四
昼休み、Sさんと話しました。他愛ない世間話、中身のない噂話。何も無かった関係のような、ただの友達のような話し方に、何も感じなかった訳ではありません。
Sさんも、家族関係が悪いようで、高校生にして、実質の一人暮らしをしています。深くは聞きませんでしたが、確かに、まともに育った人間が、他人の女など強姦する訳がありません。そして、その相手と、普通に会話するなど、絶対に考えつきません。
私も野暮ったい両親の娘なので、Sさんに対して、復讐心も恨みもありません。それこそ、妊娠していたら、性病にかかっていたら、多額の金をむしり取ろうとしていたでしょうが。
全て、私の感情は、他人の行動ではなく、その後の後天的な結果によって動かされるようです。
「あいつは、彼女に振られたらしい。そして、不思議なんだ。俺は、何故恋人をつくっては破局するのか分からない。性欲が我慢できないなら、そいつら同士やりあえばいいだろ。それで終わり。デートに行ったり、物を贈っても、別に一生を寄り添う訳ではないのに、なぜ夫婦のままごとをするのだろう?」
まさしく、まともに育っていない人間の発言だと思いました。
「背伸びしたいとか、そういうのもあるだろう。まあ一番は愛してるから、とか?まあ、高校生の恋愛の大半に愛なんてないと思うけど。」
「愛してないなら、尚更意味がない。ブランドもののバッグと同じなのだろうか。可愛い女と付き合ったら、そいつはイケてるやつだって。それにすら俺は意味を見いだせないな。」
「だから、彼女をつくらずに強姦したのか。」
平然とその言葉が出ました。私は、私自身に驚きました。その後、漠然と、死が私にもたらす幸福を、芥川が感じた自殺願望を、考えずにはいられませんでした。
「まあ、そういうことかな。別に、お前は見逃してくれるんだろ。」
「ああ、まあ。」
後は、生返事を返すばかりでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます