第11話

 テルミとマニマニは甘味処に繰り出していた。

 テーブルを挟んで対面に座る2人。髪色は異なるが、知らない者が見れば姉妹のようにも見える。


「ここのパフェが絶品らしい。好きなだけ食べていいぞ」


「じゃあ遠慮なく……すみません、爆盛りパフェツリーザファイナルを3つ下さい」


「ふ、よく食べる奴は好きだぞ」


「テルミさん、やっぱりそっちの趣味が……?」


「だから違うわっ! 私が好きなのはダンだけだ。変に誤解されては困る」


 その発言を受けて、マニマニが苦笑する。呆れなのか、それとも別の感情か。

 

「……失礼かもしれないっすけど、よくそこまであけっぴろげにできるっすね。ニナもそうっすけど」


「ハハハ、私も冒険者の端くれだからな。やりたいことを明日に残して死んだ者を少なからず見てきた」


 微笑んでいた表情をスッと引き締め、テルミが言う。

 冒険者という稼業は他の職業と比べて人の死が身近だ。身近が故に、考える。次は自分かもしれない、と。


「そうはなりたくない、それだけの話だよ」


「……」


 引いているのとは違う、かといって怒っているわけでもない。真剣な顔で黙り込んだマニマニは、どんなことを思ったのだろうか。

 

「な、何か反応してくれないと気まずいんだが…」


 テルミのメンタルを持ってしても、自分の決意を開陳したのに反応がないのは若干心にくる。

 それからしばらく沈黙が続き、ふとマニマニが口元を歪めた。

 

「……どう言ったらいいのかわかんないっすけど、感動したっす!」


「ふ、それはありがたい」


「ただ、それにしてもやり方は改めた方がいいと思うっすよ」


 伝わるものも伝わらないから、という言葉は飲み込んだ。親友であるニナへのせめてもの義理立てだ。


「あ、今までのお詫びにパフェひとつあげるっす」


「気持ちはありがたくいただくが、どれも私の金だぞ?」


「そういえばそうでした。じゃあ後でアクセをひとつプレゼントするっすよ。師匠受けしそうなのを厳選するっす」


「おお、本当か!」


「ニナには悪いっすけど、テルミさんの恋路も少し応援したくなったんすよ」


 片目を瞑って笑うマニマニ。2人の距離は少し縮まったようだ。


  

「お、この服なんか可愛いっすね。普段着と違ってフリフリがいい感じっす」


 ところ変わって街の服屋。元々1着プレゼントという甘言に載ってテルミについてきたのだった。

 目線くらいの高さに、色とりどりの服が並ぶ。

 

「ほう、マニマニはそう言うのが好みか。確かに、少女らしい可愛らしさと活発さがよく調和された良い服だな」


「でしょー、テルミさんは? 何か買わなくていいっすか?」


「私は……やめておこう。仕事柄すぐ服を傷めてしまう」


 寂しそうに笑う。

 

「冒険の時に使う服じゃないっすよ。街歩きの格好が別にあった方が可愛いじゃないっすか。その方が師匠も女の子として見てくれると思うんすよね」


「うむむ……そうか、もしかすると今まで手応えがなかったのはそれが原因だろうか」


 なるほどと得心した様子のテルミ。目など閉じて回想に浸っている。

 

「いえ、それはストーキングが原因っすね」


「だから違う! あれは見守り活動だ、断じて邪な目的は無い!」


 無理な言い訳、完全に邪な目的である。むしろそれ以外にない。

 その様子を見てマニマニは困ったように笑う。

 

「……そういうとこが治ればもっと進展すると思うんだけどなぁ」


「ん? 何か言ったか?」


「いえ、何も。それよりテルミさんのアクセ選びに行きましょう」


 流石にこれ以上の手助けはニナに悪い。そう思ったマニマニはひと足先に店を出た。


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月・水・金・日曜日の20時45分頃に投稿予定です。


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