女子寮で宴会なんてね


 合同文化祭も終わり、生徒たちが女子寮に帰ってみると、打ち上げパーティーなんて用意されていました。


「ご苦労様ね♪お酒は出せないけど、我慢してね」

 シンディーさん、こんなことをいっていますが、ノンアルコールのワインとかビールとか、シャンパン風密栓炭酸飲料もありました。


「校長先生♪ここに並んでいるのはお酒では?」

「お酒風味の飲み物よ、お酒ではないわ♪」

「でも……ワインやビールの味がしますが……」


「アングルボザに在籍している間は、飲んではいけないわよ」

「まあ帰省している間はあずかり知らないけど」


 歓声を上げて、娘たちは打ち上げパーティー。


 ワイワイガヤガヤ、女だけですからお淑やかなんてどこかへ忘れて……


「じゃあ、私はこの辺でね、あとは静かにするのよ、後片付けもすること、いいわね」

 シンディーさんがこんなことを云って帰って行きますが……


「ねえねえ、食べ物がなくなったわ♪」

「お開きにするしかないわね」

「えっっっ、まだ宵の口よ♪」


「校長先生は静かにと云っておられたわ、そこそこ静かにすればいいのよ♪」

「なるほど♪でも食い物が……」


 だんだん口調も乱雑になってきた娘たち、食べ物が食い物になっています。


「そうだ!おい、屋台の残りはないか?」

「あるぞ♪」

「おっ、焼きそばがあるぜ♪」

「『りんご飴』もあるぜ」

「いや、『りんご飴』で酒はないだろう?」


「そうでもないぞ、あそこで『りんご飴』を齧りながら、ノンアルコールビールを傾けているのがいるぜ」

「あいつがおかしいのさ」

「何を云っている!案外いけるんだぜ!」


 だんだんテンションが上がってきて、ついに舎監がやってきました。


「貴女たち!静かにしなさい!シンディー校長に言いつけるわよ!」

「校長先生に怒られるから静かにしようぜ……」


 この後、ヒソヒソモゴモゴ、宴会は朝まで続いたのです。


 翌朝、シンディーさんは心配になって見にいくと……

 瓶や缶、食べ物の皿など、食堂は散らかり放題、その中で娘たちが転がっていたのです。


 さすがにシンディーさん、

「何をしているのですか!片付けなさい!そのあとシャワーを浴びなさい!朝ごはんは抜きです!」


 それでも反省文で済ませたシンディーさん、始末書は書かせなかったのです。

 始末書は素行記録に残りますのでね。


 しゅんとしている女学生でしたが、十日もたてば忘れたようです。


「まったく『鳥頭』なのだから!」

 そんなことを云っていますがシンディーさん、手のかかる生徒は可愛いようですね。


 アングルボザ高等女学園の卒業式がやってきました。


「打ち上げパーティーよ、卒業生はアルコール解禁ね♪用意してあるわよ♪」

「在校生はノンアルコールね、飲みたかったらちゃんと卒業してよ♪」


 ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ……


「校長先生!ありがとうございました♪これ、私たちの気持ちです♪」


 ワンピースですが、よく見ると手縫いのようです。

 さらによく見ると、卒業生全員の感謝の言葉が刺繍で縫い付けられていました。


「ありがとう、皆、縫製は落第点なのに……感激よ♪」

「先生、落第点は余計ですよ♪それに泣かないでください」


 シンディーさん、涙目なのです。


「そうね、皆さん、たしか末女(まつじょ)になってくれるのよね、これからもあちこちで会えるわ♪」

「皆さんの元気な姿を時々は見せに来てね♪」


 シンディーさんが校長になってから、アングルボザ高等女学園では任官拒否は無くなったのです。

 

「アングルボザの卒業生のアンケート、やはりね」

「そうですね、シンディーさんへの感謝の言葉が多いですね」

「卒業生の任官拒否もないですね」

「彼女ら、シンディーさんと同じ女官になりたいらしいですよ」

「卒業までかなり脱落者が出るようだけど、まあいいんじゃない」


 ハウスキーパー事務局で、とてもえらい人が二人、こんな会話を交わしていました。


 FIN

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