第2話ポンコツ社長、社員に仕事丸投げ

「……社長、またやらかしましたよ」

朝9時45分。

ミキクリエイトのSlackに、突如として“爆弾”が投下された。

ハルオ社長(在宅中):

【重要】新サービスのリリース、今週の金曜に前倒しでよろしく!

デザインとか細かいのはあとで考えよ!スピード命だよね!

「……は?」

久保の手が止まり、佐野はキーボードを強く打つのをやめた。

新人の田中は、口を開けたまま静止していた。

「金曜って……あと3日じゃないですか」

「いや、デザインまだ上がってないし、営業資料すら作ってないし、サーバー動いてないし……」

「つまり“何もできてない”ってことですね」

「正解!」

そもそもこの新サービス案、社員の大半は知らなかった。

企画会議にいなかったどころか、企画自体が幻だったのでは説すらある。

「社長の中では、きっともう成功してるんだよ」

「ハルオワールドでは、たぶん我々は“優秀な部下”って設定なんでしょうね……」

その後、会議室で緊急ミーティングが開かれた。

メンバー:

佐野(営業主任)

久保(経理)

田中(新人)

プロジェクトリーダーに“された”広報の三枝(当日Slackで任命された)

三枝は目を見開いたまま呟いた。

「……私、昨日までこのプロジェクトの名前も知らなかったんだけど?」

「俺らもです」

Slackには、のんきなメッセージが次々に投稿される。

ハルオ社長:

いや~、みんなならやれると思っててさ!オレ、君たち信じてるから!

ハルオ社長:

あと、金曜のリリース発表、オレがnote書くから安心して!

(文章とかはあとで丸投げするかもだけどw)

ハルオ社長:

PS:プリンまた誰か食べた?マジでキレそう

「もはやプリンのことしか真剣じゃない」

田中は、心の中で泣いた。

この会社、おかしい。というか社長がおかしい。いや、人として何かが欠けてる。

しかし、このとき田中はまだ知らなかった。

この“無茶ぶり案件”が、思わぬ方向へ転がり――社長の過去に関わってくることを。

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