第2話 にゃむにゃむ☆彡

半年たっても変わらず毎秒元彼のことを考えて生きていた。当時大学3年生だった私は学校の課題に追われていた。正確に言うと、自分から追われにいっていた。ずっと元彼のことを考えていたから他のことが手につかなかったのだ。

正直かなり疲弊していた。叶わない恋がこんなにも辛いのは知らなかった。


そんなある日、朝いつものようにメイクをしているとインスタのDMが一通届いた。私は目を疑った。元彼からの連絡だった。「元気?」と一言。私はその瞬間頭が真っ白になった。そして、嬉しさのあまりチョコサンドクッキーを食べたかのような感覚に陥った。「この人はまだ私のことが好きなんだ!!」私はアホすぎた。



自分の経験が時に自分を救うことが多々ある。

経験したことがない、自分が身をもって体験したことがないというのはとても恐ろしい。判断材料が無いからだ。

私は初めて、元彼から連絡が来たという状況にいあわせ、頭では戸惑った。ただのヤリモクなだけだという考えももちろんあった。しかし、これまでずっと元彼を考えてきたのだ。心が「やったー!」と叫び続けていた。

すぐに返信するとなんだか恥ずかしいので、私はその日の夜中に連絡を返した。「元気だよ。」と。返事は直ぐに帰ってきた。その日は彼が夜勤だったため、私が寝るまでメッセージのやり取りを続けていた。私は付き合い始めを思い出していた。またあの時みたいにすぐに返信が返ってくることが嬉しくてたまらなかった。それから1週間ほどメッセージでのやり取りを続けた後、家に誘われた。傍から見れば完全にヤリモクの手口だが、恋心に犯された私は疑いつつも、心が思うままにそれを承諾してしまった。



約束当日、私はめいいっぱいめかしこんだ。こんなに綺麗になった私を見て欲しかった。実際にはそんなに変わってないのだろうけど。


待ち合わせ場所につき、しばらく待っていると、遂に彼が来た。しかし、その時普通なら「やっと会えて嬉しい」となるはずが、「怖い」が先に来た。ふわふわの茶髪マッシュだった彼が黒髪のセンターパートになっていたこともあるだろうが、全く知らない人のように思えたのだ。


そのまま彼の家に行き、お酒を飲みはじめた。

ネトフリを見ながら、「付き合っていた頃もこんな風にお家デートしたなぁ」と懐かしい気持ちになり彼の肩に寄りかかった。そしてそのまま雰囲気に身を任せた。



帰る時間になり、私はこれまで味わったことのない虚無感に襲われた。彼は原付の後ろに私を乗せ、駅まで送ったが、私が最後にバイバイと手を振ってもこちらを一切見なかった。


帰りの電車で、あまりの虚無感に泣きそうになりながら「最後にもう一度会いたい」と送った。しかしその日、返事が帰ってくることは無かった。


返事が来たのは次の日の夜だった。「また会お!」のみ。私は、ずっと本気で好きだった相手に都合よく扱われた悲しみと、それでもまだ相手のことが忘れられない愚かさで心がぐちゃぐちゃだった。こうなることは最初から分かっていた。それでも自分の心が会いたいとずっと叫んでいた。私は自分の本能の赴くまま行動した結果、残ったのはとてつもなく大きな傷だった。



もう会わないと決心し、私は静かに彼をブロックした。

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メンヘラチョコサンドクッキー @momomu_0430

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