第九話
さて、時折襲いかかってくる兵士を薙ぎ払いつつ階段を駆け上り、玉座がある三階に辿り着いた三人。
「王(マヌケ王子たちの父親)はこの扉の向こうだ。開けるぞ」
そう言ってレイヴンが扉を押し開けた。
城の入り口からずっと続くカーペットの先には、二人くらいなら難なく座れそうな大きな玉座。そこには、(メリスからしてみれば)大柄で、真っ黒な髪のため若々しく見える、しかし顔は五十路の男が腰掛けていた。サイドテーブルに王冠を置き、玉座の左右にはつい先程打倒した二人の王子が気まずそうな顔をして立っていた。
そしてその長いカーペットを囲うように立つ兵士たち。レイヴンとアキは彼らが漂わせる、先程までの兵士とは違う雰囲気を感じた。
「よく来たなあ、待ちくたびるれたぜ」
年齢には似合わない口調の王。それは感染者特有の話し方であった。
彼は時間をかけて立ち上がり、王冠を手に取って自らの頭にポイと乗せた。しっかりとフィットしている様子。
こんな乗せ方で……?
メリスは首を傾げた。
「お前さんたちよぉ、とっくに終わったことほじくり返しやるがって? これって宣戦布告じゃねえの?」
ゆっくり近づいてくる王。
「ちっ、父上! むやみやたらに近づかないでください!」
「斬られますよ!」
王子たちは口で言うだけで留めはしない。というより、斬られそうで怖いのだろう。
「ひどいなぁ」レイヴンが口を尖らせた。
「そんな血の気の多い獣みたいに……」
と、言いつつ剣に手は添えている。
「斬れるるもんなら斬ってみやがれ!!」
バッと両手を広げる王。そんな彼を見たあと、レイヴンはメリスを向いた。
「これでやったら俺、罰せられるかな」
「でも、この人自分から言ってるし……。先っぽくらいならいいんじゃない?」
「やめとけ? 後々面倒なことになりそうだ」
アキはトラブルは避けたい。
「父上。あいつら完全に舐めてます!」
「なんだとこのオレ様をベロベロと舐めやがるって!?」
王は自らの腰に下げていた刀を鞘から抜き、走り出した! ……遅い。
余裕の表情でレイヴンも剣を構え、すれ違いざまに少し剣先を動かした。
「痛ぁいっ」
ん? と振り向くと、頬を抑えてうずくまる、王の後ろ姿。妙な座り方をしている。これは所謂——お姉さん座り。
駆け寄る王子たち。頭を抱えている。
「あぁ父上……。せっかく、少し粗暴なのはともかく尊大な性格だったのに」
「王としての威厳が……」
そんな彼らをよそに、ぴょんっと立ち上がる王。
「あなた、アタシの顔になんてことを! るんっ」
頬を突き出してきた。注意深く見ると、おそらく一番外側の薄い皮に、横一文字の傷が存在しているようだ。
顔に対してなんと残念な言動であろうか。
「あの〜、君たち」
背の高い方——兄王子がこそっと近づいてきた。
「君たちは、例の感染症を治せると聞いた。父上は見ての通りだ。国王としての尊厳が危ない。どうか助けてはくれないだろうか」
「私たちがどんな理由で来たのかを分かって言ってるの?」
メリスの表情は険しい。
「概要は知っている。君は十数年前に逃げた科学者の関係者だろう? そして、王に報復に来た」
「逃げたって何? 元はと言えばここの国王が……」
「まあ落ち着けメリス。感情的になっても何も解決しない」
「そうそう。一旦いつもの単調なメリスに戻ろう」
「単調とまではいかないよ。私にだって波はあるんだから。……脳内では」
レイヴンとアキによって落ち着いた様子に戻ったメリスは、再び兄王子を向いて詰め寄った。
「私は基本優しいので助けを求められたら治すけど、憎き相手にそれをしようとは思えない。私はそこまで善人じゃない」
メリスがそう言った直後、
「そうか。ならばお前を生かしておく理由はないな」
兄王子はさっきまでの下手に出るような雰囲気を一変させる。瞳から光を、口元から感情を消し、呟いた。「やれ」
メリスは、後ろから襲い掛かろうとする兵士に遅れて気づき、振り返った。突き出された剣先はすぐそこに迫っている。レイヴンもアキも間に合わない。無念、と思いながら目を強く瞑った。それと同時に、何かがぶつかる音が聞こえた。
——なんともない?
恐る恐る目を開けると、剣先はなく、手を押さえた兵士がいた。
「危ない危ない。さすがの私も肝が冷えたよ」
後ろから聞こえたその声は、宿で出会った、旅人だった。
彼女は途中で届けるための飲み物を持って通りかかった給仕から、それを載せている丸いトレーを拝借し、それをフリスビーの要領で投げ、剣を飛ばしたらしい。戻ってきたトレーを手にしていた。
「基本的に他人の諍いに首は突っ込まない主義だけど、殺そうとするのは見逃せなかったな」
「旅人さん!」
彼女はこちらを向いてひらひらと手を振ってきた。振り返す。
「どうしてここに?」
「ちょっと野暮用でね。それはそうと、今のは王子が悪いだろうねー。他人の気持ちとか考えた方がいいよ」
それを聞いて、そういえばと兄王子の方を見た。舌打ちが聞こえた。その向こうでは、ぷんぷんと怒る王をまだ弟王子が宥めている。
「まあまあこういうときはさ、不意打ちとかして殺そうとするんじゃなくて正々堂々戦おうよ。ココでね」
旅人はこめかみをつつく。
「てなわけで、スタンバイ!」
彼女が指をパチンと鳴らしたのを合図に、玉座の間が暗転。ガタガタと物を動かす音がしたと思うと、メリス自身も物のように運ばれた。
定位置らしきところに置かれると、再び指を鳴らす音とともにパッと明かりが付いた。眩しさに目を細める。徐々に慣れてきて、周りを見渡すとそこは——。
「クイズ大会……?」
本で読んだような、世の知識人が集うクイズ大会会場が出来上がっていた。メリスは、レイヴンやアキと三人で一つのチームのようになって、そのクイズの解答台に立たされていた。ちなみに台の色は青。
右隣には、同じ様子で立たされている王と兄弟王子。同じく首を捻っている。ちなみに台は赤色である。
そして正面には白い布が掛かった謎の四角い箱が置かれた司会の机。旅人の女性が立っていた。
「レディース&ジェントルメン! ようこそおいでくださいました! ここはメル国城玉座の間。これより、クイズ大会を開催いたしまーす! ……拍手!」
パラパラと起こる拍手。
「本当に何、あの人」
「僕に聞くな」
盛り上がっているのは旅人の彼女くらいであった。隣の王率いるメル国チームも、訳が分からないという顔をしている。
「説明いたしましょう、これは、正々堂々、頭脳で競い、己の求める利益を得ようというものです。続いてー、ルールの説明を……」
「タイム!」
両手を横に広げ真っ直ぐ立つのはメリス。
「何かな?」
「それって私たちが買っても相手への利益にしかならないでしょ。私たちが買ったとき得られるものは何?」
「……どうします、メル国チーム?」
未だ顔は戻っていなかったが、その呼び掛けで我に返ったらしい。
「利益ですって!? そんなもの、アタシたちが好き好んであげるわけないじゃないるっ」
叫ぶ王。横で頷く兄王子。
「話し方は変だが、言われた言葉には同意せざるを得ない。そもそもこれは、君たちの知り合いだかなんだか知らないが、その旅人さんとやらが勝手に始めたことじゃないか。どうせ君たちも一枚噛んでいるんだろう」
弟王子は、兄貴どうしちゃったんだ!? と言わんばかりの表情であわあわしている。キャラ変した二人に挟まれて少し可哀想である。
「ここは任せて」
レイヴンがメリスの肩をぽんぽんと叩いて囁いた。
「それではこっちから提案していいかな? まず、メリスが治す代わりに国王の座を退いてもらうこと。そして、次にその座に座るのを、王子——弟の方にすること」
一つ二つと指を立てつつ話す。弟王子は「俺ぇ!?」みたいな顔で自分を指差している。
「おいっ待て! 兄の俺を差し置いてこいつとはどういうことだ!」
「あぁ、弟なら御しやすそうだ」
アキは「それはいい」と笑っている。
「……ちなみに、俺たちが勝った場合は?」
「今までのことは水に流してあげるよ。まあ、症状は悪化するだろうけど」
「そっ、そんなルールを誰が受け入れられると思ってるんだ!?」
弟王子が久しぶりに口を開いた。(こちらが勝手に読み取った台詞も含めると)文末に記号の多い奴である。
「受け入れられるられないじゃなくて、受け入れるんだよ。アキ」
呼ばれたアキは、マントの下から一枚の紙を取り出して掲げた。
「これは、告発書だ。お前たちが十数年前にやったこと、感染症の元凶はお前たちであるということを、全てこの一枚にまとめさせてもらった」
「一枚がなんだって……」
「これを大量に印刷し、空からばら撒く準備はできている」
アキはメリスに片目をパチンと瞑った。
「ばら撒く? 面白い冗談はよしなさいっ! るっ」
王は両手を握って顔に近づけた。
「そうか、ならやってみるか?」
アキは悪い顔をしている。
「レディース&ジェントルメン? 話し合いはそんなところでいいかな? もう飽きてきちゃった」
その台詞は無視して、口笛を吹こうとアキが口に指を近づける。
「タ〜〜〜イムっ」
先程のメリスと同じポーズをした王は外を指差し兵士たちに命じた。
「今すぐ探しなさいるよっ、アンタたちっ」
「は!」
ここにいた兵士の半数が、扉を開け階段を駆け降りて行った。
「……いいの?」
「問題ない。本物の告発書は僕が持つこれ一枚だけで、他にあちこち隠してある紙は全て白紙だからな」
得意気に笑うアキ。レイヴンもメル国チームの死角で親指を立てた。それに対し指二本で拍手喝采を送った。
「こるのためにわざわざ準備をありがとうございます。わたくしの家臣たちが全力で捜索るるさせていただきます」
誰だこれは。全く知らない口調だが、その声は明らかに王の口から発されている。今度は丁寧口調キャラか。
「早速足元を取られてしまいました。面目ない。いいるでしょう、その提案、飲ませていただきます」
「もういい? やるね? ……ルールを説明します! 今から私が出した問題に、早押しで答えてください。押すものはこちら!」
彼女は、自分の目の前にある四角いものから白い布を取った。
「ピヨ。ピーーーヨ!」
「ビヨビヨ。ビヨッ」
四角い折の中には二匹の鳥。絶妙に鳴き声が異なっている。
「これは腹を押すと鳴くので、解答する際はご使用ください!」
表情豊かな彼のことが気になって右隣を見ると、弟王子は「可哀想っ!!(泣)」な顔をしていた。期待を裏切らない。
「可哀想とは思わないでね。この子たちは早押しクイズで押されるためだけに飼育されているのです!」
「ピヨッピヨッ」
二度押したようだ。
鳥は、それぞれの台に一匹ずつ置かれた。
「五点先取したチームの勝ちとなります! お手つきはありです。用意はいいですか? それでは早速、第一問! 『切れないノコギリを使っているのに、よく切れるようになるものは何か?』」
これはクイズではなく、なぞなぞだ!
両チーム全員が、初めて同じ思考をした。
メリスがバッと挙手した。「はい! 息!」
「押していないので無効となります!」
「ピヨッ」
「はいメル国チーム! 答えを」
「る、それは息でしょうか」
「正解です! メル国チーム一点リード!」
「もう、メリスったら」
「次は押すんだぞ」
「ごめんごめん」
解説「愉快な仲間たちチームは特にダメージは受けていないようですね〜」
「申し遅れました、こちらは解説のカズマさんです!」
聞き覚えのある名前にメリスとレイヴンは反応する。司会席には、深くフードを被った怪しげな男が机の上で手を組んで座っていた。ちらりとアキの表情を伺う。
——すごく文句ありそう。
「どんどん行きましょう、第二問! 『どんなに頼み込んでも売ってくれない職業は何か?』」
「ピヨッ」
「はいメル国チーム!」
「守銭奴な店の店主」
「残念違います!」
傷付いた顔の兄王子。プリンのようなメンタルである。間違いを恐れるな。メリスは心の中で慰める。
「ビヨッ」
「はい愉快な仲間たちチーム!」
「占い師!」
レイヴンが高らかに言い切った。
「正解! 両者一点。差は縮まりました!」
解説「ツンデレなんでしょうね〜」
「行きますよ! 続いての問題はこちら! 第三問! 『天使であるにも関わらず嘘をつく、邪悪な天使は何か?』」
「邪悪な天使って、それは最早悪魔では?」
「嘘はギリギリ許容範囲なんじゃない?」
適当なことを言う愉快な仲間たちチーム。
「それは良くないでするね……。一度堕ちるべきかと」
「天使の座から引き摺り下ろせ!」
天使過激派のメル国チーム。
「ピヨッ」
「メル国チーム! どうぞ!」
「ぺ、テン師。ペテン師です」
「大正解です! さすが王様、ペテン師にやられたらダメな役職に就いているだけありますね! 只今の点数は二対一でメル国チームリードです」
解説「騙された経験があるのかもしれないですね〜」
「まだまだ行きましょう、第四問! 『持てば重荷になり、捨てれば軽くなる。それでも人々が追い求め続けるものは何か?』」
「……なんか方向性変わった?」
「普通のなぞなぞ……あ、クイズね。に飽きたんじゃない?」
「冷めやすい旅人だな」
せっかく「なぞなぞ脳」になっていたのに、「クイズ脳」に直さなければならなくなった愉快な仲間たちチーム。
「……まるでる、人間の真髄に至るようなクイズです」
「わざわざ持つ重いもの、か。意地の張り合いか何かだろう」
「兄貴こそ意地張ってると痛い目見るぞ!」
「黙れ」
「痛いっ!」
強調性がないのはメル国チーム。
「両チーム悩んでますね。第四問にして難問にしすぎたかな」
解説「人選ミスでしょう……」
「ビヨーッ」
解説になっていない解説を遮るアキ。
「はい愉快な仲間たちチームどうぞ!」
「権力だな」
「正解でーす! 絞り出しましたね! どのように導き出したんですか?」
「まあ、そういう輩を腐るほど見てきたのでね……」言いつつ視線を右隣に向けるアキ。
解説「闇が深いですね〜」
「聞き捨てなりませんね。それはわたくしたちのことでございまするか?」
「父上! 肯定みたいになるからお黙りになってください!」
「愉快な仲間たちチーム、二点で同点です! はいさくさく行きます。第五問! 『私を失えば全てを失い、私を偽れば何も得られない。私は誰か?』」
「これ擬」解説「擬人化ですね〜」「……」
台詞を遮られ取られ、とりあえず殴りかかりに行こうとするアキを前後から止めるメリスとレイヴン。
解説「仲違いですかね〜」
火に油を注ぐ解説・カズマ。
「はあ、クイズなんて馬鹿馬鹿しい」
「最近何かを得た覚えがありません……。もしや今るの私に足りないものが……」
「父上が真面目にやってるんだから兄貴もその態度やめろよ! 不貞腐れてないで!」
どちらかと言えばメル国チームの方が仲違いである。
「一旦行ってみるよ?」
「分かった」「当たって砕けろ」
「ビヨッ」
「愉快な仲間たちチーム、どうぞ!」
「ズバリ、誠実さ」
「……」
旅人が見つめてくる。これはどっちの……!?
「……お見事ー! 愉快な仲間たちチーム、一点リードで現在三点です! メル国チームも頑張ってください」
解説「砕けませんでしたね〜」
「はいじゃんじゃん行ってしまいましょう! ストレートならこれで決着が付いていた第六問! 『女たちが本当に望んでいるものは何か?』」
「これ家庭教師とやったところだ!」
「それは本る当ですか? あとでその家庭教師に褒美を与えなければなりませんね……」
「ピヨッピヨッ」
「ピヨッは一回で大丈夫です。メル国チーム、答えをどうぞ!」
「主権!」
「……正解です。これで両チーム三点ですねどちらのチームにもまだチャンスはあります頑張ってください」
解説「実際に女たちに聞き回る画が欲しかったようですね〜」
司会側の解説も担っているらしい。——解説の必要な司会とは何か。
「……さあっ、気を取り直して第七問! 『人の命を救いながら同時に希望を奪うこともできる、重さが計り知れず使えば使うほど大義を問われるものは何か?』」
「……これは俺にやらせて。俺が散々言われたことだ」
「ビヨッ」
「愉快な仲間たちチーム!」
「答えは、剣」
「素晴らしいですね! 常に心にある言葉なのでしょう!」
解説「紙一重ですね〜」
窓から静かに空を見上げるレイヴンは何を思ったのだろうか。
「……あなたたちも、剣術はやっていますでしょるう?」
「……心構えが足りなかったことが分かりました。もう二度とやりません」
「わたくしが申し上げたいのはそうではなくて」
「父上、俺、これを胸にもう一度やってみてもいいかなと思いました!」
「それです! あなた、る弟のこの熱意を少し分けてもらうのですよ」
「さあ現在、四対三で愉快なチーム、リーチです! メルチームはここでなんとしても止めたいところ! それでは行きます! 第八問! 『交われば民は安心するが破れば国は崩れ、定めれば民は守られるが、疑えば国は崩れるものは何か?』」
「……よく考えろ。問題文から予想できる。出てくる言葉は民と国だ。それを繋ぎ合わせているものが答えだ」
「兄貴、負けることに怖気付いたんだな! 冴え渡ってるじゃねえか!」
「よっ、頭脳派ですね!」
「やめろ」
一方愉快チームは、円陣を組んで話していた。
「私たちには無理だ。国というものを意識したことがほとんどない」
「でも解答権はある。答案などを白紙で出すのは気が引けるように、これも一切答えないのは違う。とりあえず行こう」
「誰が行く?」
「アキ、行くか?」
「メリス行こう」
「分かった」
キリッとした表情で円陣を抜けるメリス。
「ビヨッ」
「愉快なチーム、どうぞ!」
「……なんかさりげなく嫌な略され方してるんだよね」
「えー、人という字」
「残念不正解! さぁ解答権はメルチームに移りました!」
解説「今度は砕けましたね〜」
「ピヨッ」
「兄貴行け!」
「命令するな」
「メルチーム、行けるのか!?」
「法、だ」
「正!解!です! 踏ん張った〜〜! 現在の得点は、メル国チーム四点、愉快な仲間たちチーム四点です。これは大接戦!」
解説「さながら納豆ですね〜」
「さて、泣いても笑っても次が最後の問題です。勝利の女神はどちらにサムズアップするのか? 刮目せよ! それでは参ります、最終問題! 『たとえ過去の失敗が砕け散っても、未来を築く礎となるものは何か?』」
両チームは円陣を組み始めた。
「さて、この長い戦いも終わりが近づいて参りました。解説のカズマさん、ここまで、いろいろなことがありましたが、いかがだったでしょうか?」
解説「どんぐりですね〜」
「……はいっ、興味深いコメントをありがとうございました! 私も、良いチームバランスだったと思います!」
現在リーチ、メル国チーム。
「ここでる負けるるわけには参りません。何としてもこれを取らなければ……!」
「手っ取り早い方法はありますよ」
「本当ですか!? それはどんなものですか、お兄さん」
「実演します。……やれ」
先程剣を吹き飛ばされた兵士とは異なる一人が飛び出す。メリスが気がつく間もなくその命が害される、と思いきや聞こえてきたのは何かを斬る音ではなく——金属同士がぶつかる音。
解説「妨害行為は認められませんね〜」
旅人の女性が投げたトレーによって再び阻まれた魔の手。
「舌打ちはやめるましょう! はしたないですよ」
「父上、言うべきところはそこじゃないでしょう! 兄貴、正々堂々って言われてただろうが!!」
「うるせえな。お前は甘いんだよ。そんなんだから召使いにも舐められるんだ」
「なんだと!?」
「るどうるどう、喧嘩はおやめなさい。しかしながら、侮られる態度はいただけませんね、ジョンさん(※弟王子)る。王族たる者、尊大な態度で下民どもと接しなければなりませんよ」
王である父からの言葉に顔を歪める弟王子。
「お、俺はそんなことできない……!」
一方、同じくリーチ、愉快な仲間たちチーム。
「メリス、答えは?」
「ん、問題ない。ただ、向こうにも少しは考えてもらわないと」
「それにしても……王位継承者は弟で決まりだね、あれは」
「国民のこと考えるとさすがにね。でも現王と兄が許すかどうか」
「まあ」アキは視線を敵チームに向けた。
「条件を提示した上でこの勝負してるわけだし、どんな手を使ってでも飲ませるさ」
「うん。こちらとしても、これからの平穏が懸ってるから」
「さあどうでしょうか両チーム! 取っては取り返し取っては取り返しの此度の戦い、チーム内でも激しい口論が繰り広げられているようです! 勝利は誰の手に!?」
「分かったぞ!!」
そう叫んだのは弟王子。
「っ! メリス!」
レイヴンの焦りを含む声掛けに、素早く応じ鳥に手を伸ばす。
先に鳴いたのは——
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