髪を映画の中のヒロインのように、サラッと手で耳にかけた。違和感も何も無い、いつものカメだ。カメは、ミヤにちょんちょんとちょっかいをしていた。こうやって見ていると、二人がお似合いだと思ったりした私だった。

 私たちがそうやって話していると、後ろから先生が来た。次の時間は、 言語文化だった。私たちの言語文化の担当の先生は、女性でまだ若く、気が弱くてあまり怒らない。だから、私たちが話し終わるのを待っていたようだった。

 「あぁ、すみません!」

 私たちは、急いで自分の席に行った。それからすぐにチャイムが鳴り、授業が始まった。

 「じゃあ前回の続きから。わろしという言葉の意味を覚えている人」

 午後の授業で古典ともなれば、男子のほとんどが早速眠りに入っていた。担当の先生の性格もあってか、みんなちょっとなめている節がある。とかいう私も、手を挙げることはしなかった。

 「んー、まぁ簡単に言えば今のこの教室は、わろしですよね」

 先生は、誰も手を挙げないこの状況を見かねてか、そんなことを言った。正直言えば、わろしの意味なんて知っている。中学校で習うのは、「好ましくない」が多いだろう。だから先生は、「この教室の状況は、好ましくない(良くない)」と言いたいのだ。

 「好ましくない…」

 私の後ろから、寝ぼけたような声でそう聞こえてきた。

 「はい、松崎さん正解ですね。そうです、わろしという古文単語は、現代語訳で好ましくないです」

 回答をしたのは、エイだった。私が後ろを振り向くと、すでに眠りに入ってしまっていた。実をいえばエイは、テストの順位が学年でも上位にいる。毎回どの授業でもほとんど寝ているはずなのに、私の得意教科以外は、私よりも上の点を取っている。周りでエイよりも点数がいいのは、ミヤとタカぐらいだろう。あとカメは、副教科が高い。

 その後も授業は続いた。終わるころには、クラスのほとんどが眠ってしまっていた。それなのに先生は、淡々と授業を進めていった。最初頃よりも強くなっている気がした。

 授業の終わりのチャイムが鳴り、寝ているみんなが起きて、挨拶をすると、先生はすぐに荷物をもって出て行ってしまった。黒板には、きれいな文字で書かれた古文と現代語、説明が残されていた。

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