第28話 裁判で明かされる、あらゆる事実③

 エドワード様の言葉に、法定内にいた方々が、ざわめいた。

 若き辺境伯であり、毒霧のエルメンテスの領主の彼が、同じ伯爵家とは言え、と発言したのだから。

 私は目を丸くしたけれど、エドワード様は更に言葉を続けた。



「セベク、君の手紙は読ませてもらったよ。だったね」

「なっ!」

「え⁉」

「悪いが、俺のところで君の手紙をアメリアに届かないように止めていたんだ。いやはや、だったよ。〝君を監禁したい〟や〝足を切り落としてしまおうか〟等など、この辺りはまだ序の口かな?」

「そ、えっ……いや……ア、アメリア」

「気持ち悪い……そんな事を考えていたの? 猟奇的で頭が可笑しいわ」

「そ、そんな……」

「そのような手紙を毎日、欠かさず送ってきていたね? マーヤ様と二人で手紙を読んでは、君が何時アメリアの近くに行くんじゃないかと、戦々恐々としていたよ」

 「全く持って、猟奇的で一方的な愛の押し付け……。あれでは、どんな女性であろうとも、不幸になるだけですわね」



 マーヤ様まで後押しし、国王陛下は眉を寄せてセベクを睨みつけた。

 流石のセベクも、国王陛下にそんな目を向けられて平気でいられる筈はない。

 


「確かに、そのような真似をして好かれる等と思う愚かな者が稀にいるとは聞いていたが……ほう?」

「ちちちち、違います! 俺はただアメリアを幸せにしたくて!」

「その為に、アメリアを監禁して手足の自由を奪い、彼女を二度と外に出さないと愛を囁いていたのだろう?」

「そ、あ、うぁ……」

「最低……婚約破棄して正解ね。二度と縁を結ぶことはないでしょうけど」

「アメ……リア……そんな……」

「さようならセベク。貴方とはもう何もかも終わった後よ」



 はっきりと私の方から拒絶と拒否を出すと、足元から崩れ呆然とするセベク。

 二度と結ぶ縁もないと告げた為、本当に絶縁したのだと分からせたわ。

 さようなら。

 貴方は私のこれからの人生に、必要ないわ。

 そう思っていたのに――。



「ふざけんじゃねぇぞ‼ 女のくせに! 女は黙って男に従ってれば良いんだよ‼ ふざけんじゃねーぞこのアマ‼」

「……は? 随分と汚らしい言葉を使うようになったのね? 下町で遊びでも覚えたのかしら?」

「うるせぇ‼ お前は何も言わず返事だけして俺の言う事を聞いてりゃいいんだ‼」

「知らないわ。私の人生に貴方は必要ないもの」

「この……絶対ぶっ殺してやる‼ 殺してやるからなぁああ‼」

「静粛に! 静粛に!」

「うるせぇ爺! 何が裁判官だ、何が法廷だ! アメリアに関しては俺が法なんだよ! 俺の言うことが絶対なんだよ! 外野は引っ込んでいやがれクソ野郎ども‼」

「君! 国王陛下もおわす場所でなんてことを言うんだ!」



 エドワード様が声を荒げた瞬間、セベクは自分を捕まえていた男性を突き放し私の元へと突っ込んできた。

 一瞬の出来事で私は動けない……もう少しでセベクの手が私に伸びようとしたその時――‼

 

 身体が一瞬軽く感じたと同時に抱き上げられ、気づけばエドワード様の腕の中にいて……「ぐげぇえええ⁉」と言う蛙を潰したかのような声が聞こえると同時に、エドワード様の回し蹴りがセベク脇腹に入り吹っ飛んでいったわ……。


 あまりにも一瞬の出来事……。

 私は呆然としながら固まっているしか他なく、微妙に震えているのはびっくりした体と……思いたいわ。



「アメリア、大丈夫かい?」

「え、ええ……エドワード様が守ってくださったから」

「見守ると約束したのに……。でも、君の身の安全を考えたら動かざるを得なかった」

「そんな! 守って頂いて……ありがとうございます!」

「良かった……。君が無事で良かった……」



 そう言って私の頬に自分の頬をつけて頬ずりするエドワード様に、周囲からは感嘆の声が漏れ、私は顔を真赤に染め上げて固まった。

 でも、その様子に満足気にしていたのは、マーヤ様と国王陛下だった。



「エルメンテス辺境伯。見事な足さばきだったな」

「恐れ入ります」

「ふむふむ……惚れた女性を身を挺して守る。実に、誠実ではないか。のう? ダグリスト女伯爵?」

「はい、とても惚れ惚れするほどの素早さでした」

「はっはっは! しかし! セベクのしたことは許しがたい! セベクは何より危険性がとても高いと判断した! よって、規律の最も厳しい男性専用の修道院へ送ることを命令する!」

「国王陛下! かしこまりました!」



 裁判長も同意し、その後セベクは修道院へ送られることが決まった。

 傍観席に座っていたセベクのご両親は意識を失い退場したのは言うまでもなく、周囲からは「禄な子育てをしてこなった」等と揶揄されていたわ。

 それに、国王からの命令とあっては、もう二度と出てくることもないでしょう。


 少し法廷はざわついたものの、私も無傷だったし、問題はない。

 セベクは骨が折れたようだけれど、平気で肋骨を折りに行くエドワード様の怒りの一撃……素晴らしかったわ!

 


「これにて閉廷とする! マーヤ、そしてエドワード・エルメンテスと、アメリア・ダグトリスは、後で謁見の間に来るように」

「かしこまりました」



 私はあらゆる面で胸の高鳴りを抑えながら、未だエドワード様に抱きかかえられたまま……法廷を後にすることになる――。

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