第20話

 阿曇と木村は二人並んで地面に座っていた。立っているのは落ち着かないからだ。

 「ちょっといいかな」

 二人に誰かが話しかけてくる。

 「どうしました?」

 木村が応える。話しかけて来たのは男性。

 「少しお話でもどう?こんなところだし」

 避難シェルターは無機質な部屋で、面白いところは何もない。しいて言うなら壁の傷を数え続けられそうという所くらいだ。それもすぐ飽きる。他の人も近くの人と話し合っていた。

 「暇ですし、良いですよ」

 阿曇も頷き、男性が二人の向かいに座る。

 「二人は一緒にツアーに?友達同士?」

 「そうっす。でも友達じゃありません。こいつはね、俺にとって友達を越えた親友ですよ」

 そういいながら阿曇と肩を組む木村のテンションはいつもより高くなっていた。

 「友達ではあるけど親友ほどか?疑問だな」

 「あっ、こいつ。恥ずかしがってますね」

 木村のテンションにはついていけないが、阿曇はいつでも楽しそうな木村と居るのが好きだ。

 「あなたは誰かと一緒に?」

 阿曇は恥ずかしさを隠すように質問を投げかける。

 「俺は一人で」

 辺りは静かで、まるで時間が止まった様だった。

 「そうなんですね、あっ、名前を言ってなかった。私は阿曇誠一あずみせいいちといいます」

 「俺は木村漣きむられんです。よろしくです」

 男はにこやかに笑う。

 「ああ、よろしく」

 三人は他愛ない会話を続けた。

 

 三人が楽しげに話している間、エウクレと研究所内では第三知性体の居場所の捜索が始まっていた。

 「エウクレ、第三知性体が来るのは本当だろうな?」

 所長の声が所内に響く。

 「ええ、というより時間的にもうこの時空点に入っています」

 しかし未だエウクレは第三知性体を定理宇宙内に見つけることが出来なかった。

 「侵入口は見つけましたが、その後の痕跡が見当たりません」

 エウクレの報告に所長は頭を抱える。研究所に来るという第三知性体の宣言と見つけられていない現状に焦りを隠せなかった。

 「攻撃はしないと言われているとはいえ油断は出来ん。防衛システムはどうなっている?」

 「依然として正常です」

 職員もこの事態に対応し、万が一に備えている。

 「エウクレ!まだ見つからないのか」

 焦る思いから所長の声は怒りを纏う。

 「すみません、未だ観測出来ず。しかし研究所に来るのは確実。…いや、既にいるかもしれません」

 「何?」

 「定理宇宙内を全体的に観測するのと並行して研究所付近に局所観測を行いました。すると第三かは特定できませんが、おそらく知性体が残したであろう痕跡を見つけました。侵入の件と合わせると第三で間違いないいでしょう。もしかすると既にいるかもしれません」

 局所観測で観測範囲を狭め、精度を上げたことから得られた結果に所長は嫌な汗をかく。

 「…不味いぞ」

 この時、所長の頭に想像したくない未来とツアーに来ていた阿曇の顔が脳裏に浮かんだ。

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