自滅の2:風呂の残り湯には、フジワラのダシが出ている

少年の名はヒナ。いつもフジワラにいじめられている。

この日も傘を忘れたフジワラのせいで、ずぶ濡れになってしまった。



「結局私まで濡れちゃったじゃない!ほんと、ダメダメなんだから…」

なぜかフジワラに苦情を言われる。今日も理不尽極まりない。


「ヒナんち、ここでしょ?お風呂貸しなさいよ。あと服も。」


なんということでしょう!

暴君フジワラ、ヒナの家に押しかけ、風呂と新しい服まで御所望。


しかし、ここはいじめっこといじめられっこの関係。

断ることもできず、言われるがままにヒナは風呂を提供した。




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30分後。


「いいお湯だった♡」


湯上り姿を披露するフジワラ。

冷えた体は無事に温まり、頬も赤味を取り戻して、健康的な姿に回復した。


そしてヒナから借りた服に袖を通したのだが…。


「…?」

ぐいぐい。ぐいぐい。

「……」

…にまぁ。

「嘘でしょ?ww」


ヒナの服は小さすぎて、フジワラにはピチピチだった。


「ヒナってこんなに小さかったの?頭も体も、栄養足りてないんじゃない?」


そう言ってバカにしたように、ヒナの頭をぽくぽくとたたくフジワラ。

満面の笑みである。

どうやらヒナが自分より小さいことに、多大なる優越感を覚えたらしい。

そうして上機嫌でむこうへ行ってしまった。



しかしヒナは、バカにされたことを怒るでもなく…。

(そりゃ小さいさ。だってそれ、5年前の服だもの)

スキップしながら去って行くフジワラの姿をみつめる。

(フジワラ、知ってるか?世の中には2種類の人間がいるんだ。

ぶかぶか派と、ぴちぴち派だ!!!)



そう、全てはヒナの思惑通りだったのだ。


フジワラのボディーラインが、遠目でもわかるほど、くっきりと浮き上がっている。

シャツのすそからはへそがちらりと覗いている。

胸部の布は大きく引き伸ばされ、今にもはちきれんばかりである。

そしてよく見れば、下着の柄まで…。


フジワラは何も知らない。

ぴちぴち派の魔の手に、落ちてしまったことに…。




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そして、これだけでは終わらない。

我らがぴちぴち派代表の魔の手は、尚もフジワラに襲い掛かる。


「じゃあ、僕は届かないから…」

そう言ってヒナは、棚の上のボール箱を指さした。


「偉大なるフジワラさん、取ってくれる?」


偉大!!?


その言葉に大きく反応するフジワラ。

どうやらこのいじめっこにとって、大きいことは正義らしい。


「いいわ!ヒナはちんちくりんだものね!」



そう言い、喜んで引き受けてくれた。

フジワラ、嬉しそうである。

頬はまんまるになり、ツインテールは重力に逆らって、ウサギのように跳ねあがっている。


「ちーびちびちびちびっちび♪ちっちちちびちびちびびびびー♪♪」


作詞・作曲:フジワラ。タイトル「ちびのうた」。

悦びを全身で表現しながら、椅子の上にのぼり、箱に手を伸ばした。


しかしそれを、邪な目で見る邪悪な存在があった。

ヒナだ。

椅子の前でかがみ、フジワラを見上げている。


そう…。この位置からだと見えるのだ。

…スカートの中が。


そうとは知らないフジワラ、喜びのオーラをふりまきながら、ヒナのために尽くしている。

真後ろで狼が狙っていることも知らない、子ウサギのように…。


https://kakuyomu.jp/users/aomigemba/news/16818792437527546177




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「もっと栄養とらなきゃダメよ。私がごはん作ってあげる。」

「えっ!?」


フジワラから耳を疑うような言葉が飛び出した。

ちょうど材料を持っているのだという。(なんで持ってるんだ)


まさかこれも新手のいじめか?

そうだ、きっと毒でも食べさせて、苦しませるつもりなんだ…。

ヒナはこれから起こるであろう恐怖の瞬間に怯えていた。


しかし、フジワラは意外にも献身的な姿を見せる。


「主食と、お味噌汁と、サラダと…。

野菜多めで、揚げ物とお肉も…」


なんということでしょう。

ヒナの健康を気遣った、理想的な食事ではないか。


(あのフジワラが…。信じられない…)


目の前の光景に、ただただ戸惑うヒナ。

(でもこんなことされたら…やっぱり嬉しくなっちゃうよな…)

もしかしたらフジワラは、そんなに悪い奴ではないのかもしれない。

ヒナは頬を赤らめながら、そんなことを思い始めた。



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「じゃあね!早く大きくならないと、踏んづけちゃうから!」

「あ…」


そして食事が終わると、フジワラはあっさりと帰ってしまった。

一人になって、しばし考える。


もしかしたら僕は、フジワラを誤解していたのかもしれない…。

そう考えるヒナ。

今日は、フジワラの思いもよらない姿を見てしまった。

彼女はもしかしたら、ただのいじめっこではなくて…。


…どき…どき…


なんだか胸が苦しい。

ヒナは自分の胸をぎゅっと押さえる。

今まで味わったことのない、この感覚はなんだろう。


…どき…どき…


テーブルに残った器を眺める。

そうだ。きっとあのせいだ。

あの…



あの料理のせいだ。



「「主食と、お味噌汁と、サラダと…」」

・主食→カップ麺(醤油味)

・味噌汁→カップ麺(味噌味)

・サラダ→ポテトの菓子(サラダ味)


「「揚げ物とお肉も」」

・揚げ物→ポテトチップス

・肉→ビーフジャーキー


「「野菜多めで」」

・野菜→ポテト


…絶対、あのジャンキーな料理(?)のせいだ…。


うぷっ。

なんだか気分が悪くなってきた。

フジワラの奴め…やっぱりこれは嫌がらせだったのか…!?



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気分が悪い。吐きそうだ。

何かで口直しをしたい。

でも何を食べれば…。


そう思いながら洗面所まで来ると、ヒナは浴室の前で立ち止まった。

見れば、まだ湯船には湯が張ったままではないか。


先ほどまでフジワラが入っていた風呂…。

フジワラの全身を包み込んでいた湯…。

つまり…


フジワラのダシの効いた湯…!!!



はあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあ



決定だ。

今夜は一人鍋パーティーだ!


そう決めると、ヒナは湯船に野菜を放り込んだ。

フジワラの裸体に思いを馳せ、今夜はこの風呂鍋でディナーを楽しむことにしよう。



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