パラダイス

草二仁

プロローグ

胸が熱く燃えるように痛い。

これが死ぬ感覚かと思い、滝のような血が流れる自分の心臓を見る。

「あっという間の人生だったなあ」

そうつぶやくと一人の少女が自分にもたれかかるのが目に見えた。

少女も胸から血が流れていて、そろそろ死んでしまうだろう。

せめてもの生、もう少しこの娘と生きてみたかった。と後悔の念がたぎる。

「愛しいあなた、また…会いましょう…」

少女が行き絶え絶えにそう呟くと目を閉じてしまった。

目の前には血が流れる剣を持つ者の姿が見えるが暗闇で姿が見えず、抵抗する力もない。

「もう一度おまえに会いにいく…約束だ…」

男も息が切れかけるように呟き、目を閉じる。

来世ではどうなるのだろうと思いながら男は命の炎を消す。


・・・


目が覚めた。わずかに胸に感覚が残り、少し痛い。

「変な夢だったな。本物かと思った」

男は目覚めるとカーテンを開け、朝日を浴びる。

暦は4月、新しい季節が始まり多くの出会いがあると予感を巡らせ、部屋を出た。

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パラダイス 草二仁 @kusaga2hitoga2

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