第21話 苗字
「どうして。焦るよそりゃ」
「ふふふ」
笑った彼女はゆっくりと表情に緊張を走らせて真剣な眼差しになる。今日初めて目に光が宿し希望を縋っていた。
「呪いの発端は貴方の母から」
「そんな。僕の母が!?」
そもそも呪いなんて本当に実在するのか?これまでとはあまりに現実離れした内容に一層頭が追いつかなかった。冗談と疑って信じられない。思わず彼女の目線を逸らして考え込んでしまう。
「こっちみて」
彼女の温かい両手で顔を定位置に戻される。ポカンと虚をついたままだ。
「本当よ。信じられないと思うけど、この世には非科学的なことも起こるのよ。さっきあたしが貴方と出会ったことが運命だと言ったように」
「そんな無茶な」
彼女はゆっくり身体を起こす。続けて僕も対等になる。ゆっくりと彼女は口は開く。
「あたしらが産まれる前、あたしの母と佐古の母はあることで大喧嘩した」
「喧嘩」
「うん。それは、後継ぎを巡って対立したの」
「後継ぎ?何の?」
「本条家の当主の座を巡って」
「本条家って僕の苗字では…」
「そう。本条家について詳しく説明するわ」手を繋いで話を聞く僕らは心を一身に保とうとしていた。暗い寝室のベッドの上に座った肉体は淡々と息を合わせて片方は聞きに徹し、片方は昔話を始めた。
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