奴隷市場でのお買い物


 奴隷市場といってもステージがあるわけではありません。

 業者ごとにテントが建てられ、中に入ると檻が並んでおり、商品が詰め込まれています。

 さすがに食用奴隷を扱っているテントは、一つしかありませんでした。


 目的のテントに入ると、商品は鎖状の首輪が巻かれて、簡単な説明と値札がかかっています。

 なんとも安いのですよ……


「食用はどこなの?」

「お嬢様は食用がご入用で?」


「祝いにお父様が買ってこいっておっしゃったの♪」

「お祝い用ですか?なら見目麗しいのがよろしいですね」


 ……自分で言っているけど、この会話、虫唾が走るわ……

 

「食用はこちらでございます」

「お父様が全部買ってこいっておっしゃたの♪全部いただくわ♪」

「全部ですか!」


「貴女、お父様から預かっていたものを出して♪」

「これで足りるかしら?」

 でっかいダイヤモンドなんて、『トゥイーニー・オートマトンRTA001型』が差し出します。

 

「十分です♪すぐに契約書を作成いたします♪」

「おい、お嬢様に一番いいお茶をお出ししろ!」


 優雅に出されたお茶を飲んでいるネラさんです。


「お待たせしました、当店が取り扱っております食用奴隷、13名分の契約書です」


 『トゥイーニー・オートマトンRTA001型』が、

「健康状態は大丈夫ですね」

「もちろんです♪」


「旦那様が『聖帝ネラ』様のご降臨を祝して、この奴隷を神殿に奉納します、そのためこれらの奴隷を神殿に運んでください」

「今頃は旦那様が神殿へ、この旨、奏上されておられますので、話は通っております」

 とか云いながら、何かの印章を押したものを見せていました。


「神殿へ寄進されるのですか、それはよいことです、さすがは侯爵様です♪」

「侯爵様の名を汚さぬよう、よく洗って送らせていただきます♪」

 ちらっと印章を押したものを見て、そんなことをいっている業者さんです。

 どうやらネラさんは侯爵家のお嬢様のようですね。


 受け取りにサインをしたネラさん、名前だけ書いて、そこに侯爵家の紋章の印を『トゥイーニー・オートマトンRTA001型』から受け取り、捺印したようです。


 これね、不思議な印章で、侯爵家の者が押さなければ捺印できない魔法印なのです。

 捺印した者の名前も印字されます。

 サインとこの捺印の印字が同一であれば、有効となるようです。


 どうも太古の先史文明の科学技術の名残のようですが、ネラさんにはどうなっているのか原理はわかりません。

 

「おつりはこちらです」

 『トゥイーニー・オートマトンRTA001型』が受け取っていました。


「ではお願いしますね」

「ありがとうございます、侯爵様にはよろしくお伝えください♪」


 ネラさん、テントから退出すると、吐き捨てるように言いました。


「顔が引きつったわ!唾棄すべき風習だわ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る