第1話 空を見上げた彼は、途方もない野望を抱く

 この世界を征服したい。


 そう思うようになったのは、いつ頃からだろうか?


 少年は青空を見上げながら、自らに問いかける。


「なぁ、令人れいと


 そばにいた、別の少年が声をかける。


 ウェーブがかった茶髪が、少々鼻につく。


「何だ?」


「オレってさ、そこそこイケメンなのに、どうして彼女が出来ないんだろうな?」


「それは至極明快だ」


「なぬっ?」


「お前の息がレモン臭いからだ」


「ふぁっ!?」


「まさか、バレていないとでも思ったのか?」


「いや、それは、その……初キスの味は、レモンが良いって言わね?」


「だとしても、お前は臭い。このレモンクサッシュ、略してレクサめ」


「レモンスカッシュみたいに言うなああああああぁ!」


拓馬たくまよ」


「あんだよぉ〜?」


「やはり、お前の息は、レモン臭い」 


「……ガクリ」


「死んだか。思春期男子というのは、実に脆い生き物だ」


「いや、死んでねーし!」


「おお、拓馬。お前の倒れてもすぐ復活するタフさは評価するぞ」


「うるせーよ、クズが。友達を何だと思っているんだ」


「お前は友達ではない」


「うそーん」


「親友だ」


「いやん、令ちゃん惚れちゃう♡」


「オエッ」


「そろそろ殴るぞ」


「ふっ、拓馬よ。強がりはよせ」


「あぁ?」


「お前は殴るより、殴られる方が快感だろ? 何せ、Mだからな」


「いや、それは……って、誰がMだよ!」


「ああ、すまん。お前はライトMだな」


「だから、うるせーよ。何だよ、ライトMって」


「カジュアルMでも良いかもな」


「この口かっ、湯水のごとく人を罵倒するのは!」


 涙目の拓馬が令人のほっぺをホールドした。


「よへ、らくま (よせ、拓馬)」


「うるせぇ」


「せめて、キスするなら、その前にブレスケアをしてくれ、頼む」


「一応このレモンがブレスケアのはずなんですけどねえええええええええぇ!?」










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毒舌女王は、愚かな豚共を蹂躙する。 三葉 空 @mitsuba_sora

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