麦踏み

柚木有生

麦踏み

ぬるま湯にいぶきは荒くバスタブに浮かぶ泡なら掬いとるのに


冷房をつけては止める幾重にも悩乱ただそれだけのはなし


波のよう富嶽三十六景うねる前髪筆も忘れて


粒に揺れた逆さまの街やわらかいアスファルト指に染み込む


雨隠れ袋を被り鳴いている居丈高な猫バス停の椅子


左様なら新しい羽織のままで言祝ぐあわや袖時雨


幸せを入り揉むケーキと花言葉それとは別に白いアネモネ


目に映る撮ればジオラマ角が立つ奥床し空あけすけな記憶


かの憂き目携える傘旅立ちて踊れば泥や蛙が跳ねる


道行きえにし待ち侘びる拍手の音残したまんまるい月の船

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麦踏み 柚木有生 @yuzuki_yuki

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