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その日を境に女性からの連絡は途絶えた。


彼はひたすら勉強に励み、絵を描き続けた。

連絡を取ろうとスマートフォンを手に取ったこともあった。

しかし、連絡はいつも女性から来ていたので彼から送るには最初の言葉が思いつかなかった。


相手は社会人だ。

忙しいのだろう。

次に連絡がきて、会うことになったときに気になりすぎて勉強が手につかなかったという言い訳だけはしたくない。


志望大学も提出し、母親との会話が少し増えた頃のことだった。

「そろそろおじいちゃんのお見舞い行ってあげたら?」

母親からそう言われ、彼は少し考えた後、頷いた。

段差で転んで骨折した祖父は、入院中、初期の胃癌が見つかり、そのまま手術をすることになった。

リハビリにも時間が必要だということで予定よりも大幅に入院は長引いていた。

「貴方が絵を描き出したの喜んでたわよ」

孫である彼のことを気にしてくれているのだろう。

その優しさに彼はなんともいえないむず痒さを覚えて、思わず顔を逸らした。

「来週、期末テストが終わったら行ってくるよ」

「おじいちゃんに伝えておくわ」

母親は洗い物を片付け終わると、スマートフォンを操作した。

祖父が持っているタブレットにメッセージを送っているのだろう。


季節はいつの間にか涼しさを運んでいた。

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