第12話(side 王太子)


「あーあ、あんな言い方して。嫌われちゃいますよ?」


 リヴィアのアパルトマンをいとますると、柱の陰からひょこりと顔を出したセインが、クスクスとかみ殺しきれない笑いを浮かべた。

セイン・コネクトス魔法伯子息。宰相の息子で、僕の幼馴染み兼側近候補兼護衛だ。

  リヴィアの住むアパルトマンはそう広くないから、セイン達には外で待機してもらっていた。

 諜報系に特化したセインは、扉越しでも僕たちの会話をちゃっかり聞いていたらしい。


「素直に好きだって言っちゃえばいいのに~」


 セインの後ろから顔を出した、グネトスも無言で頷く。

 こっちはオーストリッジ騎士伯子息、つまり騎士団長の息子で、僕の護衛兼友人。

 リヴィアが僕に近づいてきた当初はかなりリヴィアを警戒していたけれど、リヴィアがまっっっったく才能のない剣や弓を習いたいと言い出すようになってからは、見ていられなかったのか指導するようになり、それなりに打ち解けたようだった。

無表情がデフォルトだから分かりづらいけれど、最近ではなんだか同情の目で見られている気がする。

 僕は少し口をとがらせた。

 王族である僕がこんな顔をするのは、気心の知れたセイン達の前でだけだ。


「だって悔しいじゃないか。気付いているか? リヴィア、いくら言っても、僕を名前で呼ぼうとしないんだ。今まで僕にすり寄ってきた令嬢は、ちょっとでも親しくなると、すぐに色目を使って名を呼びたがったのに。本当は、僕に興味なんてないんじゃないか、むしろ僕の名前自体覚えてないんじゃないかと、時々思うくらいだよ」


「いくらなんでも。でも、そんなところが気に入ったんでしょう? 殿下、逃げられると追いかけたくなるタチですもんね」


 幼馴染みだけあって、痛いところを突いてくる。

 僕も最初は、リヴィアのことを、高位貴族にすり寄って来る他の令嬢と似たり寄ったりの令嬢だと思っていた。

 けれど、彼女は、ある一定からピタリと距離を保ったまま、自分から距離を詰めようとはしてこなかった。名を呼ぶようにと何度水を向けても、『王太子殿下』と堅い敬称を付けたまま。

 それが気になって、いつの間にか自分の方から声をかけるようになっていった。

 戯れに、『何か欲しいものはないか?』と問うてみた。ここで、『ドレス』とか『宝石』とか『デート』という答えが返ってきたならば、早々に僕の興味も失せていたことだろう。それなのに、彼女の答えは『魔獣討伐に行きたい』だった。

 治癒魔法専門の彼女が何故? と疑問には思ったものの、ひょっとしたら治癒魔法の能力の高さを僕にアピールしたいのかもしれない、と軽い気持ちで騎士団の演習に同行させた。

 そこで、僕が見たものは。

 まるで、自分自身の価値など、全くないと思っているかのような。生き急ぐという言葉でしか言い表せないようなリヴィアの姿だった。

 貴族令嬢が、そうでなくとも年頃の娘が、自らの体が、顔が傷つくことなどまったくのお構いなしで魔獣に突っ込んでいく。

強いならまだしも、剣の腕も攻撃魔法の腕もからっきしだ。王都の近くの森が演習場所で、それほど強い魔獣はいなかったから即死はまぬがれたが、致命傷に近い傷は何度も負った。そのたびに治癒の淡い光と共に傷は癒え、けれど元に戻らない服はボロボロになっていく。

 癒やすのだから、死にたいわけではないらしい。

 僕も騎士たちも、最初の頃はもちろん止めた。けれどその手を振り切って、彼女は駆けだしてしまう。『誰も死なせたくない』『この魔法を完成させなきゃ』『~までわたしは死なない』そんな言葉が切れ切れに聞こえた。

 彼女がそこまで何に追い詰められているのか。

 鬼気迫る表情に、僕らはただ彼女の元に魔獣が殺到しないよう間引き、牽制することしか出来なかった。

 何度もねだられて、僕は渋々と魔獣討伐に付き合った。

 僕が嫌だといえば、彼女は一人でも魔獣の森へと出かけて行くだろう。

 いくら治癒魔法に長けたリヴィアといえど、自分で治癒魔法をかけられないほどの大怪我を負ってしまえば死んでしまう。彼女を管理し、連れ戻す人間が必要だった。片時でも目を離せば、すぐにでも消えてなくなってしまいそうな危うさ。

 彼女は、まるで自分の命に頓着しない。死なないとでも思っているのか。死んでも構わないと思っているのか。

 彼女が言うように、セインやグネトスに任せる? いやとんでもない。僕以外に、このトンチキな存在を、死の淵から引きずり戻せる者がいてたまるか。

 


 そんなとき、僕は叔父上、ベアトルト王弟に呼び出された。

 そこで改めて紹介されたのは、もっさりした公爵令嬢、ルミカーラ嬢だった。

 ルミカーラ嬢は公爵令嬢として非の打ち所のない見事な礼をすると、柔らかな笑みを浮かべ、とんでもないことを言った。

僕は思わず問い返す。


「聖女? リヴィア・サイゼルが、聖女だと貴女は言うのか?」


「ええ、そうですわ。本人は認めようとしないでしょうけれど。言い換えれば、神の恩寵を得ている……とでも申しましょうか。彼女は、人にはない知識と発想を持ち、その上――未来を視たようですの」


「未来視だって?」


 未来視の聖女。とんでもない眉唾だ。王家を騙そうというカタリの常套句。

だが、フォルゲンシュタイン公爵令嬢が、子爵家のリヴィアを聖女だと騙る真意が分からない。そこに叔父上まで絡むとなると余計に意味不明だ。

 

「彼女のここ半年の異常な振る舞いはご承知でしょう? わたくしとリヴィアさんが親しくしているのは殿下もご存じですわね? わたくしだけにほんの少し教えてくれたのです。リヴィアさんは半年前、とある悲劇を未来視し、その悲劇を防ぐべく奔走しているのだと。けれど、リヴィアさんの努力と、わたくしの微々たる協力だけでは、完璧に防ぐには力及ばず……王太子殿下に、是非ともご協力をお願いしたいのですわ」

 

 そこで、公爵令嬢は赤い唇の両端を吊り上げて、悪巧みをする叔父上と良く似た顔でニッと笑った。


「無事にコトが成された暁には――ご尽力の報酬として、『聖女』をお贈りするのもやぶさかではありませんわ、殿下」


◇◇◇

 そうして迎えた卒業パーティ。

 僕に与えられた役割はただ、大勢の前で、事前に渡された台本の丸暗記した台詞を言うだけ。民の前に立ち慣れた僕には、拍子抜けするほど簡単な仕事だった。

 ただ、フォルゲンシュタイン公爵令嬢との婚約話があり、それを破棄する、という内容には参った。

 何故なら彼女は、叔父上のお気に入り。僕と最も身分・年齢の釣り合う令嬢でありながら、婚約者候補の「こ」の字にも挙がらなかったのは、偏に叔父上が本人にも知られないよう丁寧に丁寧に囲っていたから。それを今さら、こんな場所で。

 フォルゲンシュタイン公爵令嬢に婚約破棄を告げる間、僕はすがるようにリヴィアの手を握りしめていた。令嬢の後ろに立つ叔父上からの、じっとりとした視線に冷や汗が伝う。

 フォルゲンシュタイン公爵令嬢は、いつものもっさりとした様子とは打って変わって美しく凜々しく装っていたけれど、うっかり鼻の下でも伸ばした日には、叔父上の制裁が待っている。騎士団で、軽々に公爵家の婿になりたいなどと口走って、辺境砦に左遷された伊達男の顛末は記憶に新しい。

 僕は台本以上に、僕とフォルゲンシュタイン公爵令嬢との婚姻はあり得ないと強調して、リヴィアの義父であるサイゼル子爵を呼び出した。

 これから、追い詰められたサイゼル子爵が隣国の秘技である召喚術を使うだろうと聞いている。

 召喚獣は強いという話だったが、これでも僕は王子ながらに騎士団と共に魔獣討伐にも行っているし、武術も魔術も天才の呼び名を欲しいままにしている。リヴィアを守り、配置しておいた騎士団と連携して討伐するのにそう無理はないだろう。……フォルゲンシュタイン公爵令嬢は、どうせ叔父上が守るだろうし。


 そんなことを、思っていた時もあった。


 ドンっ、と感じた衝撃に、何事かと思った。

 守ろうと引き寄せた相手に突き飛ばされたのだ、と理解したときには、球形の防御壁に閉じ込められていた。

 リヴィアの魔法、だ。

 守ろうとしていた相手に守られた。その事実に、屈辱と――込み上げる喜色にカァッと熱くなる顔を、僕は右手で覆って俯いた。

――リヴィアが僕を庇った。

 リヴィアが『視た』という悲劇を、フォルゲンシュタイン公爵令嬢も叔父上も言葉を濁してはっきりとは言わなかったけれど。リヴィアの行動で、僕は確信した。

 リヴィアの視た未来で、おそらく僕は死んだのだろうと。

 リヴィアが、あれほどに身を削って鍛錬し、避けたかった未来というのは、僕が死ぬことだった。リヴィアの、生き急ぐような、まったく己を顧みない無謀な行動の数々は、僕のため。

 近くで見続けていた僕だからこそ、胸に迫るものがあった。

 あそこまでされて、惚れないはずがない。


 僕が顔を押さえていたのはわずか数秒のことだったのに、何とか動揺を抑えて顔を上げると、防御壁の向こうでは、リヴィアが召喚獣とおぼしき怪物と戦っていた。

リヴィアが魔獣討伐で試しまくっていた反転治癒魔法。最終的には、騎士数十人がかりで挑むSランク魔獣すら斃せるようになっていた。だから僕は、相手が召喚獣でも、リヴィアは勝てるだろうと楽観的に考えていたのだけれど。

 そのリヴィアの反転治癒魔法が、怪物の腕一本を潰しただけで消滅した。

 ……つまり、あの怪物はSランク魔獣よりはるかに強いということ。

 リヴィアが怪物の注意を引きつけている隙に、避難誘導に当たっている以外の騎士が攻撃を仕掛けているが、まるで歯が立たない。うるさそうな後ろ足の一撃で吹き飛ばされていた。


「この防御壁を解くんだリヴィア! ここにいる者の中で、一番攻撃力があるのは僕だ!」


 防御壁を叩いて叫ぶものの、防御壁は音を通さないのか、こちらに背を向けたリヴィアが振り向くことはない。

 思考を切り替え、僕はリヴィア自身に防御壁を解かせるのは諦め、防御壁を観察して、魔法の綻びを探すことにした。

通常、防御壁というものは、外からの攻撃には堅固だが、内側からの干渉には弱い。編み込まれた術式のとっかかりさえ見つけられれば、大抵の防御壁は解除出来る。

 ところが、リヴィアの張った防御壁は、内側までもまるで鏡面仕上げのようにツルツルで、ひっかかりの一つもない。

 内側をぐるりと一周手のひらで撫で確認した後、僕はとある結論に達した。


「これは……古い文献にあった、時限式の隔絶結界か」


 通常の防御壁は、術者の意図で解除したり強化したりすることが出来る。そのため、術者の指示を『聞く耳』を持っている。それこそが術のほころびであり、中にいる人間が術者の意図関係なく防御壁を解くためのとっかかりになるのだが――この隔絶結界は、一度張られたが最後、術者の指示を受け付けない。指定された時間まで、内と外とを隔て続ける。

 古い昔に失われたはずの術式だが――何より、そこから感じられるのは、絶対に僕を守るのだという強い意志と……自分は死ぬだろうという覚悟。そう、この術式の最大の特徴は、術者が死んだ後も消えないということ。


「馬鹿な……」


 国王と王妃の一人息子という立場から、昔から人に守られるのには慣れていた。僕を守って怪我をした騎士も少なからずいた。

 けれど……


「君は、違うだろう? 君は、騎士じゃない。僕の側近でもない。ただの……ただの?」


 そこで僕は、リヴィアと僕の関係を表すのに適した言葉がないことに気付いた。

 知人? 同級生? 学友? 

 僕がちょっかいをかけて、君が無茶をして、僕が振り回されて、目が離せなくて。

 君は……君は。僕の。


「君は僕の好きな人だ! 僕が一番守りたい人だ! ついさっき婚約者にだってなったんだ! ここから僕を出せ! 君を……リヴィアを、僕に守らせて……」


 痛いほどに叩いた拳の音は、防御壁の外には伝わらない。

 クロスボウを投げ捨てナイフを構えたリヴィアの前に、怪物が迫り――……


 颯爽とリヴィアを助けたのは、僕ではなくフォルゲンシュタイン公爵令嬢だった。

全騎士団員を投入したとしても多大な被害を出しただろう怪物は、フォルゲンシュタイン公爵令嬢の召喚した幻獣にあっさりと吹っ飛ばされ、踏み潰され、引きちぎられた。次々と呼び出される怪物も、フォルゲンシュタイン公爵令嬢に鼻で笑われ、むしろ哀れみの目でさえ見られて、まるで大人と子どもの喧嘩のように殲滅された。

 その後、真の黒幕のルヴァンが現れて、神聖国に伝わる国宝、黒竜の書を持ち出して災害級の怪物を喚びだした。

 講堂が崩れ、僕の周囲を守ろうとしていた騎士達が潰れていく。

 騎士達の向ける剣はかすり傷すらつけられず、頼みの綱のフォルゲンシュタイン公爵令嬢の幻獣も戦いあぐねている。

 卒業パーティーに参列していた父上や生徒、保護者達は無事に避難できたようだったけれど、このまま怪物が街に出れば、とんでもない被害になる。

避難指示は出ているのか、せめて僕がおとりになって怪物を引きつけられれば……

いくらそんなことを考えても、僕はここから一歩も動けない。

 リヴィアの姿も見えない。

――どうか、どうか無事でいて。

 君は確かに強い人だけれど……女の子だから。攻撃魔法も使えない、優しい人だから。

 どうか、どうか、戦える僕じゃなくて、君自身に防御壁をかけて。

 どうか、生きていて。

 君自身の怪我は治癒魔法で治るのかもしれないけれど、もう僕は、血に染まる君を見たくはない。君の手が食いちぎられるところも、肉がえぐれるところも見たくはない。

 だって僕は――……

 無力感に、膝をついた。

 怪物が学園を燃やし破壊する。セインやグネトス、騎士達が僕の前に立ちはだかって、僕を守ろうとしている。フォルゲンシュタイン公爵令嬢や叔父上の幻獣が怪物と戦っている。リヴィアの姿は見えない。

 それなのに――僕は、何もできない。

 無駄だと分かっているのに、何度も何度も防御壁を叩いた。


「リヴィア!」


 よく響くフォルゲンシュタイン公爵令嬢の声に顔を上げると、令嬢がリヴィアに抱きつくところだった。

 令嬢がリヴィアの体を気遣い、リヴィアが嬉しそうに答えている。

 ルヴァンは、リヴィアが捕まえたらしい。

――なんで、僕はあそこにいないんだ?

 公爵令嬢の喚んだ鳥の召喚獣を連れたリヴィアは、天使のように綺麗だった。

 リヴィアに駆け寄りたかった。抱きしめたかった。――守り、たかった。

 防御壁の外で僕を守るセインが、僕の拳から滴る血を心配そうに見つめていた。


◇◇◇


 さて。この防御壁だが。

 

『ごめんなさい。六時間かかります』

 防御壁の外でリヴィアが申し訳なさそうにそう言った。

 講堂の瓦礫でつぶれたり、黒竜に吹っ飛ばされたりしていた騎士達に治癒魔法をかけてまわり、周りに怪我人がいなくなったと見て、ようやくリヴィアは僕のところにやって来た。

 色々あってとても長かった気がしたけれど、リヴィア達と怪物が戦っていたのは、時間にすれば一時間もなかった。で、そこから六時間。

 ……『六時間』。 

 崩れた講堂から、怪我人が避難し。

 サイゼル子爵が騎士団によって拘束、連行され。

 僕と同じく隔絶結界に閉じ込められたルヴァンの周りにも騎士が配置され。

 フォルゲンシュタイン公爵令嬢と叔父上が、召喚獣を連れて去り。

 騎士団長の指示で、騎士団がグチャグチャになった講堂の後始末に奔走し。

 生徒達が踏み込まないよう柵やロープが張られた。

 瓦礫だらけの元講堂で、丸い防御壁の中、僕は地べたにあぐらをかいて座り込み、頬杖を付いていた。

 既に時刻は真夜中。

 視界には、動かせない王太子の警護のために残された数人の騎士達や、グネトスの後ろ姿が映るだけ。

 怪物と戦い、疲弊していたリヴィアも、途中で戻ってきたフォルゲンシュタイン公爵令嬢に引っ張っていかれ、もうここにはいない。その寸前に、セインが怪我を隠していたのにリヴィアが気づき、治癒魔法をかけた。それを見守る僕の笑顔が怖かったのか、セインも姿を消している。


「ふふ、ふふふふ……」


 王太子である僕は、パーティ中も簡単には席を外せない。だから朝から水分は控えめにしていたが、それがこんなところで役に立つとは思わなかった。

 それにしても、飲まず食わず、腰を下ろす椅子もトイレもない場所に閉じ込められての六時間。そろそろ膀胱がそわそわする。

 酸素は大丈夫だろうか? 防御壁の中で窒息死とか笑えない。と思ったのは三時間前。どうやら今まで何とか保っているようだ。ひょっとしたら、防御壁の術式に酸素の供給式が組まれているのかもしれない。

 まぁこれは、時限式隔絶結界の運用法としてはおそらく正しい。

 自分が死ぬことを想定して張る防御壁だ。

 被保護者が魔獣の群れの真っ只中にいた場合など、確実に周りから魔獣がいなくなると想定される時間、防御壁が続かなくては意味がない。術者が死ななかった場合でも、時限式という性質故、未だ戦闘が続く中に突然解除されてしまったら目も当てられない。長めに設定するのは必然だ。

 ただ、今回、フォルゲンシュタイン公爵令嬢の召喚獣とリヴィアの反転魔法のおかげで、リヴィアが最初に想定したよりもはるかに早く戦闘が終結してしまった、それだけのこと。


「道化だ。まごう事なき道化だ。この国の王太子を捕まえて……」


 こちらの声が通らないのも、隔絶結界の性質上仕方のないことだし、中から外が見えることは、隔絶結界が解けた瞬間、未だ戦闘が続いていた場合の身の振り方を考える上で必然だろう。

 しかし。外から中が見える必要性はないんじゃないだろうか。

 学園始まって以来の魔術の天才と謳われながら、自ら戦うこともせず、女性に守られて、防御壁を解くことも出来ずにポツーンと立ち尽くす王太子。バッチリ見られた。同級生とその親たちに。何なら騎士団員全員に。親戚の騎士団長とか、こっちを指差してゲラゲラ笑ってたし。


「まさかリヴィア……僕にこれだけの赤っ恥をかかせて……逃げられるなんて思ってないよね……?」


 講堂周りの街灯は怪物に破壊されてしまった。

 ポツポツと灯る騎士団が設置した非常ランプを見つめながら。

 僕には、リヴィアを捕まえる算段を練る時間だけは、たっぷりあった。


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