第十話

「……可及的速やか〜に割りたいな♪ 銅牆鉄壁な城門♪ 金槌ならブ・ラ・ウン工房にお任せ〜あれっ!」

 大きな金槌を持って歌声とともに突然現れた、職人の集団。全員の前を通り終わると、何事もなかったように歌声は遠ざかって行った。

「……国民的愛食、パン。皆様、充足していますか? ブレッドハウス・コープナーでは、質実剛健の精神で最高級小麦を栽培し、山脈から流れる天然水を用いて——」

 続いて、壮大な演奏とともに入ってきたのは大人気ソロ吟遊詩人。彼は背景音楽に合わせて流れるように宣伝をしている。

「——一意専心、理想の住まいを。温故知新の家づくり。匠心建設」


 溜めるためによく使われるそれが、全員の前を通り過ぎて行った。

「……フェ……」

 力のない鳥の吐息。

「鳥!?」

 弟王子の焦る声。

「もらったっ」

「ビヨーーーッ」

「鳴いたのは愉快な仲間たちチーム!! お答えください!」

「答えは、学び!!」

 突如鳴り響くドラムロール。シンバル!

「正解!!!——ということで、勝者は愉快な仲間たちチームです!!」

 扉の向こうから輝かしい演奏が響いた。姿は見えないが恐らくブレッドハウス・コープナーの集団だ。まだいたのか。

「……愚息たちよ、何たる失態だ。これでは国民からの支持は右肩下がりだ。支持の落ちた王の座などこちらから願い下げである。朕は王位を放棄する」

「父上、治ったのですね!」

「はははならば俺が王だ!」

 玉座に向かって歩き出す兄王子。その足元に、旅人がトレーを投げた。顔面から転ぶ兄王子。

「最初の条件を無視してはいけませんよー!」

解説「ださいですね〜」

「本日のクイズ大会はここまで! またいつかお会いしましょう!」

解説「また呼んでくださいね〜」

「……と、メリス。メル国側はひとまず条件を飲んだわけだけれど、君はそれで満足なの?」

 通常の口調に戻った旅人は問いかけた。

 この条件で最も恩恵を受けるのはメル国民だろう。彼らは王・クラウディウスのことを高く支持していた。なぜなら、国民への対応は素晴らしいものであったからだ。城へ不満を直談判するべくやってきた農民たちがあれば言葉も真摯に耳を傾け、敵国が押し寄せてきたならば素早く対応し被害を最小限に防いだ。

 しかし、彼らは知らない。それはただ、王の交戦欲求を満たすための表面上の親身さであることを。

 王は十数年前、研究者であったリカルダに病原菌を作るよう命じた。それは、単に王の「新しい戦の仕掛け方、試してみたい!」という欲求を満たすためのものであった。それによって生まれたたくさんの犠牲者。国内は働き手・後継者不足で多大なる迷惑を被ったが、それがあの王の軽い好奇心からのものであるとは露ほどにも思っていない。憎悪の矢印は、リカルダに全て指された。

「とりあえず、諸悪の根源が王ってことを知らしめてくれたらいいかな。今更何しようと過去は変わらないし、平穏な未来を生きられればそれで」

「メリス」

 レイヴンとアキが歩いてきた。

「いい感じにまとまりそうで良かったね! 俺らのことは、言わなければ誰にも知られることはないし」

「そうだな。僕としても、名が知れるのは少々困るしな」

「それじゃあ知らしめるように王に言ってくる」

メリスは、自らが治してあげた王のもとへ足を踏み出した。



 城下町を見下ろせる城のバルコニーでは、国民に対する宣言がなされていた。……お目付役つきで。

『親愛なる国民たちよ、ご機嫌よう。国王のクラウディウスである。突然だが諸君に言うべきことができた。今でも尚諸君を悩ませている例の病原菌についてだが、あれは実は主犯は……リカルダではなく……リカルダではないのだ』

『違うよね? 朕ですでしょ? 何隠そうとしてるの。えーっと、はい、今言った通り、諸悪の根源は君らの王、クラウディウスでした! こいつ、実は最悪な奴で——』

『——というわけで、朕の後任は、息子である第二王子・ジョンとなる』

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