第19話

 避難し終えた一行は多次元バリアで守られた避難シェルターに居た。十一次元の上の多次元をバリアへとして使用しているが、この宇宙はあくまで十一次元が物理的領域における限界であるため、数学的領域の次元を持って来ている。

 「さて、ここなら一応安全かと」

 案内人の声に一同は安堵する。

 「一応?」

 「ええ、知性体がここに侵入しに来たこと自体初めてで、安全かどうか確証が無く」

 安全に確証が無いのは恐ろしいが、それ以上に知性体は得体の知れない存在ということだった。

 「それにバリアの技術上、知性体の技術が大半を占めているので安全ではあると思いますが、どこまで効果があるか計算できてないんです」

 数学的領域の次元の使用など、人類が未だ到達できていない領域の技術が混じっていることもいざという時の懸念材料であった。

 「バリアは何層で?」

 「六層です」

 六層、イメージとしては壁が六枚あるようなもの。しかしどれだけバリアを重ねようと不安は消え去らない。知性体の得体が知れない限り。

 「怖いか、木村」

 「怖くないね、ちっとも」

 互いに顔を見合わせる。怖がっているんじゃないと言いたげな目は生意気な子供の様でもあった。

 「ほんと?」

 「ほんとだよ、阿曇。逆にお前の方が怖いんじゃないのか」

 「かもな、でもお前よりは怖がってない」

 緊張からか、微かに汗が肌を伝っていく。

 「木村、お前、怖いからってスマホ落としてるぞ。買ったばかりだろ、それ」

 「えっ、マジ!?どこ?」

 木村はポケットをまさぐり、地面を見渡す。

 「ポケットにあるんだけど」

 「ははっ、いやなに、ちょっとからかおうと思って」

 木村の慌て様はどこか阿曇のツボにはまっていた。

 「それにお前が怖がってる、というのは言い過ぎだけど敏感になってるのは分かったよ」 

 「どうして?」

 と木村はビビっているのを隠そうと少しぶっいらぼうに言う。

 「スマホを落としたなら音で分かるし、重さで気づく。けどお前は焦ってポケットを確かめたし、俺の嘘に気づかなかった。よっぽど他の事が気になるんだろ。例えば知性体のこととか」

 「知性体のことは怖くないぞ。…俺はホラーとか見れるし、怖いのは大丈夫、のはず」

 「ホラーが見れるからって、怖くないわけじゃないと思うぞ」

 図星を突かれた木村はぎくっとした。

 「うっ、でもお前も怖いんじゃないのか。そんなこと言うなんて」

 今度は阿曇がぎくっとした。まるで鏡の様に全く同じ驚き方だ。

 「どうだろうな」

 確かに木村の言うことも一理ある。阿曇も内心怖かった。それゆえにあんな嘘を言った。しかし阿曇は木村に言われて初めてそれを自覚した。

 「…そっか、怖いのか、俺」

 ぼそりと呟いた阿曇の小声は周りの誰にも聞こえていなかった。

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