第13話 鬼ごっこ
「絶対にエイタを助けるから。だから、少しだけ待ってて!」
そう言ってくーねたんちゃんは飛び降りていった。
私はその背中を見届けると、決意を胸に、下を見ることなく歩き出す。
エイタ君は、自ら魔獣を引き受けた。
くーねたんちゃんは、そのエイタ君を助けるために戦いに向かった。
なら、私は?
このまま何もせず、ただ隠れているだけ?
みんなが命を懸けているのに?
そんなの、許せるわけがない。
私は、二人の「仲間」でいたい。
(私も行こう)
くーねたんちゃんに借りた”カスタネット”を一度叩いた。
カチッと音が鳴り、キラキラが漏れる。
(よしっ、私でもちゃんと使える。これで・・・)
かっこんが心配そうに頭をコツコツと小突いてくる。
私はかっこんを手に取り顔の前に持ってくる。
「かっこんちゃん、私はみんなを守りたいっ!手伝ってくれる?」
暫く見つめ合った後、かっこんはパッと両手を上げた。
やってくれるみたいだ。
「ふふっ、ありがとう。」
かっこんを右肩に乗せ、私は非常階段へと向かう。
下へと続く階段は真っ暗だった。定期的にカスタネットで光源を作りながら急いで降りる。
そして向かった先は、
「もう、夜なんだね。いつの間にそんな時間経ってたんだろう。」
冷たい夜風が流れてくる。そこは先ほどゾンビ達が突き破ったシャッターがあった場所。
そう、私が今からやることは、
「まてっーー!あなたたちには、私と鬼ごっこをしてもらうよ!」
カスタネットをカチカチと鳴らしながらそう叫ぶ。
戦闘音に引き寄せられていたゾンビ達が、1体、2体と振り返ってくる。
キラキラに照らされていく私を認識して、次第に全てのゾンビがこちらを向いた。
「「「「「う”あ”あ”あ”ぁ”ぁ」」」」」
「鬼は、あなた達からねっ!!」
後ろを向き走り出す。後を追うゾンビ。
ーーさぁ、鬼ごっこの始まりだ!
最初に逃げた場所は非常階段だった。
まずは3階まで登る。
「結構、、きつい、、ね」
後ろを確認するとゾンビ達も来てはいるがかなりスピードは遅かった。個体によっては、つまずいて転んでいるのもいる。
逃げてる最中もカスタネットを鳴らし続けている。キラキラも満天だ。
体を休めながらギリギリまでゾンビを待つ。
あまりゾンビ達から離れると、戦闘音に釣られてエイタ君たちのところまで行ってしまうかもしれないから。
ただでさえ強そうな魔獣だったのに、そこにゾンビまで追加されたら、、、
絶対にゾンビ達をひきつけ続ける!と気合を入れなおし走る。
ゾンビ達が追いついてきたら歩道橋を渡り反対側の通路へと、そこから今度は1階まで降りる。
基本の動きは1階と3階を歩道橋を使ってぐるぐる回るの繰り返し。
(昔、ショッピングモールで鬼ごっこして怒られたこともあったっけ)
あの時は怒られてすぐやめたけど、今回はやめるわけにはいかない。
階段を降りてる途中も後ろを確認するのだが、ここで嬉しい誤算があった。
ゾンビ達が階段を降りられず雪崩のように落ちてきたのだ。
正直もうちょっと降るのが遅かったら巻き込まれていた。
冷や汗を流しながらも崩れたゾンビ達を観察する。あわよくばこれで終わってくれれば・・・
「「「う”う”う”ぅ”あ”あl”」」」
まあそんなうまい話があるわけもなくゾンビ達は徐々に立ち上がり始める。
だが、数体は無力化されたみたいだ。
下の方に潰されたゾンビは足を折り、立てなくなっていた。
また走る。1階に降りたらまた反対側に移動するのだが、1週目とはすこしルートを変える。
ゾンビにも個体差がある。足が速いやつがいれば、遅いやつだっている。もし1週目のルートに遅れたゾンビがいたら逆に挟まれてしまうから。
モールの構造は頭に入っているのだ。よく友達と来てたんだから。
それすらも懐かしく感じてしまう。
そして先ほどとは別の階段を登っているときに一度深呼吸をしようとして息を吸い、
「・・・・・・!?」
くらっっと来た。一瞬気を失うが、倒れる前にギリギリ踏ん張り意識を保つ。
(この匂い、、、もしかしてガス?」
急いで口元を服で覆い、身を低くする。
(どうしてガスが充満して・・・あ、そうか、ここフードコートの近くだ。)
地震でガス管が壊れたりして閉鎖的空間だから充満していたんだろう。
ゾンビにはあまり効果がないのか、大して気にもせず登ってきている。
「かっこんちゃん、私いいこと思いついたよ」
ニヤリと笑いかっこんに作戦を説明する。
かっこんは目を(X X)とさせながらも最終的には了承してくれた。
ゾンビ達を一網打尽にしよう!!
「「「「「う”あ”あ”あ”ぁ”ぁ」」」」」
音に、光に、生者に引きつられただ歩く。
上へ、上へ、
音が、光が上にある。
手を伸ばすが届かない。
やがて追いつく、だが届かない。それでも必死に上へと手を伸ばす。
いつかは届く、そう遠からず。
かっこんにカスタネットを持ってもらい天井に吊るした。ゾンビ達は音と光に釣られてかっこんの下に集まっているが、だが長くはもたないだろう。そのうちかっこんは捕まってしまう。
それまでに準備を終わらせなければ
まずは百貨店で適当な布とそこそこの長さの紙紐、それからアルコールを探す。
アウトドア店で火打石を。
次は食品店。
「うわぁ、かなりひどいな。」
ぐちゃぐちゃだった。商品が床に散乱して腐っている。
「えっと、、確か小麦粉でいけたよね?」
小麦粉をを見つけ、。急いでフードコートに向かった。
口に布を当てガスを吸わないようにしながらフードコートを進む。素早く小麦粉を撒いた。なるべく空中に舞うように。
(これでいいのかな?)
そしたらガスが漏れてそうな場所にアルコールを染み込ませた紐を縛る。
あとは反対側の紐をもって安全な遠くへ行きセット。
「かっこんちゃん!ありがとう!もういいよ!」
ギリギリだった。ゾンビがゾンビを踏み段々と高くなっていってたのだ。
ゾンビが私に反応してこちらに向かってくる。
私はフードコートの方に逃げた。ゾンビ達を誘導するために。
フードコートをぐるりと回りゾンビと入れ違いになる。
しっかりフードコートの中に入ったゾンビを確認した私は全力で走りながら叫んだ。
「かっこんちゃんっ!!お願いっ!!」
紐の先端に既にスタンバイしていたかっこんがハサミをカチカチして火花を散らす。
散った火花が紐に引火して導火線のようにフードコートへと火を運んでいく。
ーーそして
ズガドドオオォォオオォォンン!!
フードコートは、いやその周囲一帯を盛大に巻き込みながらの大爆発が起こった。
「きゃああああぁぁっ!!」
爆風で吹き飛ばされる。ごろごろと地面を転がり壁にぶつかり停止した。
同じく飛ばされたのだろうかっこんが近くにポテッと落ちてくる。
「うぅ・・・ちょっと、威力強すぎた。。。大丈夫?」
かっこんもひっくり返りながらハサミをカチカチしてる。大丈夫そうだ。
フードコートの方を見ると轟々と炎が上がっていた。壁も天井も吹き飛びなんて開放的なんでしょう!
「あはは~やりすぎちゃった。」
ともあれ、ゾンビ達を倒すことには成功したミカとかっこんであった。
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