第4話 友達
友達
第4章 友達
バキッ、パキ、ガサッ。
どんどんと、ユーラとポッドは奥へ進んで行く。ポッドはユーラの背に引っ付きながら、先程通った帰らずの門までの道のりを歩いていた。辺りはさっき通った時よりも暗い。
けれど、ユーラが持っている懐中電灯と、彼女がいる、というだけでポッドの恐怖心は幾分ましだった。
「……ポッド、怖いなら無理についてこなくてよかったのに」
彼女は、自分の背後でがくがく震えている幼馴染を一瞥した。
「き、君だけをいかせるわけ、な、ないじゃないか!」
辺りをキョロキョロビクビクと見回しながら言われても説得力はない。
「そう……もし危なくなったら逃げて。私だけじゃ貴方を守れるか分からないから」
「え⁈」
正直ポッドは、ユーラといれば守ってもらえると心の隅っこでほんの少し、ほんのちょっぴりだけ!思っていた。
だが彼女はそんな少年の心を読んでいたのか、きっぱりと断った。そりゃそうだ。ユーラにとって、自分の身は自分で守れ、というのが前提の考えとしてあるからだ。
少年はその返答を聞いて、ここまで来て少し後悔していた。
「(……待てよ。僕にとってユーラは強い味方(物理)だけど、ユーラは1人でも強い。僕がいたら足手纏いになるんじゃないか?……)」と思い至った。まあ、正解なのだが。
そう思考に耽っている間、
「!」
二人はとうとう目的の場所へ到着した。
「……ここが『帰らずの門』で、あってるかしら?」
「う、うん」
そして目を見開き、目の前の鉄屑を見る。ポッドにとって2度目のご対面である。一度目は、怖すぎてじっくり見られなかったが、もう一度どその門を見たポッド。門の扉には、鎖が巻かれていた。鎖は年月が経ち劣化しているのか、巻き方が少し緩んでいる気がした。
「(見れば見るほど、何かを閉じ込めている檻みたいだ……)」
*
ユーラは、常備していた懐中電灯を片手で持ちながら、ゆっくりと周囲をその光で見渡した。その後、帰らず門をじっくりと眺めだした。
彼女がどんどん門の方へ進むから、ポッドは慌てて口にする。
「っユーラ!やめろ!怪物がいるってさっき言っただろ?!」
ポッドは小声で門に進んで行く彼女へ話しかける。
ユーラは門を調べ始めた。ポッドの声を聴き流しながら足を止める、ふと門を間近で見て気になったのだ。
「これは……開いてる」
そして彼女は門の、扉と扉の間が僅かに開いていることに気づいた。
「そ、その門、さっき来た時も少し開いていて……その間から怪物が見えたんだ!」
ユーラの後方で、震えながら彼女へ話しかけるポッド。
ユーラは持っていたライトを、その門の隙間へ当て、中を確認した。
「……」
けれど、中の様子をできる範囲で覗いても扉の手前だけで、奥の方はほとんど光が入らず見えなかった。――真っ暗だ。
彼女は息を吐くと、自分の視線を門の暗闇の向こうから、今度は足元に向けた。
「(何も見えない……)ふぅ……!」
直後、はっ!と、目を僅かに見開き、その場にしゃがんだ。
彼女の背を後方で見ていたポッドは、恐る恐る問いかけた。
「どうし、!何か、いた?」
ポッドはユーラに尋ねた。
「……いえ。
そう言うとユーラは一度目を伏せ、そのままゆっくりと立ち上がり、門から二歩下がった。その行動を疑問に思ったポッドは、次の彼女の行動で、目を見開くのだが……。
彼女は、その門から少し下がり距離をとったところで、ふんっ、と言った。ユーラが片脚を上げ始めたところでポッドは、「え、」何やってるんだと言おうとした。だが、声をかける余裕もなくユーラは回し蹴りの要領で、微かに開いていた門を、力ずくで閉め始めたのだ!
――ドガァァ――!
――ギィィぃ〜バタン!
それを見て、ポッドは何が起きたか一瞬分からなかった。
「?!」
えぇぇ何やってんの?!と、口をパクパクさせる事しかできなかった。
驚いたのはポッドだけで、少女はその一連の動作を何事もなく終えて、ポッドに向き直り近寄っていった。
「な、な、なな何してんだよユーラぁぁ?!」
突然の彼女の行動についていけないポッド。
「あるべき姿に戻しただけよ、少し開いてるの嫌じゃない」
真顔で答える彼女。けれど表情はどこか暗い。
「いやいやいや、やり方……」
ダメだろ、もっと正しいやり方あっただろ、と突っ込みたい気持ちを少年は抑えたが、ひとまず……
「で、でも、そんな!僕本当に見たんだ!それにカメラを……!」
ポッドは、ここでカメラを落としていた事を思い出した。
「そうだカメラだ!僕、カメラを落としたんだ!」
「カメラ?……そんなの見当たらなかったけど」
「あったら、それに映ってるかも!」
もしかしたら怪物がカメラに写り込んでいるかもとポッドは思い、彼はすぐ周りを探がそうとした。
しかし、それを静止させたのはユーラだった。彼女は未だ深刻そうな顔をしている。
「待って、ポッド」
彼女はすぐポッドを呼び、動かないで、と小声で話す。
「?」
そしてポッドの近くまで辺りを窺いながら近寄った。
「……よく聞いて」ユーラは静かに話し出す。
ポッドは彼女の真剣な面持ちで話し始めたので黙って聞いていた。
「中は……何も見えなかった。鍵と鎖で巻かれているこの門の向こう側を、これ以上見ることはできないわ。けれど、……扉の向こう側から押されているような跡が確認できた。それに扉の入り口付近に……血痕があったの」
「っ、血痕?」
「えぇ。血痕が掠れていた……わりと最近のものよ、おそらく外から来ている。それが人間のものなのか、動物なのか……将又、貴方が言う怪物のものかどうかは不明だし、なんとも言えないわ。私もこの先の構造を知らないから。でもここは、立ち入り禁止区域に指定されているはず。そんな場所から血痕が見つかったと言う事がそもそもおかしいの」
「!」
「侵入されている……この可能性を否定する事ができない」
それを聞いたポッドはゾクゾクッと体中に鳥肌がたった。
――じゃ、じゃあもしかして、あの怪物はもうそこら辺に潜んでいるんじゃないのか?!とビビるポッド。パクパクと口から空気がぬける。
「落ちついてポッド」と彼女はさらに続けた。
「この門、錆びている様に見えるけど……中々頑丈だわ。だから壊すのはそう簡単にできる事じゃない。侵入者はずいぶんと手こずっていたようね……それに怪我もしているわ」
ごくりとその内容を聞きながら、唾を飲み込んだ。
「侵入していると考えるなら……街で続出していた怪奇な噂、あれは割と合っているのかもしれないわ」
街で聞いていた南地区から何やら、人影なり、化け物を見たと言う噂をユーラは思い浮かべた。
そして、彼女とポッドの視線が合わさる。
「この国へ入るには、手続きが必要よ。放浪者が不法に侵入した場合、処罰されるわ。……動物であの門を力強くで通れる、かつ小さい生き物を、私は知らない。この事を一刻も早く、王立警察と宮殿に報告しなければならない。戻りましょう」
「戻るって……怪物はどうするんだよ!このままでいいの?!」
「私は、これ以上入ってこないように門を塞いだわ。アレ、応急処置よ。袋の鼠にした方がやりやすい。ポッドは私から離れないで、怖くないならいいけど」
「っ君は、何でそんな余裕なんだ?!今だって、侵入されているかもしれない怪物に襲われるかもしれないじゃないか!」
ポッドは、なぜユーラがこんなに慌てず、恐れないのか不思議だった。――今だって怪物に襲われるかもしれないのに、ユーラがこんなにも冷静でいられる事が可笑しく、むしろ自分が変な反応なのか?と疑いたくなった。
ポッドは、一度はこの門を二度と見たくないと思っていた、すぐこの場から逃げたい想いでいっぱだ、そのはずなのに、そのはずだったのに!……二度目でユーラとこの門へ来てから、僕はなんで、こんなにも――――。
「(安心できているのだろう?)」
1人か2人の違い?そんなものじゃないと断言できる。
感覚、神経が正常に機能できていないのだろうか。彼女の目、纏う空気に触れてからは、焦りや恐れも薄れているのだ。
少し間を空けて、彼女はこう答えた。
「何でって、私は貴方と比べて――――――強いもの」
はっきりと言い放ったその言葉は事実であり、真実なのだろう。
――圧倒的な強さが、素人目からでも分かった。
「ユーラ……君は一体、」
――何者なんだ?と聞きたかったが、彼女の眼光は鋭くポッドを射抜いていた。
――今、それ以上何も言ってくれるな、と。
ポッドはユーラを眼から言われている気がして、目を逸らした。
「……戻りましょう」
ポッドは腑に落ちず、戸惑うばかりだった。
――――――――
パキパキ、バキバキ、ガサガサ
二人は来た道を、ユーラを先頭に進んでいた。
彼女の頼もしい背を追いながらポッドは気づいていなかった。遠くの茂みに潜み、こちらを観察している黄色い眼光を持ったソレに。
ソレは、ポッドが落としたカメラのフィルムを器用に掴み眺めている。
ユーラはソレの気配に気付いてはいた。しかし、「ソレ」の位置を把握する事ができず、「何かがいる」といった感覚しか掴めなかった。こちらに殺気を飛ばしてもこないソレに、彼女の研ぎ澄まされた本能が告げている。
「(妙ね――すぐ仕留めにこない。相手は息を潜めている。こっちを観察しているの?)」
――空気から伝わる人間特有の感情の揺れらしきものを感じない。かと言って、野生の獣臭さでもない、そんな妙な感覚、と。彼女はソレの正体が何か分からなかった。
「(まぁどんな相手であろうとも、私は勝つけれど)」
彼女は未知の恐怖よりも、高揚感が勝っていた。
――怪物。それは私の好敵手となって目の前に現れるのだろうか、と。
まだ見ぬ闘いを想像するたびに、自分は喜びを感じていると冷静に理解していた。
「(さぁ……くるなら来い)」
――これが、阿暁一門に生まれた性なのだろうかと、彼女は思考の片隅で思った。
恐怖とは裏腹に己を更なる高みに導いてくれる相手がまだいるかもしれないと言う事実に、漏れ出す微笑みを止めることはできなかった。
ポッドとユーラの後方にある遠くの茂みで、ズズ、と黒い尾が蠢いていた――。
――――――
コンコンッ。
「どうぞ」
中から年老いた男の声が響いた。
「夜分遅くに失礼します」
通された部屋には、老人男性が1人。
(王立警察――本部にて)
「ふぅ〜、健康第一、体は資本……zzzはっ!すまん、すまん」
そう呟きながらお茶を飲んでいる、朗らかそうなご老人がそこにはいた。彼は眼鏡をかけ、口元にカイゼル髭を生やしている。見た目的に公園のベンチで花を愛でていそうな雰囲気を持っている人で、誰がこの朗らかそうなご老人を、現役バリバリの警察官だと思うだろうか。
「で、要件は何かね?――」
そんな朗らかな老人の目の前に座ってる少女は、かれこれ数十分話していた。
「――南地区の門から血痕が?……それは変だ。すぐ捜索部隊を編成し、目撃情報と情報収集を行おう」
「ありがとうございます」
と順調に進んでいた。
「ところで……なぜ、そんなところに阿暁一門の君がいたのかね?」
王立警察の長はユーラを真っ直ぐ見る。疑っていると言うより単純な好奇心なのだろう、目がそう言っていた。
「妙な噂が多発していたと言うのもありますが……目撃者がいたので、真偽を確かめるべく向かいました。嘘ならそれでよいと」
「そして、それは見逃せない案件になったと言うことかね」
「はい」
――あの門の後、2人は何事もなく無事に帰宅できた。その道中、ユーラはポッドに色々話を聞いていた後、ここへ来たのだ。
「ふむふむ……怪物のぅ。……あそこは立ち入り禁止区域じゃ。なぜ一般人が入っているのかの?」
「確か……肝試しのようなものだった、と。安心して下さい。その者に注意はしときました」
その目撃情報はポッドの話が主だった。彼がいじめっ子達に、無理やり門に行かされていた事を、肝試しのようなもんだろう、と彼女は濁した。そうすれば、門へ向かわされたポッドを罰せられるリスクはなくなる。嘘は言っていないはず、と。
「ハァ……今度からその門に限らず、立ち入り禁止区域の警備を厳重にしとくべきかの。……だが、王立警察ではなく、『王の右腕』とも言われる阿暁一門が自ら赴く案件かな?それとも、それほど我々の警備は頼りないかね?」
「いえ、そんな事はございません。今回、偶々私が近くを通りかかっただけですので。それとも……私を疑っていますか?」
「ほっほ〜ん!そんな事はない!むしろ一般人より君達の言葉なら信憑性がある。気分を損ねたのなら謝るよ。どれ茶菓子はいらんかね?」
「(ほっほ〜ん?)いえ結構。兎に角、警備強化の件と情報収集、頼みましたよ」
バタンッ――。(扉を閉める)
「いいんですか?あんな小娘を簡単に信じて?怪物の話だって絶対嘘でしょ!我々を侮って、遠回しに警備が杜撰だと言いたいんだ!こっちだって真剣にやってるってのに!それに、禁止区域へ一般人が立ち入った罰はさせなくていいんですか?!王の右腕だからって、注意するだけで見逃して……」
老人の補佐の男、メルベンは苛立ったように言った。
「ほっほーん、そんな邪険に言うてやるなメルベン。的外れな嘘は言っておらんようじゃしの。それに彼女は我々を信頼しておるよ」
「ふんっ、どうだか!」
「……ただ、
「あの娘が例の!?……風の噂で聞きましたが、確か……過去に一門の長男は死亡している。順当にいけば彼女が当主となる筈では?」
「ふむ、まあそう思うじゃろうな。彼らも当主は由良様で問題ないと言うておるらしいのじゃが……今は彼女の母親が現当主だ。どうも一悶着あるらしくての……10年前の一件からじゃ、深追いするなよメルベン」
「……はい」
その言葉にメルベンは納得していなかった。
窓の向こうは、街々のネオンの輝きが闇夜に映えていた。
「(なんとまぁ、大きい満月かのぅ、)」
窓際に立って、月を眺めた。周りの木々が揺れてる。風は、不気味に葉を踊らせていた。
(続く)
_______________________
1) ペクタは、この世界のお金の単位。円=ペクタとして表記した。
2) ・阿暁一門 (あぎょういちもん)攻めの体術、剣術での攻撃を主流とする。 自らの力量によって、相手の能力を凌駕しようとする。
・吽暁一門 (うぎょういちもん) 守りの体術、結界などでの防御を主とする。 相手の力量によって、その能力は左右する。
どちらも古代より王に仕える。相手の気配を察知し、危険察知ができる。王は両一族を庇護下に置き、かつ「王の右腕」として、その地位を保証している。
――――――――――――――――――――――――
ポッドは門の一件から数日後、町にある市民図書館へ来ていた。
市民図書館は、パルベニオン帝国が東西南北で分かれている区間に一個ずつ、合計4ヶ所存在している。割と大きい建物で3、4階建てほどの高さがあり、外観はお城のような建物である。内部は木目調なので、建物の中に入ると温室の植物をここで育てているかと錯覚させるほどに自然的で、落ち着いた空間だった。なんともお洒落な図書館なのである。
僕がここへ来た目的は2つあった。1つ目が、例の門で見た怪物の正体を知る事だった。
2つ目は、借金の事で誰にも相談できないため、どうにか返済できる方法はないかと、知恵を探しに来たのだ。
ポッドは広い図書館を歩き回り、最初は動物のコーナーにたどりついた。動物図鑑を見ても、あの怪物と似たようなものは見当たらなかった。パタンと本を閉じ、結局、次の目的であるお金の稼ぎ方を探しに再び歩き出した。
「(地道に稼いでいても、到底払い終わることはない。かと言って僕が死んだら、母さんや弟に連帯責任を追われる。それだけは避けなきゃ……)」
何とか打開策がないか思考する。
「(はぁ、億万長者になれたらいいのに……)」
「(僕って、ほんとなんの取り柄もないな……)」溜め息が辺りに広がる。さっと、視線を本棚に戻して再び背表紙を眺めて興味がある本をとって開いてみる、の繰り返しだ。金儲けの本には、成功者の方法がみっちり書いてあるが、どれもポッドとの共通点がないものばかりで、再現性がないものばかりだ。よさそうな本を見つけは、ペラペラ、とページを捲る。
――この先は有料です、と明記されている本。裏表紙には金額が記載されており、10000ペクタと記されている。手持ちは、なけなしの500ペクタ。ポッドは眉を顰めて、何度目か分からないため息をついた。
「はぁ……」
パタンッと本を閉じる。
図書館には、いろんな人が静かに本を読んでいる。ポッドは奥の方の本棚へ歩き、また探す。本の背表紙を眺めながら、どんどん奥へ進んでいく。
ふと、図書館の一角の、ある本に目が留まった。その場所は人気がなく、窓際の方に人が1人居るくらいだ。
――探検記 真理の追究 前編――
「……たんけんき?」
面白そうな本を見つけたので、ポッドは手に取って中身を確認し出す。ペラリ、と1ページ紙をめくった。
――ここに記されている事柄は、全て私が体験したものである。
その本の冒頭は、そうやって始まっていた。その文に興味を引かれて、ポッドは次から次へ、文字を目で追っていく。
――私は嘘を綴らない。この話を信じるか信じないかは、君の判断に委ねる。
だがもし君の手に、この本が渡っているのなら、おそらく記していい事象だけを見せているのだろう。
前置きが長いな、とポッドは思った。
――結論から言おう、この世界は××××××であり――。
「何だよ、これ、」
ペラペラと、次のページへと紙をめくっていく。
――であるから××××××××××。
ペラペラー。
――我々が理解するべき事は×××××××××で、×××××である。
その1ページだけに留まらず、あらゆるページに文字を読めない細工がしてあったのだ。その事にポッドは不信感が募っていく。所々に挿絵が載っているページがあり、それらに図示されているほとんどが、この世のものとは思えない化け物や、妖精のようなものが描かれていた。
作者自体も不明と書かれており、探検記と言いながら結局、何も分からないじゃないかとポッドは思った。
「ん?前編ってことは、後編もあるのか?――王立図書館にて保管。――これらの本を読むには『
王印とは、王しか持っていない印鑑の事だ。つまり、この本は、王のハンコをもらった申請書が必要と書かれている。本の裏に作者と同じところにそれは書かれていた。
また王立図書館とは、市民図書館とは違い、市民図書館にある本より更に危険な本や専門的な本が多く保管されている。そのため、王族が直轄で管理しているのだ。王立図書館へ入る場合、一般人は申請なしにそこへ入れない。
詳しく読んでいくと、職員を通じて王宮と手続きをする必要があるらしい。更に、この本の申請を通るためには、ある条件が必要なようだ。
「『この書籍を読むに当たり、王印申請の条件 ・年齢制限なし、但し王立博士号の資格を有する者』……って、絶対僕じゃ読めないや……ん?」
上記の資格は取得困難と呼ばれているもので、この国でも両の手で数えられるくらいの人数しかいない。そして、次の文に疑問を抱く。
「『・外部で発生した特異点を発見、又は経験した者の場合、その限りではない』……何だそれ?」
初めて見る「特異点」という文字。それが何の事なのかポッドはさっぱり分からなかった。それに、どうやらこの本はサンプルらしい。
「はぁ……(てか、外部って探検家とかじゃないと外にすら出られやしないや……でも、――もしも叶うなら、外の世界を見てみたいな。いろんな物を見て、新しい物を作って……それでお金を稼いで……そしたらリクにいい医者を診せてあげられるかもだしれない、母さんをもっと楽にできるかもしらない。……あ、――そうだった、僕の夢は)」
――探検家になる事だった。
ふと、昔の夢を思い出したポッド。
ゆっくりと幼き日の記憶を振り返る。
(記憶)
豪快な音と共に、門の外へ出ていく軍人と思わしき人々は、勇ましく、何よりかっこよかった。ひどく単純な理由だが、そんな彼らの勇姿を見てから、僕も将来なりたいと思ったのだ。
小さい時から探検家になりたいと思っていたポッド。あの頃は希望と夢に溢れていた。
「(外に出るとしたら、まず探検家の試験を受けないと話にならないし……そもそもなれない、僕じゃ……)」
――――――――――――――――――――
探検家、この国でその職は『特殊外交特攻部隊』とも言われる。
特殊外交特攻部隊は2つに分類されている。
1つ目の分類が、ちゃんとした養成施設で、試験や訓練を受けてきた者だ。主に軍人を目指したりする者が進路変更などで、探検家の道へ行く人も少なくない。ここから出身の人たちは外を探検する際は、チームを編成し行動する事が義務づけられている。
2つ目の分類は、一般人からなる者たちだ。
「一般人からの募集」は常にかかっている。試験を受けるにあたり危険を伴うが、その分合格したら、特殊外交特攻部隊と同じようにお金を稼ぐ事ができるのだ。
参加資格はただ1つ。
――未知との邂逅を恐れず、死ぬことを厭わない者だけを求む。
正規のルートで特殊外交特攻部隊となった者とは違い、一般募集で晴れて探検家となった者は、単独での行動が許可されている。
一般募集で集まる奴らは、イカれた奴らがくると陰で言われており、死ぬ者のほとんどは遺体が残らない。その者の名も明かせず、外部で見た事や体験した事は一切口外できないという。その為に「契約」を交わすのだそうだ。
――どちらにしろ、彼らのお陰で未知の領域を明かせるのは事実――。
その危険性と崇高な行動から、旅路は同盟国やその他の補助は手厚い。
一般人でこの職に就くほとんどの者が、未亡人や独身の者、貧民街出身の者、……あと本当なイかれた変態なやつ、などさまざまである。
一般募集は金はかからない。なぜなら、命が対価となるからだ。そんな試験、普通の人ならまず受けない。養成施設からなるにしても、一人前と認められるまでに莫大な資金がかかるのだ。
――――――――――――――――――――――
「(まぁ、そんな唯一の夢も、叶えられないな)」とポッドは今までの現実を振り返った。
――借金まみれの自分、生活するのがやっとの家。仕事場も苦痛だけれど、何とか生活できていて。やつれた母、目の見えないリク、クズの父親、いじめっ子達、家にくる取り立て人、冷酷な王宮の人間。
「(これ以上、どうすればいいか……分からないや)」
いっそ、死んだ方が楽になれると思っていた。
そんな陰を纏っていたポッドの真横から、その憂を蹴散らすように、すっ、と人の腕がポッドの顔の真横を横切った。
ポッドは本棚に正対していたので、横から伸びてきたその手の人物に気づかなかった。近くにある本を取ろうとしていたらしい。弾かれたように手の主を真横からそっと覗いた。
「!(この人、窓際に座ってた人だ)」
黄金色の綺麗な瞳と、フードからはみ出ている茶髪の髪がそこにあった。顔を隠しているのだろうが、僅かにみえる鼻筋や口元のつくりから伺える横顔が、とんだ美形だった。
ポッドは、横にいるその美しい人物の珍しい瞳の色を凝視していた。
「……何か?」
こちらを覗く
「え、あっすみません」
咄嗟に顔を逸らし下を向いた。自分が相手の目をじっと見ていた事に、相手も分かっていたので恥ずかしくてたまらなかったからだ。
視線を泳がせていると、声がかけられた。
「……君、この近くにあった本を知らないかい?」
「え?……あ、もしかして」
急に話しかけられてポッドは少し驚いたが、少年が探している本に心当たりがあった。そのため、自分が持っていた本を、体の前へ持ってきた。
「この探検記かな?」
そして、未だ手にもっている探検記のサンプル本の表紙を彼に見せた。
すると少年は、ゆっくりと視線をその本へ移した。そして、ポッドとその本を交互に見た。
「そう、それだ」
――どうやらこの人は、ポッドが見ていた本を探していたようだった。
「今読んでたかい?それとも、これから読む予定だった?」
その質問に、ポッドは頬をぽりぽりと掻きながら答えた。
「えっと……ううん、読まないよ。興味はあったんだけど僕じゃ読めそうにないから見てない。……君が読んでくれて構わないよ」
「そうか。なら失礼する」
ポッドはそっと手に持っていた本を、相手に渡す。
相手の声色や見た目からだが、ポッドと同い年くらいの少年だと推測した。
「(僕と同い年くらいかな?にしても随分大人びてるな)」
ページを捲る所作からも、どこか気品を感じさせる。
「(あれ?その本、申請が必要だったような?)その本を読む為には、確か申請書が必要らしいよ」
「ん?……あぁ、これはサンプルか」
彼も同じように本の裏を確認して答えた。
「そうか……問題ない。教えてくれてありがとう」
「あ、いや……」
ポッドは正直驚いていた。あの条件を満たしている人がいたなんて、いったい何者なんだ?すごいなあ、と。
その少年は、本を持つとカウンターまで行き、何やら受付と話をして、また戻ってきた。そして、先ほどの窓際の椅子に腰かけて、別の本を読みだしている。
「(絵になるな~)」
彼の一連の動作を、まじまじと見てポッドは思った。ふと、少年がポッドへ向けて声を発した。
「……君は、探検家になりたいの?」
「え?」
――少年が、僕に話を振ってきたのだ!
突然のことだったので、変な声がでてしまった。ポッドは、同い年くらいの友達が周りにいなったので、美少年が自分に話しかけてくれたことに、体へ緊張が走った。――でも内心では嬉しかったのだ。
そのまま少年は、ポッドに話を振った。
「さっきの本……あれは探検家用の本だったから、もしかして外に興味があるのかと思ったんだ。違ったかな?」
「う、うん!そうだよ!偶々通りかかって見てたら題名が面白そうだったから!でも僕じゃ読めないし。……他にも探したいのがあったからいいんだ」と濁した。
――まさか借金返済のために知恵を図書館で探しているとは、出会って数分の子に言えるわけがなった。それに、ポッドは嬉しかった。
――もしかしたら、このままこの子と友達になれるかも!と。
「へぇ、そうだったのか」
「うん……」
……沈黙。
――まずい、このままではこの子との会話が終わってしまう!
「そ、そうだ!君の名前は?なんて言うの?僕はポッド!」
彼は、本のページをめくる指を一瞬とめた。けれど視線は本のままに、ポッドの問いかけに答える。
「……ハルト」
間をあけて少年はそう答えた。ハルトは、また本のページをめくり出す。
____________
第一印象は、吞気そう、善人そう、何処かで見かけた事があるやつ。
あ……あの時の奴か、と初見でポッドを見たハルトの感想はこうだった(実際には、宮殿で後ろ姿は見ている)。
月並みな印象の少年。
でも……その瞳は――。
____________
「ハルトっていうのか、よろしく!(まずい、会話がみつからない)そ、そういえば!そろそろ王位継承選挙が始まるよね」
「!……ああ、そういえばそうだったね。……確か、候補は4人」
「(食いついた!)そうらしいね!珍しいよね選挙するなんて!どんな人が来るのかな」
「……さぁね。……君はどんな人が国王になって欲しいと思う?」
「うーん、僕、そういうの分からないし。正直まともな人なら誰でもいいかな。君は?」
「……そうだね、僕は――別に誰でもいいかな。正直興味はない。そもそも投票する気ないし――……彼らに投票する意味もない」
後半を小声でハルトは言った。そう呟いていた彼の瞳は、どこか闇があった。その声をポッドは偶々聞き取ってしまった。
「!」
少年のその返答もそうだが、彼が真顔で淡々と話すその横顔を見て、ポッドはなぜか怖くなった。そのため後半を聞こえないふりをした。
「へ、へえ……王宮の人達はみなすごい人たちばかりだと聞くよ。そんな彼らだから、もっとこの国を良い方に導いてくれると思うし、誰が王になってもいいかなって思ってるんだ。」
「……君は純粋なんだな」
彼は何処か呆れた様子でポッドを見た。
「?」
ポッドはその意味がよくわからなかった。この話はやめて別の話題を切りだそう、とポッドは思った。しかし、不意に彼はポッドに問いかけた。
「……君の夢、もしかして探検家になることだった?」
「え?う、うん……小さい時の夢だったけどね!今は、……諦めちゃってるよ」
――なんで急にそんなことを言うのだろうとポッド不思議に思った。
「そうか。まぁ……それは無理な夢だよな、君じゃあ。」
「うん……え?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。ポッドは顔を、ハルトにバッっと向けて凝視した。本を読みながら、今も優雅に読書をしているハルトの口から、そんな毒が吐かれるなんて思いもしなかったのだ見てしまうのも仕方ない。
確かにポッド自身、探検家(特殊外交特攻部隊)になるのは叶わぬ夢と分かってる。だが流石に、出会って数分の奴にそんな否定的な事言われたくないと、少しムッとした。
急に喧嘩?マウントとってきたのか?とポッドは思った。
「あはは……そんな直球に言わなくても……」
「いや、君には無理だ。諦めて正解。夢を追って満足して終わるだけの人間だよ、
「……なんでそんな事、君に決められなきゃいけないんだ」
雲行きが怪しくなってきた。流石にポッドもムキになって言い返してしまった。確かに自分は、叶えられないかもしれないが、なぜ赤の他人に決めつけられなきゃならないんだ!と。
「なぜなら君は、……選択できる道があるのに選択していない」
「!」
その言葉にポッドはドキリとした。
「なぜしないのか……それは、自分で自分の未来を生きていくという覚悟がないからだ。だからすぐ諦めて、嘆いているだけで何もしない。そうやってずっと惨めな自分に酔って、最後には環境がわるい、人が悪るいだなんだといって責任を他人に押し付ける」
「っ、そんな事……な、」
――ない、と僕は胸を張って言えるだろうか。
「それは君自身が、人生を諦めていて、どうでもいいと少なからず思っているから。だから……何もかも多数決に流されて終わる」
「っ!」
「『自分がこんなに辛いのは、環境のせい、あいつのせい、誰かのせい』……そう言って被害者ぶり、当たり散らすだけだろう。その原因を、さらに助長させているのは己だという自覚もない。あろう事か不幸な自分に酔って、いつか現状が変わると信じて、叶えもしてくれない神様にただ祈るだけ。健気にも『自分は不幸じゃない』と言い聞かせて偽善者ぶる姿は滑稽だよ。――と、まあそういう君のオチが僕には予想できてしまうのだが……」
「っ、」
「今の現状を変えようとしない奴に、行動しようともがかない奴に、茨の道を進む覚悟がない奴に……諦めてるだけの人間が、夢だなんだを見る余裕なんてないんじゃないのかい?」
それは至極当然の意見だった。ハルトは淡々と言っているだけで、別にお説教をしているわけではなかった。彼自身は単なる意見を言っていただけだった。
けれど、それを聞いていたポッドの心の中はぐるぐると渦をまき、怒りや、どこかで彼の発言に納得している自分と悔しさであふれていた。
「……なんだよ」
――ドクン、ドクン――心音がやけに聞こえてくる。
(ポッドの心の中)
家が貧乏なのはなぜ?_もともとだった。そこまでしか稼ぎがない親の責任だと思った。_ここまで養っていくために自分も含まれているとも知らず。
欲しいもの、知りたいものがあった_金はなかったから得られる情報やモノは少ない。だから今でも充分だし、贅沢とさえ思いながら自分に言い聞かせていた。全部父親が作った借金のせいだと納得させて。_周りを見れば、金なんとなくとも利用できるものがあることに僕は気づいていなかった、情報なんて自分から取りにいかなきゃ、誰かから教えてくれる事の方が少ないのに。
クズの父親_なぜこいつの為に母と弟と自分は働きながら頑張って生きているのだろう。_そいつを見捨てて生きてく覚悟が、母と僕らには未だにないのだ。
自分を頼りにしている母親_母は働きながらも、なぜあんなクズと一緒にいるんだろう。僕が稼いだ金も全て借金に返済しているのに。あいつにあげる金や飯のゆとりなんてないのに。リクへの治療費や借金の返済に集中したいのに!_母は別に完璧でもなんでもない、同じ不完全な弱い人間だと分かっていたのに……彼女は結局、頼れる人が傍にいてほしいだけなのだ。
――花瓶を割った犯人にされた僕、多額の借金を背負う僕、いじめっ子達にいじめられる僕。――僕、僕、僕……全部。
あぁ、――あれ?僕は――いったい、なんの為に生まれてきたんだ?
こんな人生になっているのは、他人のせい?環境のせい?自分のせい?
――不幸なのは生まれた時から分かりきっていただろう?いつまで、希望に縋って受動的になっている?なぜ動かない?動けない?――それは一体、どれのせい?
ぐるぐると、ぐちゃぐちゃと、ポッドの全身に、重い鎖が絡まっているように感じた。
まとわりつく空気も、周囲のざわめきを聞き取る聴覚も、他人の表情を伺えるこの目も、想いを伝えるべき他人の存在も――――全ての存在が邪魔に感じてしまう――
――そして、また自分以外の誰なかのせいにしようとしている。
――ああ、ダメだ。これ以上考えちゃダメだ、考えたくない。じゃないと……………………。
「っなんだよ、急に、知ったような口でさ!……君に僕の何がわかるんだよ!……僕はっ、」
――心のどこかで、自分の嫌な部分が出てきてしまう!
夢があった過去、諦めたのはなぜ_諦めたのは……諦めてしまったのは
ハルトは本をパタンと閉じて、顔を下に向け拳を振るわせているポッドを盗み見た。
「……この国は、大飢饉や疫病、貧困なんかで亡くなっている人は表では見ない。だから自分が不幸の沼へ緩やかに沈んでいる、という自覚がないんだ。その事実を受け入れる強さも、その後の進み方も、乗り越え方も知らない。そういう奴は、やがて朽ちる。――……心が」
――ポッドの心は、声は、爆発しそうになっていた。
「世界は残酷で理不尽だ、後悔の連続しかない。いくら保守しようとしたって、動かないでいたって……動いた後でも、どのみち後悔する時はする。けれど人間とは不思議なもので、自分の心には嘘をつけないから嫌な事を無理やりやり続けることはできないし、諦めきれない。……だから結局、その先に待つ苦しみを、その道を乗り越えようとする責任と、覚悟を持って足掻くしかないと僕は考えている。――――――今の君には幸運も、不幸も受け入れる覚悟がない。受動的に生きている人間だから、どのみち無理だと思っただけさ」
そうハルトは、はきっりとポッドへ言い放った。
ポッドはワナワナと体を震わせている。
――なんだよ、それ、なんだよ!それ!!
「でも、……それでも君の――」
「僕は!」
ハルトの言葉を遮ったポッドの口はいつの間にか開いていた。
「?」
「ぼくはっ!……………………君が嫌いだ!」
大声で叫んでしまった。
「?!」 そのポッドの怒声に、あたりにいた人々が一斉に二人へ向いた。
バッ――!
「はっ!」
図書館という静かな空間にポッドの声は響き渡った。
本棚の死角に当たる位置のそこへ、周りの人間が一斉に、なんだなんだ?とハルトとポッドに様子を見にやってくる。
「!(まずいっ、ここ図書館だった!)」
「……そうか。でも僕は――」
ダッ!
ポッドはハルトの言葉を聞かずに、その場から走って図書館を抜け出してしまった。
*
ポッドはずっと走っていた。周りの目を気にせず、ただひたすらに。
「(なんだよ、なんだよあいつ!友達になれると思ったのに!)」
――『自分がこんなに辛いのは、環境のせい、あいつのせい。誰かのせい』……そう言って被害者ぶり、当たり散らすだけだろう。
「(分かってるよ)」
――その原因を、さらに助長させているのは己だという自覚もない。あろう事か、不幸な自分に酔って、いつか変わると信じて、叶えもしてくれない神様にただ祈るだけ。
「(分かってるさ!神様は何も叶えてくれないなんて、最初から知っていたさ!)」
弟の目を治してはくれない、父親を消してはくれない、母親を助けてはくれない、いじめっ子達からこの僕をかばってくれない、こんな状況の自分を救ってはくれない――何も叶えてくれないとずっと前から知っていた。
――健気にも『自分は不幸じゃない』と言い聞かせて、偽善者ぶる姿は――滑稽だよ。
「……分かってた、はずなんだけどなぁ」視界が涙で滲んでくる。
――今の君には、幸運も、不幸も受け入れる覚悟がない。受動的に生きている人間だから、どのみち無理だと思った。
「……そう……だ……よな」
言葉は後半、掠れてしまった。図星だと分かっていたからだ。
彼は僕にしかるように説教をしたわけではなかった。
……彼はまだ言いかけていた。僕は自身を否定されたと思い、カッとなって言いたいことを感情のままに彼へ言い放ってしまった。
「……最低だ、僕」
足を止めた。
「……謝ろう」
ポッドは顔を上げて、図書館への道のりを戻り始めた。
けれど、図書館へ戻っても先ほどの少年は見当たらなかった。
星ノ日記 〜星の鼓動、壮途につく〜 ららぽーと @lalaport_n1
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