第23話 火遊びの誘い
遠征組が帰還してから数日が経った。
「新人くん新人くん!」
勢いのある声が訓練室の高天井に響いた。振り返る前に、もうわかっていた。あのテンションで呼んでくるのは一人しかいない。
「ちょっとさ、模擬戦しない? 今すぐ。ね?」
訓練室で異能の制御練習をしていた俺に向かって、軽快な足取りで歩いてきたのは、この年下先輩──花巻 柚那。
「……突然だな」
「今のうちに新人くんの《焔》を見ておきたくてさ。今ヒマでしょ? こっちは気になって仕方ないんだよ。ほら、私たち遠征行ってた間のこと、あんまり知らないじゃん。空木先輩から話は聞いたけど、やっぱ自分の目で見ないとさ」
言いながら、後ろ手でくるりと振り返る。するとそこには、すでに他の出張組が揃っていた。
「……全員いるんかい」
「うん。あたしが呼んだ」
「……なんで?」
「新人くんがどこまでやれるか、みんなに知ってもらわないとね?それにほら、ギャラリーいた方が面白いじゃん?」
言葉の裏に悪意はない。ただ、まっすぐすぎる子供のような、好奇心が、俺に向けられていた。
「花巻が騒いでたから何事かと思ったら、これか」
と角田先輩が肩をすくめる。
「まあ、俺も興味はある。本部での戦闘データは確認したけど……実戦は違うからな」
と志摩さんが付け加える。
「仮想空間の用意ができた。この中なら、いくら暴れても問題はない」
彼がそう言った後、俺たちの目の前に、訓練室の床から光の枠が浮かび上がる。中に入れば、環境は自在に再現され、負った傷はなかったことになる、模擬戦専用の仮想空間だ。
「……まあ、少しなら」
「やった!」
そう返事を返すと花巻がぴょんと軽く跳ねる。
「よし。じゃあ、行こうか新人くん。君の《焔》……どれくらい熱いか、確かめてあげる」
柚那がいたずらっぽく笑いながら先に光の中へと消えていく。その背中を見送りながら、俺はゆっくりと拳を握る。熱が、静かに指先へと灯る。
「上等だ。そっちこそ、焦げないように気をつけろよ」
仮想空間のゲートが光を放ち、俺の姿を飲み込んでいった。
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