第30話 王妃様治します

 とんでもないエリクサー作ってしまったけれど、これで王妃様が元気になるなら良しだよね。


 完成したエリクサーを何に入れようかな? 叡智は三個分って言っていたからそんなんに大きな瓶でなくて……辺りを見回すと。

 研究室ということで、色んな大きさの瓶があった。ちょうどいい大きさの瓶を見つけたのでそれに入れて。


「よし! エリクサーの完成」


 本当は極エリクサーだけど。

 急いで王妃様のところに持って行かなくっちゃ!


「王妃様、元気にしますからね」


 はしたないけれど、今は緊急事態だから許して、私はクロちゃんを抱っこし、必死に走って元の部屋に戻った。


 部屋の扉を開けると、お父様とジュエルお兄様がソファーに座り込み、難しい顔をしている。

 どうしたんだろう?

 その横でおもちが腹天して寝ている。もうデカいだけの犬にしか見えない。


 お父様たちからは後で話を聞くとして、今は王妃様。


 王妃様の寝室の扉を開けると、白衣を着た人たちが王妃様を治癒している?

 その横で国王陛下がとライオスが必死に王妃様の名前を呼んでいる。


 もしかしてもう危険な状態!?


「国王陛下っ」


 国王陛下に近寄ろうとしたら、白衣を着た一人が国王陛下と私の間に入ってきた。


「……陛下、王妃様は息をお引き取りになられました。心臓が止まりました」


「そんなっ、やっと呪いの苦しみから解放されたのにっ……アリアンナ! アリアンナ目を開けてくれ!」

「いやだっ、お母様! また僕に色々なお話をしてよっ、絵本を読んでよっ目を開けてぇぇ」


 ライオスと国王陛下の悲痛な声が響き渡る。

 白衣を着た人たちも「自分たちの力が及ばず申し訳ありません」っと謝っている。


 こんな緊迫した状況下で、国王陛下に話かけることを躊躇しそうになるけれど。

 

「国王陛下!」

「レティシア嬢……せっかく作ってもらったのに申し訳ないね……今さっき息を引き取ったよ。三年間苦しんでばかりで死なせてしまった……」


 濡れた虚な眼差しをした国王陛下は、涙で途切れ途切れの声で王妃様のことを教えてくれた。

 そんな姿を見ると胸が苦しくなるが、大丈夫なんです。

 私が作ったエリクサー、普通じゃないんです。

 叡智が教えてくれたことが正しければ、私のエリクサーは生き返らせることができるのだ。


 私は王妃様に近寄り、「失礼します!」と言って口を少し開きエリクサーを流し込んだ。


 すると王妃様の体が眩く光り出した。

 

「え? 何が起こってるの!?」


 エリクサー飲んで輝くとか、ゲームではそんな設定なかったよ? もしかして極だから!?


「ええ!? なんでアリアンナの体が急に輝いて!?」

「お母様!?」


 国王陛下やライオスが驚いている。白衣を着た人たちも何が起こったんだと目を見開き固まっている。


 王妃様を包む光はどんどん眩しく輝き目も開けられないほどに。


 五分ほどして光が収束すると、青白くげっそりしていた王妃様の顔がふっくら艶々桃色に輝いていた。


 この姿は超健康そのもの。


 私が心の中でガッツポーズをとっていると。


「んん〜。今日は最高に体調がいいわ」


 王妃様が起き上がってきた。


「「はぇぇぇっ!?」」


 これを見た国王陛下とライオスが驚き固まる。

 白衣を着た人たちは化け物でも見ているよう。


 まぁそらそうなるよね。


 死んだと言われた人が、蘇ったんだから。

 私だってビックリするよ。


 ほんと運よく極エリクサーを創れて良かった。


「あなた? どうしたの? そんな変な顔して……あらあら、ライオスまで同じ顔して変なの。うふふ、聞いて変なのよ。ずっと重かった体が嘘のように軽いわ。今日は久しぶりに気分がいい。外を走れ回れそうよ」


 王妃様が眩しい太陽のように微笑む。

 こんなに綺麗な人だったんだ。


「アリアンナ!! ああああっ」

「お母様ぁぁぁぁぁっ」


 国王陛下とライオスが王妃様に泣きながら抱きつく。

 うんうん。本当に良かった。

 これでもう、王妃様が苦しむことはない。


 白衣を着た人たちは今だに化け物でも見るかのように王妃様を見ているけれど……。


 まぁ気持ちが分からないでもない。自分たちが死亡確認した人が、あんな元気に起き上がってきたらビックリするよね。


 とりあえず、王妃様との熱い抱擁はまだ続くだろうから、私は一旦部屋を出ますかね。


 部屋を出ると、まだ暗い表情のお父様とジュエルお兄様がいたので、王妃様は全回復したよと伝えた。


「そうのか! レティのエリクサーが間に合ったんだね。治癒したちがバタバタと入って来たから、かなり危険な状況なのではと危惧していたんだよ」

「そうなんだ。ライオスのことを考えたら、僕も悲しくなってきて……お母様が死ぬとか考えられないもん」

「いえ、間に合わなくて王妃様は亡くなってしまい。でも、私が作ったエリクサーは特別な極エリクサーだったので死者も蘇り全回復したのです。


「「ファッ!?」」


 お父様とジュエルお兄様が奇声をあげて一時停止した。

 なんだかすみません。


 やけどな? どう説明したら良いんやー!!

(イマジナリー関西人再び)


 この後、同じことを国王陛下に言ったら、またこの状況になるのかと想像したら。

 心の中で再び絶叫していた。



★★★


 次回のレティもイマジナリー関西人登場しそうです。

 少しでも面白い、楽しいと思っていただけたなら♡や★評価いただけると嬉しいです。

 コメントも大好物です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る