探索-本当の始まり-

『-グルアアアッ!』

「…ああ、なんと神々しいお姿でしょうか」

 パレスへと戻って来た俺達は、早速秘薬で創世龍の魔力枯渇を解消した。当然、龍はみるみると活力を取り戻し最後には美しい鳴き声を奏でた。…それを見て、巫女は感涙を抑えれずにはいられなかったようだ。

『…グルア、グルウウッ』

「…っ!『重ね重ね、感謝致します』…と、我が主は申しております。

 私からも、深く御礼申し上げます」

「どういたしまして。…そうだ。戻るのが遅くなった理由を、説明しないとですね」

『…グルア』

「『是非、お聞かせ下さい』…と、我が主は申しております」

『それでは、僭越ながら私から説明させていただきます-』

 すると、相棒はムービーウィンドウを展開しそれを龍の眼前に移動させた。…それから程なくしてムービーが流れたのだが、龍は直ぐにポカンとした様子になった後不快そうなオーラを出した。


『-…グルッ、グルウウッ』

「…まさか、我が主の偉大な御力を混沌の者共に奪われていたとはっ」

「「……」」

『…グルアッ』

「…失礼致しました」

 そして、ムービーが終わると龍と巫女は心底悔しそうにしていた。…けれど、俺達が居る事を思い出した主と従者は直ぐに落ち着く。

「…心中、お察しします」

『…恐らくですが、有志の連合部隊を転移で避難させた際に何らかのスキルを受けたのでしょう』

『…グルア。…グルアアッ!』

「…っ!『思い当たる節があります』…と、我が主は申しております」

『グルア。…グルアウ、グルウウ』

「…どうやら、我が主の転移陣に『黒い龍の形をした何か』が攻撃を仕掛けたようです。

 当然、我が主の魔法はそれしきの事ではビクともしませんが。…ですが、ソレの効果が我が主の偉大な御力を奪う物だったと考えると、破壊する必要はなかったのかもしれません」

『…厄介ですな』

「……。…創世龍殿。他に、使用出来ないスキルや魔法はありますか?」

 とりあえず、俺は龍に確認してみる。今これをやっておかないと、後々取り返しのつかないトラブルが起きる可能性があるからだ。


『…グルア。…グルア、グルウウ、グルム、グルルア』

「…我が主が仰るには、『スキルは、空見の眼に繋ぎの窓。魔法は、ギフトブレス』…だそうです」

『…なんと。…っ!マスター』

「…多分、それが一番高い可能性だな」

『…グルア?』

「…もしや、お二方は使徒の襲撃に?」

「…ええ-」

 俺は、あの時の事を話した。…すると、龍と巫女は震えていく。…いや、本当に良く切り抜けられたよな。

「…良くぞ、御無事で」

『…グルア。グルルア』

「『…それにしても、まさか私の力を混沌の者共が悪用していたとは。…一体、どうしたら良いものか』…と、我が主は申しております」

「…どれも、凄まじい力ですからね」

 困った様子の主従に、三つの権能の事を知る相棒も困惑しながらそう返す。…当然だが、他の二つもマジでヤバい。


 -まず、『空見の眼』は全ての龍の現在地を把握出来る『千里眼』みたいなスキルだ。…それと『繋ぎの窓』も敵の手の中にあるから、今後俺達の行動は全て筒抜けになるだろう。

 そして、『ギフトブレス』はその名前の通り強力かつ複数のバフを与えるブレスだ。…つまり尖兵でさえも、えげつない強さになるのだ。

 通りで、敵が『イレギュラー』な攻撃をしてきたワケだ。…ん?待てよ?

 三つの権能を思い出していた俺は、ふと希望を見出だした。


「-…もしかしたら、対策が出来るかもしれません」

『…グルア?』

「…え?」

「…っ!…『アレら』を使うのですね?」

 当然、龍と巫女は信じられないといった様子でこちらを見た。一方、相棒は直ぐピンと来たようだ。

「正解。…じゃあ、早速説明しましょう」

 そう言って、俺はインベントリからいくつかのアイテムを取り出した。それらを一旦相棒に預け、まず『覗き対策』のモノを手に取る。

「こちらは、『空見の眼』と『繋ぎの窓』対策となり得る『虚構の仮面』です。

 効果は、見た目とステータスの偽装です」

『…グルアッ!?』

「…嘘っ」

 アイテムの説明をした俺は、実際にそれを着けてみる。すると、龍と巫女は驚愕した。…今の俺は、何処からどう見ても『村人』だからだろう。


「ああ、勿論相棒用のもあります」

『…グルア』

「…なんと。本当に、肉体情報も変化しているのですね。

 …ですが、それだけで二つの偉大な力を防げるとは思えないのですが」

 だが、巫女は懸念を口にする。…確かに、いくら見た目と名前を含めたステータスを偽装したところで、チートスキルを誤魔化す事は無理だろう。

「ごもっともです。

 そこで、こちらを併せて使います」

『…グルアッ!?』

「…こ、これは」


 なので、俺は二つ目と三つ目のアイテムを手に取り直ぐに装備した。…すると、俺の隣に偽装前の俺が姿を表した。

「こちらは、『双子座の指輪』と呼ばれるアイテムです。効果は、この通り自分の分身を生み出します」

「どうも」

『……』

「……」

 隣に立つ分身が挨拶すると、龍と巫女はポカンとそいつを見た。…いや、良いリアクションをしてくれるな。

「ちなみに欠点は、二つあります。

 一つは、このように偽装状態まではコピー出来ない事。もう一つは、分身は一切のアイテムやスキルを使えない事です。

 -なので、こちらの『貸付の指輪』の出番となります。これは、分身が俺のスキルやアイテムを使う事が出来るようになるモノです」

『…グルア』

「……」

 説明の後、もう一つの指輪を発動した。すると次の瞬間、分身は俺が愛用するロングソードを取り出していた。


「まあ、当然幾つかのルールがあります。

 まず、効果時間は10分。それを過ぎるとスキルやアイテムは分身から消えて、俺に返却されます。

 つまり、その間俺自身それらを使えない事になるんです。

 ただ、貸し出せるモノは指輪一つにつき一個なので困る事はほぼありませんが。

 そして、一度貸したモノは『二度と』渡せませんし、指輪も強制的に破損します」

『…グルアッ!?』

「…厳しい制約ですね」

 デメリットを聞いた龍と巫女は、当時の俺と同じリアクションを取った。…まあ、そうでないとゲームバランスが崩れるからな。

「では、失礼-」

 そんな事を考えながら、分身に双子座の指輪を見せる。すると、分身は察し龍と巫女に挨拶をした。その後、指輪を外すと分身は即座に消える。

「…ふう。…というわけで、『俺』の対策は以上になります」

 それから仮面も取って、貸出証を外す。…ちなみに、効果時間が切れる前に分身そのものが消えると、貸したアイテムと指輪にデメリットは発生しない。…本当、この素晴らし仕様に最初気付いた奴には感謝しないとな。


『…グルア』

「…つまりは、ヴァイス様には別の対策を用意しているのですね?」

「はい。…そもそも、奪われた二つのスキルはドラゴンが対象なワケですから、それの対策をしないと意味がありません。

 -という事で、相棒には仮面に加えてコレを装備させます」

 俺がそう言うと、相棒は外套を装備した。…しかし、先程の三つのアイテムのように劇的な変化はなかった。

『-……グルア?』

 …そう。『俺』の目には、ただ相棒が外套を着ているだけに見える。しかし、龍にはハッキリと変化が伝わっていた。


「…まさか、我が主にしか感じられない変化が起きているのですか?」

「その通り。

 これは『消失の外套』と呼ばれるモノで、効果は存在が限りなく薄くなります。…どのくらいかというと、創世龍殿が目の前の相棒を認知し辛くなる程です。

 -ただ、このアイテムは相当の魔力で身を守らないと本当に『消失』してしまうので、ドラゴン専用のアイテムなんですよ」

『…グルアッ!?』

「…な、なんとも恐ろしいアイテムですね」

 それを聞いた主従は、明らかに驚いたり冷や汗をながしたりした。…当然だが、相棒の魔力に余裕がない時に付けるとロストする。オマケに何をトチ狂ったか、ソレにはトラウマ確定の特殊演出があるらしい。

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