第8話
「じゃあ、レイジさんの冒険の目的は、図鑑を作るために全ての竜に会うことですか?」
「それもあるけど、お目当てがあるんだ」
「?」
レイジは一枚の古い紙を取り出して、言った
「この、全知の竜と全能の竜に会いに行きたいんだ!」
トルが目を凝らして紙を見つめる
「どんな竜なんですか?」
「名前の通りさ、なんでも知ってる竜となんでもできる竜、だけど、この竜は一匹なんだ」
「??」トルが首を傾げる
「世界一大きい山を貫通する洞窟に住んでいる双頭竜なんだ、尾がない代わりに頭が付いているからそう呼ばれる」
「えっ、つまり、その世界一大きい山を貫通するくらい長くて、洞窟の二つの入り口には全能と全知の竜それぞれの頭があるってことですか?」
「その通り。」
「わあ…!ではその竜達に会って、世界中の竜の話を聞くんですか?」トルは目をキラキラさせてそう言う
「いや、それは、自分の目で見るからいいんだ。」
「私が知りたいのは…私の村を焼いた奴らのことだ、」
「…!」一瞬の長い間があたりを包んだあと、レイジがぱっと
「はは、ごめん、暗い話になる、もうやめよう。」と言った。
それでもトルは諦めずに「レイジさん、私聞きたいです、知りたいです、レイジさんのこと…」と言う。
「…」レイジは少し俯くトルを無性に優しく撫でたくなってしまった。
「私は…滅びかけの言語を使うような田舎の村出身でね、村民はみんな仲が良かった、だけど、本当に何もなくて、14歳そこらの私は嫌気がさして、少し家出したんだ。」
「ふふ、可愛いですね。」トルが愛しく笑う。
「そして3年後…」「3年間も家出してたんですか」
「久々に村に帰ってみると…
そこには焼け跡しかなった。」
「!」トルは思わず口を手で隠した。
「私の家があった場所には、黒い灰と、炭になった家の柱が寂しく建っていた、ただ、それだけだった」
「私は…」レイジは拳を力強く握る。
「なぜ、村を焼いたのか、なぜこんな事になったのか、わからない…」
「竜にそのことを聞いて、復讐するんですか…?」
「いや、それは…それも、わからない。」
「でも、知りたいんだ、なぜそんなことをしたのか、誰がやったのか」
「全てが、知りたい」
「…」
(ああ、多分、この人は、怒りや憎しみの前に好奇心があるんだ、抑えきれない「知りたい」欲。)
(なんだか、少しわかる気がするなあ…)
トルは連日の看病で少しくたびれていたのか、レイジが寝ているベットの横で座りながら寝てしまった。
「…おやすみ、トル」とレイジは自分の毛布をトルに被せた。
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