あたらよにカミツレ

藤橋峰妙

あたらよにカミツレ




 めざめると

 かはたれどきに 釣鐘の

 音さき分けて 始まるわたし



 ゆらゆらり

 夢のうつつに 空をみる

 あけぼの色に 雲がうつろう



 レンギョウ みしらぬさきに おびえても

 このひを歩けと ひが目を刺して



 道ばたに 菫すむみち 雨あがり

 葉先したたる なみだのように



 あなたから だれかに咲いた アルメリア

 わたしの色も ひとひらうつる



 一片と うつるこの色 何になる

 わたしのうちに わたしの行方



 あきらめて かれた願いに 目を閉じて

 芽吹かないけど 手のひらのなか



 うれしさも かなしさもある サクララン

 重なるほしを こころにつめて



 一日が うすづく雲に かたどられ

 かたちないまま それでもわたし



 可惜夜あたらよに 今日をふみしめ 明日にゆれ 

 私の土に カミツレよさけ

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あたらよにカミツレ 藤橋峰妙 @AZUYU6049

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