付与と刃のディゾナンス〜冒険者パーティを追放されましたが、ぶっ飛んだ美少女に囲まれてなんとかやって行けてます。〜

妖刃−不知火壱式改

追放されたぁ!

「ガンズ、君をパーティから追放する。」


行きつけの酒場。クエストの終わった冒険者のパーティがわいわいとうるさいぐらい騒ぎ立てる店内。

いきなりの宣言に、僕は戸惑った。

わけがわからない。

僕はパーティのために、身を粉にして頑張ってきたのだ。


「ど、どうしてだよ、ナガレ!僕たちは一緒に頑張ってきたじゃないか!ゴブリンも、クラーケンも、ドラゴンだって力を合わせて倒してきたじゃないか!それなのになんで…なんで僕だけ!」


パーティのリーダー、ナガレはふぅと溜め息をつきながら、僕を見据えた。


僕たちのパーティ、「夢の翼」は冒険者連合のなかでも最高ランク、「S」の称号を受けているパーティだ。

リーダーで剣士のナガレ。

ヒーラーの女の子でグラマーなルカ。

魔法使いの小さな女の子、カルア。

パーティのタンクにして鎧姿の性別不明、キリ。

アーチャーの幼馴染、モリア。

そしてバッファーの僕、ガンズ。

合計6人のパーティ、「夢の翼」はこれまで数多くのクエストをこなしてきた。

最初は僕とナガレだけだったパーティも、カルアが加わり、キリが加わり、最後はモリアまで加わって大所帯になってきたのも確かだ。

僕はそのなかでもバッファーとしてみんなを支えてきたつもりだ。

危ない冒険のなかでも、僕の呪文を駆使して頑張ってきたはずじゃないか!?


「ガンズ、君は弱すぎるんだ。」


「どうして!?バッファーはそういうものだろ?」


「もう俺たちはSランクパーティだ。ガンズのバフを使わなくても、屈強なモンスターを倒せる。そう判断したまでだ。いくらガンズがバフをした所で、ガンズをずっと守っていられるほど、パーティメンバーも暇じゃないんだよ。」


「み、みんなはどうなのさ!?僕の離脱に対して何か言う事は無いの?」


「パーティメンバー全員の了承は得ている。」


眼を伏せて頷くナガレに、僕は周りのメンバーを見回した。

ヒーラーのルカはふぅと溜め息をついて僕を見る。

溜め息が色っぽくて、何時も僕を悩ませる。

テーブルの上にドサっと乗るおっぱいは目の毒だ。

あのおっぱいを揉めるように頑張ったのに!


「ガンズさん、傷ついたあなたを、一回の戦闘で何回も治しているんですよ?多すぎますよ。」


「そ、そんな…」


ショックだった。

何時も優しいルカが僕をそう思ってるなんて!

僕は隣に座るカルアに眼を移した。

おどおどした眼は露骨に僕から眼をそらす。

僕が何をしたんだよ!


「わ、わたしも賛成しました…。ガンズさん、目つきが何時も怖くて…。」


目つきが怖いのは生まれつきだ!

一切僕に責任が無いじゃん!

たまにその身体を思いっきり抱き締めたいと思った事はあるけど。

そのちっぱいの感度を知りたかったのもあるけど!

カルアの隣のキリもウンウンと頷いている。


「ガンズ、ヨワイ。オレ、キライ…。」


鎧姿のキリはガチャガチャと音をたてながら頷いていた。

おい!真剣な話をしてる時ぐらい鎧脱げよ!

知ってるんだからな!その鎧の下はめっちゃ色っぽい身体つきの美女だって!

温泉に1人で入りたいというキリを着けていった僕は見たのだ。

鎧の下にいるのはめちゃくちゃな美人さんだった。

エロすぎた。あの後は何回もオカズにしてしまったけど。

すると、幼馴染のモリアがキッと僕を睨みつける。


「あんたわかってないでしょ。あんたのせいでパーティにギスギスした空気が漂ってんのよ!」


「そんな…モリアまで何を言ってるんだよ!」


「うっさい!アタシの幼馴染だから勘弁してやったことが多いけど、もううんざりなのよ!いいから出てって!」


モリアまでもがそう思っているなんて僕には信じられなかった。

幼馴染のモリアは僕とずっと一緒に育ってきて、一緒にお風呂まで入った事まである。

最近は一緒に入ってくれないけど、そのおっぱいは将来立派に育つ事が確定している。

そんなモリアとは結婚する約束までしていたのに!

モリアに言われた僕は、ヘナヘナと椅子に座り直す。

僕は目の前が真っ暗になってしまった。


「…わかったろ、ガンズ。みんながお前のパーティ離脱に賛成しているんだ。ガンズもわかってくれ。」


「う…うう…。」


涙がテーブルに落ち、僕は顔を伏せた。

その時だった。

僕の頭に、のワンシーンが思い浮かぶ。

そうだ。

このシーンは……アニメのワンシーンじゃん!

思い出した!

僕は日本で生まれた管主操かんすみさおだ。

思い出したのは、「追放勇者、最強無敵になってパーティに復讐ざまぁを決行する!」というテレビアニメのワンシーン。

その主役は…ガンズ。つまり僕だ。

どうしてこの世界に来てしまったのかは思い出せない。

でも、僕はこのパーティに追放される主役なんだ。

だったらその主役、やるしかないじゃないか。

何故なら追放したのちに、ハーレム生活が待っているとアニメでは締められたからだ。

こうしちゃいられない。

こんなざまぁ対象のパーティなんかにいられるか!

僕は顔を上げ、ナガレを見据える。


「そうか…みんながそう言うなら…仕方ないよね。」


するとナガレが眼を丸くする。

どうやら僕が素直に従う事はないと思ったのかもしれない。

未来を知ったら、僕が追放されない選択肢はなかった。

ナガレは訝しむような目で、僕の目を見る。


「…えらい素直だな。」


「出てけって言ったのはナガレだろ。わかった。僕はパーティを抜ける。これでいいだろ?」


「あ…ああ。」


「じゃあ、僕たちはこれから他人だ。もう助けてって言っても遅いよ?」


「…ああ。わかった。」


「じゃあね、みんな。僕が居なくなっても頑張ってね。」


僕はそう言ってテーブルから立ち上がると、急ぎ足で酒場を出る。

宿に向かって荷物を支度しなくてはならないからだ。

僕はこれから最強になれるんだと思うと、ウキウキして足が止まらなかった。

まだ見ぬハーレムメンバーを夢見て、駆け足で宿へと向かう。

これから僕の伝説が始まるんだ…。



「なんて、ガンズは思ってるんだろうなぁ」


ナガレは1人、ガンズの離れたテーブルでふぅと溜め息をついた。

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