自滅の3:ツインテールのサクサク天ぷら

少年の名はヒナ。

隙あらばフジワラにいじめられている。

今日もフジワラは、腰まである長いツインテールをなびかせながら、ヒナに迫ってきた。



「問題です。

フジワラさんがイメチェンして、さらにかわいくなりました♪

どこが変わったでしょう??」


https://kakuyomu.jp/users/aomigemba/news/16818792437527742150


きっとまたいじめられるんだろうなぁ。

そう思いながら、ヒナはフジワラの全身に目をやる。

特に変わったところはみつけられない。


「正解は…『髪をバッサリ切った』です!

3センチも切ったのに気づかないなんて、キング・オブ・ダメダメね!」



知・ら・ね・ぇ・よ



その長さで3センチの変化なんて、わかるわけねーだろ!


どうやら美容師がイケメンだったらしく、フジワラはキャッキャはしゃいでいる。


「不正解ね。それじゃ、ヒナにはデコピンを…」


そう言うと嬉しそうに、フジワラは手をキツネに構える。

しかし。

フジワラの話を聞き、ヒナには何か思うところがあったようだ。


伸びてきたフジワラの手をぱしっと掴むと、こう言った。


「フジワラ…僕練習するからさ」

急に神妙な面持ちになったヒナ。


「だから…次はその髪、僕に切らせてくれないかな?」



「…え…?」



思いもよらないヒナの言葉に、フジワラはきょとんとした顔つきになる。


「嫌なんだ…フジワラの髪が、他の男に触られるのが…」

「ヒナ…?」


どうしたというのだ。

こんなのまるで、惚れた女にかける言葉ではないか。


まさか…嫉妬してくれているのか?

そんな…まさか…。

自然とフジワラの頬も赤くなる。


空は快晴。

まるで青春のワンシーンを待っているかのような青空。



「だってその男…」


どきどきどき


「…捨てちゃうだろ?その髪」



…んんん?


「もったいねー」


なんだか、雲行きが怪しくなってきたぞ。


「せっかくのフジワラのダシが!」



ちょっと待て!!

今「ダシ」っつったか?

切った髪のことを??



「僕だったらパスタソースに絡めるね。

もしくは刻んでチャーハンにふりかけたり。

サクサクの天ぷらにしても良い!」


こいつまさか…食べる話をしている…!!?


「フジワラの体の一部が、僕の喉を通り、胃に収まり…。

こうして僕達はひとつになるんだよ」


……………あ……………


フジワラは悟った。

この子、がちやば。



「…でさ、フジワラ」


ひっ!?


「このあいだ、うちの風呂使ったよな?」


…っひ…?


「あのときの排水溝…」



「いやあああああああ!!!」



みなまで言わずともわかる。

はあはあと息を荒げるヒナに肩を掴まれ、フジワラはあまりの恐怖に、目の前が真っ暗になった。




ヽ(゚ー゚*ヽ)ヽ(*゚ー゚*)ノ(ノ*゚ー゚)ノ└(∵┌)└( ∵ )┘(┐∵)┘ヽ(゚ー゚*ヽ)ヽ(*゚ー゚*)ノ(ノ*゚ー゚)ノ ◝( ⁰▿⁰ )◜  




この日を境に、ヒナを怯えたフジワラは、いじめをやめてしまった。

…のはあまりにさびしいので、必死に弁解することにした。


布団に包まり怯えるフジワラに、あれは冗談だったと必死に言い聞かせる。

次第にフジワラも心を開いてくれるようになり、しばらくすると、またいつもの関係に戻っていった。

こうしてふたりは、平和な日常に戻っていった。



でも、本当はまだ、諦めてない。

流しそうめんならぬ、流しツインテールもいいな、と思ったりなど。

清らかな水流にただよう、フジワラの黒髪…。じゅるり。


いつか、あのツインテールを口にする日まで…。


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