諸王に君臨するのは『聖帝ネラ』
……まるで大昔のエラムのようね……おばあさまがおっしゃっていた世界に似ているわ……
……それより『箱の神』は王と聞いていたけど、皇帝みたいね、統治の責任者に命令するのだから、私、その皇帝になるのね……
……あら?なら皇帝みたいな私に命令するヴィーナス様は、何になるのかしらね?……
赴任する前、このように感じたようです。
この話、あとで重要になるのですけどね……惑星テペ・シアルクを統治するためにね……
ネラさんは自らを『皇帝』ではなく、『聖帝』と称することになりました。
……皇帝とは諸民族の王を支配する、したがって人の世に君臨する存在で神の権威が必要……
……つまり皇帝とは神に認められ、神の世界に属する存在になる……そして神の世界の支配者の呼び名は『天帝』……
……天帝様より命じられた、神のお一人が統治をする体制を『神聖政治』と定義し、その最高統治者が『聖帝』……
……今までは神の言葉を奉じて諸民族の王を支配する世俗の最高権力者が統治する体制は『神権政治』と定義、その最高統治者が『皇帝』となったようです……
……今回、天帝様が惑星テペ・シアルクに、さらなる加護をお与え下さるという、ありがたい御心により、『箱の神』は人の姿に顕現した『聖帝ネラ』が降臨する……
……その前触れとして『聖帝』の眷属がこの地に降り立っている……
こんなシナリオを、マレーネさんと薫さんがひねり出したのです。
なぜネットワーク最高頭脳の二人が?
ネラさんが皇帝云々と考えのを、マレーネさんと薫さんが感知して、さらにヴィーナスさんの気持ちを推し量ったようなのです。
いわゆる忖度ですね♪
さらにマレーネさんが惑星テペ・シアルクにナノマシンを放り込み、この考えを遺伝子レベルに刷り込んだようなのです。
多少の矛盾など何の問題もないのです、なんせマレーネさんと薫さんの操作ですから……
赴任の前にこのシナリオが伝えられました。
ネラさんは多くの随員?超高性能事務処理システムや移動端末型コンピューターなどを引き連れて、惑星テペ・シアルク最大の都市、キシュの中央にそびえる神殿に天から降臨しました。
人々は、天から『新しい箱の神』が降臨された、我々は見捨てられなかった、神は偉大なり、色々な言葉を発しています。
中にはひれ伏して涙を流している人もいるようです。
惑星テペ・シアルク全土の王は、『聖帝』の降臨に立ち会うべくキシュの神殿に参集していたのです。
もとの『箱の神』機能が停止しており、神殿の中の張り巡らされた幕屋?のなかにありました。
ネラさんの多くの随員?は幕屋の周りに光とともに転移しましたが、ネラさんだけは幕屋の中に転移します。
「ネラさん、あとはシナリオ通りにしてね」
薫さんが声をかけてくれます。
『箱の神』って、何の飾りもないアルミの箱です。
その上にチョンと座ると、
「幕を開けなさい」
幕が開くと、惑星テペ・シアルク全土の王が頭を下げているのが見えます。
「ご苦労、私が天帝様より遣わされた『聖帝ネラ』です」
こうして『聖帝ネラ』の神聖政治の第一日が始まったのです。
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