第15話 お嬢様、察する?

「……何言ってんのお前? 付き合うって、それって……」

「だから、学校の中だけでいいから恋人のフリ? 今はそれだけでいいし。そしたら少しだけ有利だから……」


 ……ん?


 この言い方だとまるで俺のことを好きみたいに聞こえる。同居こそしてるけど、今までそんなそぶりは一切なかったはずなんだが。


 まして従妹だし。


 世の中の従妹同士で関係になってる人たちもいるんだろうが、何で急にその気になったんだ?


 あくまでお嬢様への対抗心だとしても、教室というか学校で公表するとか――それがどういう結果をもたらすのかさっぱり読めないな。


 でも俺と西大路さんは特に何ともなってないし、俺の気持ちも特になんともなってないから試しに付き合ってみるのもありか。


「教室で恋人っぽくしてたら、冷やかしが半端ないぞ多分」

「文句を言ってくる人はいないと思うけど?」

「何で分かる?」

「私って、こう見えて運動部の有望株なんだよね。だから同じ運動部の男子は頭が上がらないし、女子たちだって驚きはするかもだけど反対はしない」


 冷やかしを言うのはイケメン女子軍団くらいか。


 それとお嬢様――か?


「……おじょ――西大路さんはどうするんだ?」

「ミア? 別にいいんじゃない? 席が隣ってだけで何ともなってないんだし」


 何か、西大路さんに対してだけ敵対心を抱いてるんだよなこいつ。それも俺の家に西大路さんが来るようになってからなのも謎だ。


「まぁいいや。真琴が何を狙ってるのか知らんけど、俺のやり方で仲良くしてやるよ」

「別に何も狙ってないけどね」


 どう考えても西大路さんに対抗してるだろ。


「んで、真琴のことはなんて呼べばいいんだ?」

「変える必要ある?」

「……ない」


 付き合うといっても、俺と真琴の関係性を知ってる奴がクラスにはちらほらいるし、今さらではあるな。


 よっぽど特別な行動でもすれば目の色が変わりそうだが。


「学校で何かする……した方がいいのか?」


 とはいえ、家の中でナニかしたわけじゃないけど。


「人前でキスするのは有効手段! それが嫌なら、ミア限定でもいいけど」


 ――つまり西大路さんに見せつけるって意味か?


 従妹ながらなかなか酷いことを考える奴だ。


「よく分からんけど、そろそろ俺を解放してくれ」

「はいはい、お疲れ。バイバイ~孝純」

「…………おやすみ」


 いやにあっさりしてるな。狙いはお嬢様を俺から引きはがすことだと思われるが、果たして学校で徹底的にフリが出来るかどうか。


 ……などと、俺の心配は無駄だったと気づく時間が開始された。


「すっごくくっついてる……えっと、何か弱みを握られてそんな風に?」


 朝の教室。


 自分の席に座ったところで、西大路さんから珍しく声をかけられた。西大路さんは相変わらずのモテモテぶりで、周りには恐らく応援していたであろうイケメン女子たちがお嬢様を囲っている。


 対する俺はというと有言実行の如く、真琴が俺の腕にぴったりと絡まってずっと離れずにいる。しかも、着席した俺の膝の上に座ってひたすらくっついたままだ。


「お、おはよう。西大路さん」

「そうじゃないです。どうして真琴が孝純さんに乗っかって、しかもくっついているんですか?」


 朝の挨拶すらもスルーされるくらい困惑しているようだ。無理もないことだろうけどな。


 しかも教室に入ってから西大路さんが登校してきて隣の席に着くまで、真琴がただの一言も発していないのが何とも言えない。


 ベタベタとくっつかれている俺でさえも、真琴が何を考えているのかさっぱりだ。


「おはよ、ミア。弱みなんて握られてないから安心していいよ」

「……そうじゃないなら、えっと……」


 いつもなら塩対応の一つや二つは言ってくるのに、すっかり戸惑ってるじゃないか。もしや真琴の狙いは西大路さんの弱体化?


「おい、バカ男! 何でそうなってる? ミア様を悲しませるのはおかしくないか?」

「そうだそうだ~! 何のためにウチらが美味しいご飯を……お前の家に行ったと思ってる? ふざけてんのか?」

「……って言われても俺は知らん」


 流石に取り巻き女子たちは俺に起きてることを見逃してくれないか。何せ朝の教室でアツアツっぷりを間近で強制的に見せつけられているのだからな。


「ミアって、動揺するタイプなんだ? それなら遠慮とかする必要はないよね? 貰うよ? 孝純を」

「――あ!」


 真琴のあからさまな挑発に対し、西大路さんは手のひらに握りこぶしをポンと置いて――


「――うんうん、分かってしまったかもです! 見せつけるって意味はもしかしなくても……」

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