第2話 102号室
このアパートに内見で初めて訪れた時のことだった。
俺の予算に見合う中で、最も好条件だったからどんな部屋でもここに決めようと初めから決めていた。
消化試合のような気持ちで不動産屋の後をついてアパートに入り、共用廊下を歩いているとき、突然、とてつもない悪臭が鼻をついた。
獣の糞尿がみちみちとつめこまれた室内のイメージが頭に浮かび、吐き気も催す。
涙が出るほどのその臭いに俺は耐え切れず、臭いの元を探るように視線をやると「102」の表札がかかったドアがあった。
「ここって、」
不動産屋にそう聞こうとしたら嘘みたいに臭いが消えた。
気のせいなのかと考えたがそんなことはあり得ない。とてつもない悪臭だった。
しかし、目の前の不動産屋はきょとん顔だ。
「どうかなさいましたか。」
そんな問いに俺はいや何もと答え、目当ての部屋に向かって歩を進めるのだった。
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