星流れ
水無月白雨
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世界は優しくない。
世界というには大げさだろうか。
箱庭の世界・・・学校では彼の居場所はなかった。
おしゃれと恋愛に夢中な女子高生は、化粧と彼氏の話で盛り上がり、漫画とゲームに夢中な男子高校生と女子高生はそれぞれ綺麗に同じ制服同士でおしゃべりしている。
部活に学生生活を費やし、燃えている者。
今を一番楽しむために遊んでいる者。
大学受験に向けて、勉強に勤しむ者。
狭いながらもそれぞれの人生を生きている学生の中で、彼だけはその中で取り残されているような気分になった。
彼に親しい友人はいなかった、というより会話する同級生はもちろん存在する。
昨日観たテレビの話、最近始めたアプリゲームの話、話題の漫画のお気に入りのシーン。
笑顔で会話し、頷き、話の内容を咀嚼し己の言葉として返す。
これを友人関係というのなら友人関係なのだろう。
そもそも友人の定義など明確なものはなく、人それぞれなのだから。
故に彼には友人と呼べるものはいなかった。
ただただ息苦しい。
三十数人しかいない教室の中にはそれぞれの人生があるはずなのに、ほとんどの人間が同じような思考と話題で盛り上がっていることが彼には異常に見えた。
気のせいなのかもしれない。
考えすぎなのかもしれない。
しかし、同時に理解もしている。
この箱庭において、この世界の常識から外れた者は容赦なく迫害されることを。
それは時に優しく、時に激しく、時に絶望として。
どのパターンが来るかなど箱庭の頂点にいる者が決める。
故に彼は息苦しさを感じながらも目立たぬように過ごしていく。
つまらない、苦しい、そう思いながら彼は今日もたわいもない会話で一日を切り抜けていく。
鞄の中にしまい込んだノートを見ないふりをして。
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