第4話 なんか格好良い方を選べ!


時は止まっている。


俺の身体は動かない。


でも、声は出せるようだ。


「無頼の英雄? 優しき英雄? スキル、か」


頭はあまり良く無いが、さすがの俺もゲームっ子である。


だからとりあえず、格好良い方を選ぶ。


「無頼の英雄!」


俺がそう答えると、ウィンドウは消えた。


そして、時が動き出す。


狼は俺に向かってくる。


でも何故か、とても動きが遅い。


空中から飛びかかっているのに、とても。


俺はゆっくりと立ち上がり、手にした木の棒で、側方から叩いた。


狼はゆっくりと、その方向へ飛んでいく。


そうして、木の一つにぶつかると、粒子となって消滅した。


「なんとか、なったか」


あれ、でもこのスロー状態がずっと続いたら、不味いのでは?


バトルでは良いんだけど、誰かと会話すらままならなくなりそうだ。


けれども、その心配は杞憂に終わった。


再びポップアップウィンドウが、一瞬だけ現れる。


「無頼の英雄のスキルが消滅しました」


時が、戻るのを感じた。

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