青く、そして赤く

@kayoki

青く、そして赤く

青い光を湛えていた虹彩が、こちらを認識した途端、燃えるような赤に色を変える。


割れた機械の仮面の下に露出した顔は、人の形をしてはいるが人ではなかった。

人ではありえない、白い顔。黒い眼球に浮かぶリング状に輝く虹彩。


それを見た私は、感情を仕舞い込み、戦闘態勢を取る。

彼の赤の瞳には何の感情もない。


彼は咆哮し、一瞬でこちらとの距離を詰める。

先の戦闘で傷ついているのにも構わず、その強大な腕が振り下ろされ──そして止まる。


私は静かに彼を抱き止める。

彼の目が青く戻り、その色が静かに薄くなっていく。


彼の口がわずかに開かれ、漏れ出す意味のない音。

しかし私はそれを言葉として認識した。

はるかな昔、遊びで作った、二人だけの暗号。


私は戦闘マスクを外す。

彼と変わらない白い顔を、燃えるような風が撫でてゆく。

そして私は、もう動かない彼の唇にそっと口付けた。




転送信号が走る。

それはただの通信であり、命令でもあった。


だが、それだけで……充分だった。


ほんの僅かに、私の呼吸が乱れた。

だが、それを引き起こした感情が何だったのかは──もう、分からない。

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