エンディング 君はどう行動する?
DJブースの悪魔は、それまでとは打って変わって、少しだけ真剣な、しかし底知れぬ企みを秘めた声で語り始めた。
「さて、この『失われた30年』という名の終わらないダンスパーティーについて、皆様に少しだけお話ししましょう。特に、この『30年』を知らぬ、あるいはまだ若いと感じているそこの貴方方です。この停滞のワルツが、なぜこれほど長く続いているのか、本当に理解していますかな?」
彼は、フロアをゆっくりと見渡す。その視線は、若い顔ぶれを射抜くように感じられた。
「これは、他でもない。先人たちが、ひいては大人たちが、選挙という名のダンスの誘いを拒み続けた結果に他なりません。面倒だと、一票の重みなどないと、そう嘯いて、自らこのダンスホールの扉を閉ざし、現実から目を背け、与えられたビートにただ身を任せてきた結果なのです。まるで、不味い料理が出されたのに、誰も文句を言わずに黙って食べ続けたかのように。そのツケを、今、貴方方が支払っているのですよ。」
悪魔の声に、わずかながら感情がこもる。
それは、彼自身の計画を漏らすかのような、
ぞっとする響きだった。
「ご忠告申し上げましょう。貴方方が、このまま選挙という名の舞台から降り続け、『どうせ誰がやっても同じ』と現実逃避を続けるのならば、私がこの国を、このダンスホールを、さらに深く、もっともっと弱らせて差し上げましょう。賃金は上がらず、物価は高騰し、貴方方の未来は、今以上に暗く、閉ざされたものとなるでしょう。約束しますとも!」
悪魔は不気味な笑みを浮かべた。
「民主主義とは、まことに面倒で、骨の折れる作業です。民意がすぐに反映されないことも、期待が裏切られることも、多々あるでしょう。しかし、だからと言って、この国の舵取りをする者たちから目を背けてはならない。彼らが何を企み、何を為そうとしているのか、常に監視し、声を上げ、時には自ら舞台に上がって、そのビートを変えようとしなければ、この『失われた30年』は、貴方方の『失われた人生』へと変わっていくでしょうな。そして、忘れてはなりませんぞ。民意が反映されぬ国家は、独裁国家と何ら変わらぬ。このダンスホールの音楽が、いつしかたった一人の選曲で支配され、貴方方はただ踊らされるだけの存在となるでしょう。鍵は常に、貴方方の手の中にあったというのに……。本当に、残念なことです。」
悪魔は静かにDJブースのスイッチを切り、ホールに沈黙が訪れた。しかし、その沈黙は、人々の心に深く刻まれた、悪魔の嘲笑の残響によって、より一層不気味なものとなった。
民主主義が終わるのか。
民主主義で改革を成し遂げるのか。
亡国のワルツ 失われた30年の鎮魂歌 light forest @lightforest
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